第413話「ユニークアイテムの謝礼に得られた物」


 たしかに僕はあの時は色々立て込んでいて、これからの予定やら所領の改善やら鉱山の魔物対策やら、王都へ戻った方が良いか等考える事が沢山ありすぎていた。


 しかしギルドマスターに、マジックグローブの返却を急ぐ必要がなくなったことを聞かされて、安心し切った結果ミオと話して『ついでに』とその区画に行った……


 ひとまず強欲の左手「左手グローブ・装飾品」を再度鑑定すると……何故か合言葉が開示されていた……


  合言葉設定アリ『4件』

  『※※※※※※※※※※』契約者

  『※※※※※※※※※※』契約者

  『※※※※※※※※※※』契約者

  『マジックグローブ』契約・ヤクタ・ダーメン・ムノウン

  『ヒミツドウグ』契約・ノグチヒロシ



 合言葉設定に『マジックグローブ』を設定するなんて……本当にヤクタ男爵は無頓着な人だった………パソコンのログインパスワードをモニター画面に貼っている様な物だ。



 あの時『取り出せた』のは完全な偶然だ……ミオとの『会話でうっかり言った合言葉』と、『出そうとした対象』そして『此処の場に出す』と念じた事……どれが欠けても、あの結果は出せてはいない。


 その都度鑑定をしていないので、ヤクタの合言葉がいつ開示されていたか迄はわからないが『マジックグローブ』と言う単語は、かなり頻繁に使用している。


 今迄も、魔獣の遺骸が取り出せていてもおかしくはなかった。


 だが『此処の場に取り出す』と念じた行動は、今までしていなかったのが大きな違いだろう。



「どうしたのですか?」


「いや……実はズゴイ偶然が重なった物ですから……」



 僕は起きた偶然を、ミーニー学長にザムド伯爵そしてウィンディア伯爵に告げると大爆笑だった。



「ヒロ……それは本当に凄い偶然だな?それもマジックグローブに対して『マジックグローブ』の合言葉は……ぶっちゃけどうなんだ?まぁ……私では流石に其処へは思い当たらないがな!」



「ザム!だがな、まぁヤクタらしいと言えば……らしいかも知れないぞ?お陰で取り出せたしな?」



「そうですねザムド伯爵様にウィンディア伯爵様。普通は自分の身近にある大切な事などを合言葉に使うのですが……まさか『マジックグローブ』のアイテム名を、そのまま合言葉に付けるとは……つい笑ってしまいますね!」


 僕はグローブを3人に交代で渡して試してもらう。


 収納アイテムはマジックワンドだ。


 笑いながら3人とも出し入れしている。



「たしかに!!これはまぁ……忘れないで済むと言ってはそうなんだが……『合言葉』の意味は全くないな?防犯上は……ある訳ないか!」


 ザムド伯爵がそう言うとミーニー学長は大笑いする。



「ですが、言われて気がつく位ですからね?解ったからこそのこの笑いですよね!ああ面白かった……」



 僕に戻ってきた後に合言葉を使って、中身を探ってみるも他には何も出てこなかった……



 しかし……『契約・ヤクタムノウン』とはなんだろう……『契約』と言う文言が凄く気になり引っ掛かると思ったが、笑って話しているうちに忘れてしまう僕だった。



 僕達の話を終えた後に、マジックグローブを使いユニークアイテムを回収する。


 今回のユニークアイテムは、冒険者として扱うには正直テント以外は使い道がなさそうだ。



「ヒロ男爵様!もしユニークアイテムを使用した結果何かわかったら是非、情報提供をお願い致します!こちらも御礼をさせて頂きますので……そう言えばマジックグローブの情報のお礼ですが我々に出来る事で何か御座いますか?もしアイテムで良ければ当学院のマジックアイテムを……と思ってますが……」



 どうやら魔導士学院的には、労せずに結果のみを知る手段を取りたいようだが、僕的には数多く魔導書が揃っている環境は捨てられない……『我々に出来る事』そう言われたので……



「魔導書の閲覧をお願いしたいのです……封印状態を解いて見させてもらえますか?覚えるのにあの封印って意外と邪魔なので……」



「ほ……ほほほほほ!さ!流石でございます!『覚えるのに邪魔』などと簡単に言われる時点で、もはや我々の暴走抑制の意味をなしてませんので!当学院として全然!問題ございません!何をご覧に?あ!水魔法でしょうか?」



「水魔法もそうですが、『氷魔法』も見たいんですが……あ!!そう言えば、『錬金の書』ってありますか?『実物を一度』見て見たいのですが……」



「ちょっとお待ちくださいね………」


 そう言った学長は部屋から飛び出て……『プッチィ!プッチィ!職員用の『マジックネックレス』をひとつ持ってきてください!』っと…大声を出す。



「すいません大声を出して……封印を解いて魔導書を閲覧する事ができるネックレスがありますので、今持ってこさせますのでそれをお渡ししますね!あと、『錬金の書』で御座いますか?一応それと思われるものがこの部屋に2冊ありますが……我々では読めませんので、確証はありません……えっと……この間偶然新しく手に入った2冊が処理前で……此処に……」



 そう言ってミーニー学長は、特殊額縁に収められた古書を2冊持ってくる……



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


  錬金の書(初級・第3巻)


  錬金の書(初級・第4巻)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 確かに錬金の書だった……


「実は僕……この全く何が書いてあるかわからない魔導書のコレクターなのですが……書き写しは可能でしょうか?原初の管理もあり難しいとは思うのですが……」



「いえいえ!もし良ければ其方の2冊はお貸し致します!差し上げたいのですが、仮にも『魔導士学院』ですので個人で収集していない以上差し上げられませんが……『研究貸与』と言う形であれば問題ないですし!研究室もヒロ男爵様用にご用意させて頂きます!成果は『ユニークアイテム』研究も加味させて頂きますので問題ありません!」



 やばい完全に手口に嵌った感じだが……『錬金の書』は自分の為になるから此処は受けても良いかもしれない……



「では、転写するまでお貸しいただいて、ユニークアイテムは使用後にレポート提出で良いですか?」



「………レ……レポ……レプートン?何でしょうそれは?」



「ああ!レポートです……報告書ですね!すいません……」



「ああ!報告書!使用後に報告書提出で構いません!……レポートふむふむ……レポート『メモメモ……』ああ!すいません!」



 僕は我慢できずペラペラと中身を確認する……



『ジーーーーーーーーーー』



 ミーニー学長の、突き刺さる目線が痛い………



「相変わらず……全く読めないですね!はははは!持っていると読める気になった気になるんですが……色々魔導書読めばそのうち経験が上がり読めるかな?とか思ったりするんです!」



「成程!!確かに……それは盲点ですね……各魔導書の特殊な部分をかき集めたら、もしかしたら理解出来るかもですね!是非試してみます!『メモメモ』………」


 その後僕は、更に1冊の魔導書をミーニー学長から受け取る。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 水の召喚魔導書『第1巻』


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「み……水棲個体召喚魔導書?」


「はい!ヒロ様のこの間の素晴らしい魔法を拝見して、やっとの思いで手に入れた『珍しい魔導書』で御座います!これは魔導士学院の資金をかなりかけたので……貸出が出来ませんが、ヒロ様の『研究室』据え置き用にしておきますので、良ければ研究材料にお使いを!」



 僕は魔導書を開けて1ページ目をみる……

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