第369話「マジックアイテム『魂の器』とエルフの都」


 大地エルフのエルデリアが僕の質問に対してダイレクトに質問をして来た。



「その名前を何処で?エルフの各都市に伝わる物で我々の武器の基礎に使われる物です……手に入れようは幾らでもありますが問題はそれを使い熟せるのはのはエルフでも限られているという事です」



 その話に僕は、エルフの国で秘匿事項になってないか確認するも『魂を移す器』であり、譲った所で人間はエルフの様に転化しないので、その効果さえ無駄にしかならないと説明された。


「因みにそれを使ってやりたい事がある人が居るんです。ですが詳しいことは言えなくて……譲って頂くことは出来るのですか?」


 その言葉に月エルフのエルオリアスが、



「譲ることは出来るが……それは通常持ち歩く様なアイテムでは無いので、誰も持ってはいないぞ?エルフの王都は何処も人間を拒む傾向にある……我らが貴方を連れて行く場合は、それなりの手続きの元貴方だけを通す事になる。従魔は別ですがね?」


 確かに前に聞いた事がある……エルフの王都は閉鎖的で誰でも受け入れるスタイルでは無いと……


 しかし可能性が一気に増えた事でアラーネアが飛びついてくる。



「ヒローーーー!!妾はお主の様な者を友に持って幸せじゃー!!」



「アラーネアさん!!折角伏せたのに!意味ないじゃ無いですか!」



「ああ!すまない事をした!だが妾はもう!ずっと探していたアイテムだから嬉しくてな!?そ……それでエルフの若者よ!何と交換で大丈夫かの?妾的には『秘薬』であれば200個までは出す準備がある!あとは……えーと……『神薬』が50個に、魔力消費を半分に抑える『マナリング』もあるぞ?エルフは好きだったものな!マナリング!!」


 大興奮で僕と話したかと思うと、エルフの3人に話しかけるアラーネア。



「わ……若者……!?我々はエルフだからこれでも既に300年は生きています……ま、まぁそれより……今すぐお渡しはできませぬが、ヒロ殿には音があります故『いずれ』であればお渡しできますよ?」


 そう言って、太陽エルフのエルフレアがそう言う。


「ただ我々は今任務中なのですぐに戻る事ができませぬ。なので人間であれば結構な間、待つ事になると思います……それも数天単位になるので貴女様はそれでも平気なのですか?」


 エルフレアから見れば、至って普通の女性にしか見えないアラーネアだが、実際は全く違う。


 心配していたら、普通に話し始めるアラーネア……


「妾なら大丈夫じゃ!既にもう3000天以上ダンジョンにおったからな!100天程度であれば問題ない!!」



 そう言うと、エルフ達は驚いて感知を使うも『人間表示』なのだが、反応の規模が通常と違いすぎる上に、発言内容が大問題だ。



 ビックリしてアラーネアをガン見する3人。



「アラーネアさんは……『何者』なのですか?その気配……既に人間の域でない様ですが……」



 仕方ないので僕は3人に耳打ちすると、顔面蒼白でアラーネアを再度ガン見する。



「申し訳ないですが……『何に使うかの用途』が絶対必要です!!でないと……我らエルフは……」



「母をダンジョンコアから引き離すのじゃ!その為には魂の器が必要になるからな!やり方は遥か昔に……あ!もう2000天前か?亡くなってしもうた王国の、エルフの長から聞いておるので問題はない!名前を言おうか?」



「滅相もない!名前はご勘弁を!我らが全エルフの長の名前など気軽に口に出してはならぬのです……今では……」


 アラーネアの言葉に、エルオリアスが慌てて口を挟む。


 エルフ達とアラーネアは情報交換をして、『魂の器』の取引を確定する。


 ただし、幾ら危険生物アラーネアの頼みでも、『魔物』となればそうそう話に持って行くわけには行かないので、僕管理で行うことが前提となった。


 因みに各王国から2個ずつの器をもらう事になった。


 それほど使う予定などないが、何処が出すかの問題が出たので僕が『全員出せば?』と言ったら、責任をそれぞれエルフで分担することで纏まった為に複数の器となった。


 代わりに、アラーネアからは『秘薬と神薬』を各一個渡す手筈になった。


 あれだけ大事になっていた秘薬を、アラーネアはマジックバッグに放り込んで居たらしく、前金として渡していた。


 『神薬』はエルフでさえも見た事がなかった様で、感動するあまりアラーネアのことを『アラーネア様』と呼ぶ様になっていた。



 その理由は僕がアラーネアは某王国の姫と言ったことで、理解できた様だ。


 エルフの歴史では、かなりな問題として語り継がれているらしい。


 ちなみに神薬の効果は『希少種ユニークスキルの獲得』と言う事だった。



 そしてその希少種ユニークスキルの代名詞が『鑑定スキル』らしい。


 なんとびっくり此処で謎が全部解けてしまった。



 そして聞き耳を立てていたエクシアは、盛大にエールを吹き出していた………



「そう言えばひろ!妾は明日この餌と共に『帝国領』まで行く事になったのじゃ!この馬鹿が『心配だー心配だー心配だー』と喚くもんでな!!妾とすれば面倒なのだが……餌を勝手に行かせる訳にもいかんでなだから少しの間会えなくなるでな!其方もそろそろ街に帰るんであろう?」


 アラーネアの言葉で、ザムド伯爵が代わりに話す。



「アラーネア様に先に言われましたが、王都での用事は終わったのでな!これでジェムズマインに無事帰れる、それに向こうでもまだやる事が多いからな!ヤクタの後片付けに、魔術士学院の一件、鉱山の褒賞もまだ払っておらん。もうフォレストウルフの手も借りたいくらいなのだ!」



 どうやら、こっちでは猫では無くウルフの手らしい……



「一応明後日の朝に王都を離れるからな!『催事』として許可が出せるのは3日しか無理なのでな……マッコリーニ!後で報告を頼むぞ?我々は先に戻るが、主はどうする?少し多めに残って行くのか?」



 ザムド伯爵のその言葉にマッコリーニはすぐさま『一緒に戻ります!』と言うと、なぜかフラッペもハリスコも同じ様に言い始める。


 ザムド伯爵はマッコリーニに一丸まった束の羊皮紙を渡す。



「これは?なんでございましょう……ザムド伯爵様?」


 マッコリーニが開けると、それは羊皮紙に包まれた鑑定スクロールだったが『普通』の鑑定スクロールではなく、上級鑑定スクロール数枚と、ダンジョン産の高級鑑定スクロールだった。



「王様からの鑑定スクロールの返却らしいぞ。その『高級』はお主への礼だそうだ。後その羊皮紙の内容もちゃんと目を通して行く様に!後で知らなかったでは].『不敬罪』に問われても知らんからな?」



 羊皮紙に書かれたそれは、王宮の『専売商人許可証』だった。


 それを見たマッコリーニはその場で羊皮紙とザムド伯爵に土下座をしていた……



「恐れ多い事であります!このマッコリーニ誠心誠意その仕事に励ませて頂きます!!」



 その姿を見たザムド伯爵は『良かったな?それも『鑑定スクロール』で姫が救われた礼だそうだ!』と言って笑っていた。


 そして、ザムド伯爵はハッとして付け加える……


「ただし、それは帰ってから渡せと言われたからな!今すぐではないぞ?先に渡しておくだけだ!忙しいから忘れたら申し訳ないからな……そのつもりでいろ!」


 その言葉にハリスコとフラッペは羨ましくマッコリーニをじっと見ていた……


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 翌日は朝から孤児院の院長が悪魔っ子を連れて来ていた。


 当然朝早くに、今日の声かけ当番になったと思われるラスクが『起きてください朝です』から始まったが、いつもなら朝から煩い水っ子の気配がないのでおかしいと思ったら……孤児達にお願いされて化現して出ざるを得ない状態になっていた。



 孤児達は下の食堂でなぜか皆おにぎりを食べている。


 そして、お誕生日席の位置に水が用意されていて、困った顔をした水っ子がいた。

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