第396話「大激闘!3姫の前に敵はなし!!」


「アーチ、前に!僕に続いてトドメを!」



 アーチは頷いて僕に駆け寄る。


 僕がジャイアントマンティスの危険なカマ部分を斬り飛ばし、アーチは巨躯のジャイアントマンティスの脚を踏み台にしてメイスをジャイアント・マンティスの頭部にめり込ませると、ジタバタと動いた後完全に停止する。



「はぁぁ……冒険者に皆はいつもこんな事してんだね〜緊張したぁ!!」



 アーチが僕と連携を取ったのを見て、スゥもウズウズして居たのだろう……素早く前戦入りする。



「今がチャンスだよ!ユイちゃん!モアちゃん!行こう!」



 スゥはクルンクルンと剣を回しながら接敵すると、下からの切り上げ一刀で動きが鈍くなった首を綺麗に刎ね飛ばす。


 そして、その背後に居た個体の振り下ろし攻撃を難なく盾を構えて止める。



 関節部が凍結しているので、満足な攻撃効果が出せないジャイアント・マンティスは『ギョロ』っと複眼をスゥに向ける。



 モアはその隙を見て、フェイントを挟みフレアダガーを素早く突き刺すと、ジャイアントマンティスの巨躯が燃え上がる。



「ナイス!モアちゃん!」



「バッチリだね。スゥちゃん!ユイちゃんトドメをよろしくー」



「うん!任せておいて、スゥちゃん、モアちゃん!!」



『風の王の息吹よ、障害を破壊せよ!ウィンド・バースト!』



 ユイが呪文を詠唱すると風の球がそに手のひらから放たれる……然程大きく無い球なのだが、燃え上がるジャイアント・マンティスは複眼を炎で炙られてほぼ視界が無い状態だった。



 『バチン!!!』



 ゴムで何かを弾いた様な音がした……小さな風の球が顔にヒットした瞬間、圧縮された空気が放出され顔の半分が吹き飛ぶ。


 そこからは流石は魔物で顔を半分失ったが暫く動き回って居たが、2発目のエアバーストが残った顔にヒットすると、流石に倒れ動かなくなる。



「ふぅ!完了です!今そっち手伝うね!」



 ユイが戦っている間に今度は、スゥが巨大な両手のカマを斬り落とし、モアはシャドウアローで下半身を穴だらけにして居た。


 そしてスゥとモアは瀕死の個体から距離を持つと、エアバーストが頭部にヒットすると今度は一撃で頭部を破壊する。



「魔力の込め方が分かって来たかも!ちょっと多めに入れないと意外と硬い頭だよ!」



 ユイはそう言って、時間差で風の魔力弾を生成しては放り投げていく。



「流石…好戦的な護衛達だな?ザムどう思う?ジャイアント・マンティスの動きを止めて2〜3人のグループでこうも簡単に倒せるなんて……異常ではないか?前に我が自領に出た時は大変な思いをして倒したんだがな?」



「ウィン……やはり状態異常はかなり有効の様だな……動きが緩慢になりかなり戦い易くなっているし、振り下ろし攻撃も可動範囲の問題で、満足に威力が出せて居ない様だぞ?」



「ザムド伯爵様、ウィンディア伯爵様うちのリーダーを『普通』に扱っちゃ駄目です……そもそもトンネル・アントに乗れる冒険者は居ませんから!」



 チャックはザムド伯爵とウィンディア伯爵に釘を刺すと『最もだ!!』と笑って話していたが、周りは……



「あの女の子達が前戦であの巨躯のカマキリと戦っているのが既に信じられません……我々だけではパニックでしたよ……冒険者の女性は皆『あんな感じ』なのですか?」



 輝きの旋風のローリィとエイミィは『断固違います!』と言っていたが、同じパーティーのアルベイ達はその意見は聞かなかったことにした。



 討伐を終えた後、回復師と薬師達で商団員と冒険者の怪我を回復させる。




「助かりました!突然森から飛んできたんです……逃げようとした時にはもう遅くて何とか対応している間に次の個体群が来てしまい……流石に死ぬ事を覚悟しました……」



 相手がザムド伯爵とウィンディア伯爵と分かると、平伏してお礼を言い出すので『病み上がりでそんな事をするな』と怒られていた。



「何故こんな個体が群れで居たのか……心当たりはあるか?何か噂など聞いたことはないか?」



「ザムド伯爵様……我々は情報を金のように扱います。助けて頂いた御礼もございますのでお話しさせて頂くと……『黒手会』と呼ばれる『闇ギルド』が何処かの『危険なギルド』と手を組んだそうなのです……そこは魔物を『取り扱う』と聞いたのです……こんな情報ですがお役に立ちましたか?」



 僕達は顔を見合わせる……『魔物を取り扱う?』既に一度戦闘をしたとしか思えないからだ……ゴブリン野外戦は記憶に新しい……あの個体は『檻』に閉じ込められて『大型荷馬車』で搬送されていた。



 あの野党は『個体を取り扱うグループ』だったとすれば末端の戦闘員だった可能性が出てくる。



「参ったね……こんな所で関係が出て来るとは……想像もしなかったよ!」



「仕方ないと思うぞ?エクシア……私だってウィンだってそう思わなかった……我々が出た翌日には既に絞首刑になっている筈だ……今伝書鳩を村に向かわせておくが……まず間違いなくこれ以上の情報は難しいだろう……」



 ザムド伯爵はエクシアにそう告げると、家臣を呼び伝書鳩を飛ばす準備をする。



「何かあったので御座いますか?そのご様子ですと『何か知っている』と思われるのですが?」



 ザムド伯爵の代わりにウィンディア伯爵が説明をすると、残りの2商団も自分の知っている情報を包み隠さず話す。


 どうやら他の場所でも異常行動が見られたらしく、何処でも『群れ』が出来ていたらしい。



 それを聞いた僕とエクシアそれにベロニカとテイラーの4人で、森に『檻』が放置されて居ないか探しにいく。



 すると森に入って少し歩くと案の定、巨大な檻が『10個』置かれて居て、近くにはそれを置いたと思われる野盗の死体と、ジャイアント・マンティス1体の死骸が転がっていた。


 どうやら手違いで逃げ遅れたか、証拠隠滅にでも遭ったのだろうが、何方にせよ自業自得だ。



「参ったね……こんな巨大な魔物を『捕獲』できるなんて……こんなのあちこちでばら撒かれたら堪んないよ!」



 僕は手掛かりがないか探していると………



「エク姉さん……こっちに2人歩いて行った形跡があるよ?戦闘前か戦闘後かはわからないけど……血も垂れてないところを見ると……戦闘前かな?指示役かもしれないね」



 ベロニカがそう告げると皆でその方を見てみる……たしかにそこには足跡や周りの折れた木の枝など、誰かが森の奥に分け入った形跡があった。



「こっちって……鉱山のダンジョン方向だね……まさか……ダンジョンの件にも絡んでるとか言わないよね……」


 エクシアがそう言うと僕達は顔を見合わせる。



 この状況をザムド伯爵達へ告げると……



「困った事になったな……何か悪巧みをしているならば……『それが誰』で『何の目的』かを調べなければ、街に危険が及びかねんぞ!?」



 ザムド伯爵もウィンディア伯爵もため息を吐く。



「ひとまずこの森付近にある巨大な檻は、僕が回収しておきます。証拠品になるので……」



「ヒロ男爵すまんなそうしてくれ……ウィンひとまずは街に帰ってからその証拠品をギルド預かりにしようと思う……その方が後々面倒ではないだろう?ヒロが居て助かったな……あのヤクタも役立たずじゃなかったようだ……」



「ヤクタ元男爵と騎士団長ターズで二人合わせて『ヤクタターズ』ですね?まぁ役に立ったら名前が負けちゃうんですけど……」



 重い雰囲気だったので、くだらない事を言ったらザムド伯爵もウィンディア伯爵も笑ってくれたので、今はこれで良しとしよう。



「確かにアタイもそう思うよ!今はここで話しても何も解決しないから、街に戻って情報収集からだね!」

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