第399話「ちょっと待って王様!!魔導士学院に関係者に大抜擢!?」


 今の問題は、メインで潜る1組の離脱は大きく、それに加えてテイラーの男爵爵位の拝命でギルマスも気軽に頼めなくなった。


 ザムド伯爵にしてみれば、自分の派閥に当たる貴族が減るのも困るし、そもそも『ダンジョンへ行け!』とは言えない立場まで上がってしまったので『頼み難い!』と本人に笑いながら言っていた。


 僕もテイラーも自由主義らしく、冒険者の方が性に合っていると言ったら、是非ダンジョン攻略を頼むと言われてその場は収まった。



 結果的に言えば、敗走した事の変化はもう取り返しがつかない事、地道に階層の魔物を倒すしか無い事、特殊個体の殲滅を急がねばならない事、この要件を満たす様に攻略する事となった。



 僕は一つ条件を付け足した……『僕のやり方は、僕が決める。これだけは譲れない』と言ったところ、皆が頭を抱えたが、そんなに難しいことでは無い。



 一言で言えば『指示役が面倒な場合、やり辛いから放って置いてくれれば、出来る部分は倒して来る』と言っているだけだ。



 『協力はしない』などとは、言っていない。


 ぶっちゃけ今までの話で、脳筋騎士団の人に指示されると『自分の命が危ない』と言いたかったが、流石にその言葉は飲み込んだ。



 敵の攻撃パターンを確認しないパーティーとは、正直危なくて組めないと思うのだが?…………



「それで別件なのですが、鉱山の魔獣の遺骸ですが……もう少し待ってください。ぶっちゃけちゃうと、魔物の遺骸は直ぐに出せますが、それをすると自分の物を整理する前に『マジックグローブ』を返却せざるを得なくなるので、数日だけ待ってほしいのです。今はスーパーコロニーになった蟻の巣で手に入れた宝箱とかも、この中にしまってますし……」



 そう言うと、不思議そうな顔をするギルドマスター……



「ヒロ男爵殿……何を言っておられる?今やその危険なアイテムは『ヒロ男爵の管理にて他者への譲渡及び貸し出しを禁ずる』との王命が出てますよ?」



「ハイ!?」



 思わず声がうわずった………説明を求める目をしていた様で、ギルドマスターは1通の羊皮紙に書かれた伝令書を見せて来た。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


           『王命』


 この度問題になった『魔導士学院』ユニークアイテムの

所在と管理について、王国に危険を及ぼす恐れがある。


 よって『魔導士学院』に現存する全ユニークアイテムの

管理及び所持は下記の者に一任する。


尚、命令をかい潜っての譲渡及び貸し出しも一切禁じる。


 爵位持ちによる強要が見られた場合、王国反逆罪を適用

し、即時関連貴族及び関係者を裁くものとする。


 守らぬ場合は、王命に叛いたと見做し『魔導士学院』を

直ちに『廃校』処分にし、王命反逆罪を適用し魔導士免許

における一切の権利を剥奪する。


 尚、ユニークアイテムの調査等は、ヒロ男爵の同伴の元

に行い、その都度限定管理者を『魔導士学院』に招くもの

とする。


          限定管理者 


 『ジェムズマイン領・南部』 領主 『ヒロ男爵』

         (元ヤクタ管轄領)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「おお……すまん!言い忘れていたわ!ヒロ男爵への所領の話で、陛下も頭が一杯だったのだろうな。今回の問題の一旦は『秘薬』だったが、このユニークアイテムがあると王都内で危険行為に及ぶ者さえ出かねん……と言うのが陛下の考えだ!」



 僕が呆けているが、ザムド伯爵はまだ話を続けている



「魔導士学院のユニークアイテムの全てを調べて、その管理をヒロ男爵に任せる……その理由は、アラーネア様にあの下で飯を食べている娘の事があるからだ……少しでも其方を『強く』しないと対応策が無いとの決断によるものだ!」



 ギルドマスターもサブマスターも何のこっちゃ分からない顔をしているが、次の瞬間意味を全部理解する。



「ねぇ、お兄ちゃん!お外に行っていいかな?マリンちゃんのところ行って来たいの!ちゃんと夜までには帰って来るから!」



 部屋の床から上半身だけ出して、悪魔っ子が話しかけて来る。



「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」」



 ギルマス達はビックリして飛び上がるが、悪魔っ子は『よいしょー』と言って、黒い穴から出てくる……そしてミオの声がドアの外から聞こえる……



「すいません!そっちに小さい女の子が行ってませんか?急に丸い穴が空いて……女の子が穴へ飛び込んだら穴ごと消えちゃって!消える前に『お兄ちゃんのところに行く!』って言ってたんですけど!」



 すると自由な悪魔っ子が勝手に部屋のドアを開ける。



「いるよー?」


「駄目でしょう?今大切なお話中なんだから!それにしても……これって魔法なの?クマッコちゃん!」



 ミオは、悪魔っ子のこの不思議な現象を受け入れている……更にクマッコってなんだろう…アクマッコのアが聴こえなかっただけだろうか?


 ちゃんと名前無いと流石に厳しい……と言う状況が良くわかった。


 しかし問題は他にもある……暇なこの子は既に部屋中を漁り回っている……何とかせねば!


「マリンちゃんのところは遠いでしょう?アリン子が速くても、夜まで走っても王都にも着くこともできないからね?王都までは馬車で7日かかるんだよ?」



「大丈夫だよ?空間歪めれば真横だもん!行っていい?」



「そ……そうなんだ?危ない事しないって約束できる?何かを壊したり、暴れたりは駄目だよ?」



「大丈夫だよ!今日は孤児院で夜にお魚焼くって言ってたから!マリンちゃんと食べようね!って話したんだもん!」



「そ……そうなんだ?じゃあ、ちゃんと食べたら孤児院の先生にお礼言うんだよ?後お手伝いもね?物壊さない程度に!」



「やた!じゃあ、行ってきまーす!今日はマリンちゃんに火の魔法の………教えて……あと核熱魔……あげ……『トプン』……」




 マリンちゃんと言う孤児に、やばい物を教えて無いか心配になったが……もはや手遅れだ……波紋が広がる音が聴こえてからは、声は聞こえない。



 どうやら自分の記憶は思い出せないが、学んだ事などは問題ない様だ……そして大発見がある……『魔法』と『悪魔の力』は別だ……そしてこの移動方法について帰ってきたら聴いてみよう……ココアとチョコレート用意しておけば………話してくれるかも知れない。


「では……薬草エリアの脇にジュエルイーターは出しておきますね?多分建物に収まらないので……あの巨躯は」



「うむ!ではそうして貰おう……ギルドマスターそれで良いな?」



 そう聞かれたギルドマスターは、その時床から突然生えた『悪魔っ子』の場所にサブマスと屈み込んでペタペタと触っていたが………




「え!?あ!!だ……大丈夫です!薬草エリアに置いて貰えばあとは解体担当へ伝えます!解体担当へ伝えて来てくれ!」



「は!はい……了解……あ!伯爵様!!今すぐ行って来ます」



 魔獣の討伐部位案件は、意外にもこうして解決した。




「くっくっく……どうだ?テカーリン?問題児が増えたぞ!?因みにギルドの外には『トンネル・アント亜種』が薬草を食い散らかしてるかもだ!『アリン子』と言ってな!ヒロの新しい『従魔』で3メートルあるぞ?もう街は大パニックだ!はっはっは!!」



「笑い事ではありません!!ちょっと見て来ます!!事故になる前に!!」



 慌てて出て行くギルドマスターとサブマスター……苦労が絶えない様だ……誰のせいかは言わないでおく……



 暫くして二人は帰って来たが、アリン子は薬草エリア付近の魔の森外縁部近くの木を伐採して、キノコの原木作りをしていたと説明された……


 まさか……ここでトンネルアントマイタケ畑を地中に作る気なのだろうか……?

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