第376話「手が足りないときの第二の手段」
「うぉぉぉ!やれるぞぉ!!突撃だぁぁ!!」
そう言って冒険者は、水竜巻を抜けて来たアリの群れに突っ込む。
その頃、僕はと言うと……
『アイス・フィールド!!!ウォーター・スピア!!』
幾つかの水竜巻を凍らせてから……それを魔法で根元を粉々にして押し倒す。
『ズドォォォォン』
もうもうと立ち登る砂煙。
アリの群れに巨大な氷柱が倒れ込み、押し潰す。
その氷はアリの行く手を遮り方向を変える。
『ウォーター・トルネード!!』
そこに再度ウォーター・トルネードで天高く多くのアリを巻き上げる。
当然水竜巻で、周りの粉塵を吸い込む事も織り込み済みだ。
僕は一度陣営に戻る様に、アリン子に指示をする。
連発で範囲魔法を唱えたので、ちょっと休憩だ……MPには余裕が有るが無駄遣いは出来ない。
範囲魔法は一回でMPを10は消費する……特定範囲には効果的なのでダンジョン・スタンピードには有効だが、今現状MPの回復手段がないので適度な回復が好ましい。
「ど……どうしたのだ!其方が戻って来ては意味がなかろう!さっさと倒しにいかんか!!冒険者がここで戦わず何とするか!」
腐敗貴族だろうか?戻ってきた僕にいきなり喧嘩を売ってきた。
周りの貴族も、そうだ!そうだ!と声を合わせて言う……
「ご自分で戦ってはいかがですか?あと後ろの騎士達……お前等風情が文句を言える方では無いぞ!!この方は『ヒロ男爵』である!冒険者風情と言うならば、このテイラーお前達を粛清するぞ!」
助け舟に来たのはテイラーとシャインだった。
「あ?テイラーさん!気にしないんでいいですよ?貴方達に言いますが、魔法は『MP』を使うんです!あれだけの範囲魔法なので連発すればすぐ『ガス欠』になります……見てきたところ全部が『働き蟻』なのでまだ第一波の恐れがあります……全部MP使ったあとは上位個体と貴方達が戦ってくれるんですよね?」
そう言ってからテイラーにお願いを言う。
「テイラーさん、盾役を集めて鉱山戦の時の様に陣を築いて貰えますか?多分次は『ひとつ上の個体』がなだれ込んでくると思うので……今回は運が良くかなり巻き込めたけど討ち漏らしは次は危険なので、あとこいつ等アリは王都の壁は『意味が無い』ので絶対に中に入れない様に、アリン子でも普通に登りますから!」
そういうと、貴族はバツが悪そうに……『ええい!お前達も戦わぬか!これでは我が何もしない貴族の様ではないか!!』と言って兵士達を戦場にけしかけるが、怖くて兵士は行こうとしない。
僕はテイラーと共に王にその話をしに行く事になった。
行ってみると、王の側にはザムド伯爵とウィンディア男爵が参謀扱いで共にいた。
「…………ふむ!分かったではアリン子殿が『壁を越えれる以上』他の個体も当然と言う事なのだな?誰ぞいるか!」
そう言った王は、指示を出す。
「良いか、アリは壁を越えてくる、中に居る住民は今すぐ外出禁止として戸締りをする様に言うのだ!壁内は壁越えしたアリに対応して順次適切に動く様に指示を!」
王がそう言うと、数人の兵士が慌てて門へ走っていく。
「お前はすぐに魔道院へ向かえ!そして宮廷魔術師に言って、『MP回復薬』を有るだけ戦場に持ってくる様に伝えろ!いいな早急にだ!でないと王国は滅ぶかもしれんぞ!」
兵士は慌てて宮廷魔術師の元へ走っていく。
そう言った王は何かを見ていた。
振り返るとそこには先程の倍はいるだろう『兵隊アリ』が見えた……簡易鑑定のステータスが被り、個体が折り重なっているのが一目で分かる。
周りでざわめきが起こる……王さえも顔色が物凄く悪くなっている。
王の顔を見た時に目に入ったものがある……城門に設置された巨大な騎士の石像2体と門に据え付けられた竜の上半身の石造だ……
「王様!アレください!!今すぐその許可を!」
僕の尋常じゃ無い様子に『好きにせよ!責任は儂が持つ!』そう言われた僕はアリン子に指示をして門へ向かう。
周りはアリン子にびっくりして逃げるが、スタンピードの魔物じゃ無いと説明する時間が惜しいので放っておく。
アリン子に城門の最大幅まで有る石像の頭まで登らせると、僕は錬金の書9巻を開く。
『確か……ストーンゴーレム……あったよな!!』
そう独り言を言って探し出す……ぶっつけ本番だが仕方がない……
『なになに……魔石に魔力を込めて?石像に埋め込み動かす……魔力の分だけ活動できて……ああ!もうここ鬱陶しい!!どうやれば動くんだよ!?』
僕はそう言って慌てつつ文字を目で追う。
さっきのポーションの様に失敗は出来ない。
『魔力を通しっぱなしは『ポーション作成』と変わらない……魔力を魔石にチャージして人形とするのか!んで………えーーーと………成程!埋め込む魔石で額に文字を彫るのか!!』
書いてある通りに魔石に魔力をチャージをする。
初級では『小魔石』以外使えない様なので、MAXの40MPを入れておく……魔石の色が『紅』になると、僕はそれを使い文字を彫り込む。
魔法文字の意味は『永遠なる従僕』という意味で『従僕』部分を破壊されると機能が停止されるらしい。
存在を破壊されると言う意味だそうだ。
「よし出来た……2体でMP80消費したけど戦力には十分だろう……『ストーン・ゴーレムに命令する!あの魔物を駆逐しろ!!』」
独り言に続けてゴーレムにそう言った途端、石像は両手で胸前で構えていた石剣を片手で持ち直して、魔物へ向けて走り出す。
僕は急いで、アリン子の背中に乗って、他の門の石像に『仮初の命』を吹き込んでは戦場を指示して向かわせる。
三つ目の門に辿り着き石像をゴーレムにした時に、残りのMPが26になってしまい、自然回復を待つしか方法がなくなる。
僕は宝箱で手に入れた『MPリジェネーション・ボトル 2本』の事をすっかり忘れていた……と言うよりあの日は大変なことが多かったので、個別にチェックをしていないで箱のまましまっていた。
そのせいで折角の回復手段があるにも関わらず、無駄に箪笥の肥やしにしてしまっていた。
「アリン子ぉぉもう無理……王様のところへ戻る。もうMP切れ……はぁしんどい……」
北門を除くすべての騎士像はゴーレムになり、戦場へ向かって行った……だが、実際どんな活躍をするか迄は想像もできない。
アリン子に指示をして王のいる場所に戻ると、兵隊蟻を石剣で叩き潰すストーンゴーレム6体の姿があった。
アリに群がられるも、首を引きちぎったり、胴体を引きちぎったりするゴーレム達は痛み知らずで無双中だった。
「すいませんあと2体はMP切れて無理でした……MP40も使うので6体のゴーレムしか出来ませんでした……回復手段が今ないので……」
そう言った時にシャインから『MP回復薬』を渡された。
「ヒロ様!凄いです!ゴーレムをこの短期間で用意なんて……魔導兵器なんてどこに用意を?」
僕は城門を指差すと……『ふえぇぇぇぇぇぇ!?城門の石像が!!なーーーい!!』と大声で驚いていた。
MP回復薬は一瓶で50MPを回復できる様だ……76まで回復できたのであと4MPで、ストーンゴーレムを2体追加できる。
そこに先程の騎士が戻ってくる……顔色が悪いので何かあったのだろう。
「国王陛下!魔導院に行きましたが、既にMP回復薬は貴族が持って行ったと………」
「なんだと!?どこの貴族だ!誰が全部出せと……馬鹿どもめ!!」
「それが……調べたところ北門から出て行った貴族3家がおりまして、その者達が持ち出した様で……『クエスター家』『リュージョン家』『ケブラー家』と思われます。その3家は魔道士が多く護衛隊を連れて来る度に魔道院から持ち出すと言っておりました……」
どうやらあてが外れた……MP回復が出来る前提でMPを使い込んだが、まさかまだ馬鹿がいたとは……それも全部持ち出して、さっさと王都から逃げ出したらしい。
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