第445話「救出作戦開始!」
『クワンダ・エストルァテス・ラ・ディープ……アクアプリン』
『クワンダ・エストルァテス・ラ・ファントム……ウィスプ』
『ヴァン……ヴァヴァン』
突然魔法陣が浮かび上がり、オーガの側にアクアプリンが這い出してくる。
3メートルの大きさのアクアプリン3体が、すぐ側のオーガに攻撃されるが『物理攻撃無効』の特性で無傷だ。
その上、ウォーター・ウィスプが9個体召喚されて来たので、オーガは物凄い速さで手に持つ武器を振り回す。
よし!!これで救える!と思った僕はシャインにすぐに指示を出す。
「今です!シャインさん!エリアヒールを!!」
「え!?は………はい!!」
シャインも何故こうなったのか分からず硬直していた。
しかし僕の指示で、我を取り戻し直ぐに行動に移す。
『光の守護と、聖樹の慈しみにて癒やしを!!エリアヒール!』
シャインに指示を出した僕は、なすがままの召喚魔物に攻撃命令を出す。
「ウォーター・ウィスプとアクアプリンはオーガを攻撃!」
僕の声に見えない魔物は『反応』出来なかった……
理由は簡単で、ゴーレムの地面を破壊する『音』の方が大きいので、ゴーレムに攻撃を仕掛けていた。
僕はマジックグローブからゴーレムをもう一体取り出し指示を出す。
「お前は奥の壁を破壊しろ!」
そう言った後、ベロニカの側に行き『初級ポーション』を手渡してから、人数の多いソウマとベンの方に僕は走る。
「ベロニカさん、今すぐロズさんにそれを飲ませて!じゃないと死んでしまう!!シャインさん気絶を直す方法は!?」
「気付け薬があります!」
「ならベロニカさんにロズさんの分を1本渡して、すぐこっちへ!!ゲオルさん!見えない速度で移動する魔物が居ます。音に反応するのでゴーレムにダンジョン破壊させてますが、後続来たら黙らせてください!」
僕とシャインが入り口から僕が退いたことで漸く後続が入れる様になった。
「どう言うこと?何で入らない……ムグ……」
「皆黙れ!音に反応する!物凄くやばい魔物がおる……今はゴーレムでどうにかなっている状態じゃ!」
そう言ったゲオルはユイナの口元からゆっくりと手を離すと、そっとゴーレムを指さす。
『ガシュ!……ガシュ!……』
ゴーレムに攻撃を仕掛ける魔物がそこには居た……
「ロズにソウマ両方とも盾持ちがやられた……ベンもエクシアも重体じゃ……」
「ヒロさんは?何処へ?」
ゲオルが後続組のユイナとミクそれとアーチに現状を伝える……
「ベロニカがロズを救出に、ヒロとシャインがソウマとベンの救出に向かって、オーガは魔物と交戦中じゃ!見えなかった敵は、今は脚を止めてゴーレムに攻撃をしている真っ最中じゃ!」
「何ですか?あの敵は……『モグラ?』ですかね?かなり巨大でツキノワグマくらい有りますけど……」
「ワシにはわからん……ヒロが帰ってきたら『モノクル』で調べるじゃろう……」
僕とシャインはソウマとベンの所になんとか辿り着き、すぐに気付け薬を飲ませる。
気絶しているが、僕とシャインで彼らの鼻を摘んで一気に流し込む。
「「ゴホ!ゴホ!」」
「な……何が………」
「いいから2人ともこれ飲んで!次攻撃受けたら死んじゃうから……」
僕はそう言ってから、すぐに初級ポーションを渡す。
「説明は後で……入り口まで戻る事にしましょう!」
そう言うと、エクシアがエリアヒールと『再生』で回復した様でこっちに向かってきた。
「ヒロとシャイン!助かったよコイツらは平気か?まじでヤバかった……ヒロの機転がなかったらアタイ達はゾンビかスケルトン決定だった……それでアイツはなんなんだ?」
「今は入り口に戻りましょう!後続が来たら危険です!」
エクシアの質問をバッサリ切るシャインだったが、彼女の考えが正解だ。
「そうだね……ロズも意識を取り戻した様だ……全員で集合して仕切り直しだ!」
僕達は急いで入り口付近まで戻る。
入り口からユイナ達を退かすと、カナミが入ってきた……
「あーちゃんは!?無事な………ムグ………」
カナミに一部始終を耳打ちするアーチと、それを聞いて頷くカナミだったが、彼女の心配具合は顔に出ていた。
そしてユイとモアが同じ様に入ってくるので、ミクとユイナが受け止めて説明をする。
最後にスゥが入ってきてユイとモア2人がかりで抑えられる……スゥは悪い事をしているわけじゃ無いが、複雑な顔をしていた。
僕はそのやりとりを確認した後、モグラの様な魔物を『鑑定』して情報を確認する………『モール・ベアー』
「モール・ベアーという様です……目が退化して見えない代わりに音に敏感だそうです……まんまモグラと熊を掛け合わせた魔物ですね……突撃と爪の薙ぎ払い攻撃でかなり攻撃力高いです……」
僕はそう言ってエクシアにモノクルを渡す。
「あれだけ吹き飛ぶには理由があるね……スキルの『強打』と『衝撃』のせいだよ……そして爪の切り裂き攻撃もあるね……ヤバイ奴だが……前は居なかったのにな?」
「今は物理攻撃無効のアクアプリンとウォーター・ウィスプのお陰で、オーガの攻撃が何とかなってますけど……あっちもかなり強いですよ?」
僕達は態勢を立て直したので、ひとまずモール・ベアーから狩ることにした。
「ソウマとロズは盾を構えてスキル使いな!シャインは防御UPをかけてくれ!遠距離持ちは射撃後ロズとソウマの後ろに!削るしか方法はないからね……」
モールベアーはゴーレムの攻撃を何度か受けているが、割と持ち堪えている。
防御力も体力もあってかなり厄介な敵だ。
その上かなり足が速いので近付くのは危険だ……2体目のゴーレムは安全策で近場の床を壊しているが、射撃に釣られてこっちに来た時用だ。
「ウォーター・バレット!」
「ウォーターアロー!」
一斉に弓や魔法でダメージを与える。
弓が使えるベロニカとユイにモアとスゥが分かれて弓で射て、そして僕とゲオルは水魔法で射撃をする。
「クルルルル!!クル!クルルルル!」
ガタイに似合わず変な鳴き声だが、被弾と共に鳴き声が上がるので確実にダメージは入っている様だ。
「硬いな!的が大きいから狙いやすいし、見た感じダメージが入りやすそうな魔物なのに……何でこんなに硬いんだよ!!」
「ヒロ……キレるなよ……俺なんか死にそうになって一撃も入れられないんだぜ?ロズもソウマも俺と同じだしな……」
「ベンさんでもMPだけ無駄に使ってる気がしますよ!既にウォーターバレット10回も唱えてますよ!全弾ヒットで50発ですからね?」
「まじか?ゴブリンだったら急所に当たれば1撃だよな?」
「ベン邪魔してんじゃないよ!オマエあのモグラに食わすぞ!?」
「エク姉さん!良いじゃねぇですか?ベン食ったら腹壊して死ぬかも知れませんよ?喉詰まらせて窒息死とか!」
「「「それだ!!」」」
まさかの無駄話から解決法が見つかった……今までよくやった手法だが、正攻法での魔物討伐を考えると意外と盲点になる。
倒す事を目的とするならば、柔軟な発想は絶対に必要だ。
「ウォーター!!」
水球が頭部を覆う……急に現れた水球に悶え苦しみなんとか引き剥がそうとするが、普通の水ではないので外れるわけがない。
一息で水球全部を飲み干せば平気だが、飲み干すほど呼吸が持つ訳がないのだ。
「ガボ……ガボガボ……ゴボ……ゴボボ……」
さっきまでの攻撃が嘘の様に静かになる……そしてステータス表示を確認すると『死亡』と出る。
「久々に見たね!このインチキ魔法!」
「エクシア!ワシも前に試したんじゃが、これが出来るのはヒロとテイム中のスライムだけじゃぞ?我々が扱う『ウォーター』では水量が違う上に物凄い『集中力』が必要じゃ!動く魔物に合わせて動かす必要があるからな!」
僕はゲオルの言葉に若干驚いた……動かすのはさほど問題ではないと思ったからだ。
ゲームで言えば、シューティングゲームのポインターを顔面に合わせるだけだ。
何も敵全てを『ヘッドショットしろ』と言っているわけではないし、遠いところから狙撃しろと言っている訳でもない。
ゲームをした事がある、それともかないかが違いなのだろう……
まぁ僕が魔法教師にでもなるときは、魔法操作の教材扱いのゲームとして取り入れよう………
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