第367話「恐怖!!アラーネアの魔法は地獄と直結?」
アーコムが逃げた事でアーク伯爵も焦る。
無くなった脚の痛みに耐えつつ、無くなった窓枠から飛び降りて逃げた。
当然2人とも、そんな所から飛び降りたので無事で済む訳はない。
手をついた時に手首の骨折、そして転がった時に肋の骨折、そしてアーク伯爵に至っては失血による貧血まで起きていた。
2人が飛んだ理由は明確だ……アラーネアの魔法攻撃が始まるので窓から逃げ出すしか無かった。
悪魔の子と思っていた子供達は、呆気なくアラーネアの糸に絡め取られて安全な天井に退避させられた。
そして、ガラ空きになったところに目に見える様にアラーネアは奇妙な呪文詠唱を始めた。
「グロア・ギ・マクス・ゴア・ゼイリブ………妾を煩わせおって!忌々しい!消し飛ぶが良い!!ゲヘナ・ブラスト!!」
目の前の壁が魔法陣の形に赤々と燃えているだけではない……魔法陣の形に窓があった壁が燃え、そこから燃える亡者が這い出て来る……
当然人間2人など始末するには適切な呪文ではない……これは絶対にわざとだ。
『ギィィヤァァァァァ……ガガガ……ウガァァァァ』
『ブバァ……ゴアァァ……ギャァァァ』
燃え上がる亡者は口々に絶叫をあげている……亡者は引き摺り込む対象が居なくなったので、窓からぞろぞろと外に出て行く。
王の言葉に、騎士と冒険者は雪崩れ込んで居たので、その様を見ずに済みトラウマになら無かった様だ。
だがその一方、外にいた王と一部の騎士と冒険者は、その燃え上がりながら魔法陣から這い出る亡者を見て一斉に逃げ出す。
僕とアラーネアは王達が来ているとは思わなかった。
アラーネアは手を振って魔法陣を消すと、天井に吊るした子供を回収に行く。
怖いものを見せない様に目と耳には、粘着性が無い系をグルグル巻きにしていた……ぐるぐる巻きでぶらぶらしていたのが楽しかったのか、アラーネアが天井に行った時には『きゃっきゃ、きゃっきゃ』言っていた。
外が騒がしいので、僕はアーク伯爵が窓から飛び出す事を含めて罠かと思い、次の騎士や兵士に対応する為の準備を始める。
急いでウォータースフィアで窓があった場所を破壊して、敵には上から一方的に射撃を行う予定だ。
その後に犯人を追っかけると言う流れにして、実際に壁を破壊する。
攻撃後にすぐに追いかけようと下を見ると、悪辣貴族の兵達では無かった。
居たのは王の騎士団と冒険者だが、王様が距離を取って『だ!誰か見てこい!王命である!』と言っていたが、誰も動こうとはしていなかった。
しかし王は窓枠があった場所に僕を発見する……
「ヒ……ヒロ男爵か!?今のはヒロ男爵の魔法であるか!!者共!あの魔法は恐るに在らず!!我らが王国の男爵の魔法ぞ!!」
その言葉を全く僕は理解できなかったが、皆僕を称える様に勝鬨をあげているので、ついうっかり……
「僕はアーコム子爵及びアーク伯爵の悪事を見逃したりはしない!!彼等を王都に連行して厳罰を!彼等は『特殊な力』を利用して、国王暗殺を企てた!暗殺に必要な特殊な『スキル』を持つ者を得ようとしたその結果、孤児院は焼かれて多くの孤児達は住む場所を失った!」
僕が真相を話すと皆黙って聞き始めた……
多少無理があるけれども、ゴリ押しで話を進めていく……
「僕はそんな孤児達の味方だ!不正を許す貴族達など要らない!今回の孤児達の賠償としてアーク伯爵別邸を希望し、孤児院とする事を希望します!!さらに言わせて貰いますが、今回攫われし子供の1人は我が連れ子です!!仮に爵位が上と言えども許される事ではない!彼等の爵位及び領土の没収、そして全ての財産を没収し街の役に立てていただきたい!陛下の返答は如何に!!」
ちょっと最後だけは貴族っぽく言ってみたが……受けが良いかは気にしないで行こう……気にすると豆腐メンタルがぐちゃぐちゃになってしまう……
そう言った僕の言葉で、一斉に冒険者は王を見る。
そして王は理解する……
解放した『悪魔』の対処をしてくれると……ならば安い物だ!と即答する王様。
「分かった!!この度の件、罪状が確立次第、彼等に厳罰を与えよう!そして多くの目撃がある事を加味して、今この時点を持ってアーク伯爵別邸を『孤児院』としての使用を許す!一族は直ちに退去する様に申し伝える!!そして、その建物は孤児院の院長クレメンスの個人的資産として、孤児達の暮らしの為にのみ持つ事を国王として認める!!」
「「「「ウォォォォ!!孤児達の勝利だ!!ユニバース国王陛下バンザーイ!!」」」」
王の言葉で冒険者から讃えの言葉が上がる。
そのあとに、冒険者に集まる様にけしかけた銀級冒険者が大きな声で、冒険者達に指示を出す。
「陛下の為に!皆で罪人を王都に連行するぞ!回復師と薬師は2人の怪我をみろ!王都に着くまで絶対に死なない様にしろ!街の皆にこいつ等の悪事を晒すまでは死なす訳にはいかん!!」
こうして孤児達は新たな『孤児院』を手に入れた……この異世界で一番豪華な孤児院の誕生だろう。
子供達は、水っ子とスライムに守られている所を騎士と冒険者に発見された。
冒険者が先に踏み込んだ為にスライムが窒息させて、うっかり水っ子は巨大な水槍を生成したところで、敵ではないと武器を捨てた事で多くの冒険者と騎士が一命を取り留めた。
孤児が地下牢から連れ出される時に、多くの冒険者と騎士が水の精霊に頭を下げて『崇拝せし水の精霊様、子供達をお護り頂きありがとうございます』と言ったところから、有頂天になった水っ子は……
『ワテクシは水の中級精霊なり!この地を守る精霊の一柱にして、其方達の守護精霊なり!これからも今の気持ちを忘れずに、水を祀るが良い!』などと言った為に、後にその事を聴いた王都の水精霊を祀る教会関係者が、この廃墟に巣食う幽鬼の一斉清掃に乗り出し、聖地巡礼者が増えたらしい。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「貴方達!!無事に帰って来れたのね!?有難う御座います!ヒロ様!何から何まで………うう……うううう………」
すぐに泣き始める孤児院の院長だったが、アラーネアの一言で空気が一変する。
「お腹すいたのじゃー!妾は頑張ったぞ!?褒美はまだなのか?美味しいものが食べたいのじゃ!!」
そう言っているアラーネアの言葉に反応する様に、マッコリーニ達は待ってましたとばかりに夕飯を並べ始める。
「今日は、踊るホーンラビット亭と我々の共同レシピにてございます!どうぞ召し上がれ!」
と言って出てきたのは、焼肉と生姜焼きのミックス定食だった。
肉は2種類でご飯に味噌汁、そして果物は完熟レモップルにドリンクにレモップルジュースだった。
僕は平皿を貰い、ご飯を入れた後ひっくり返してドーム状にしてお子様ランチ風にしてみると、アラーネアは『自分のご飯と取り替えるのじゃー』と言ってきた……
自分でやれば良いのに……と思ったが、今日のお礼もあるから折角だしという事で交換したが、アラーネアのお皿の肉は半分もうなかった。
彼女は何食わぬ顔で交換したが、計画的であることは間違いない……
そして悪魔っ子も何気なく普通の顔して食べている辺り、ちゃっかりしている性格だろう……お代わりまでしているし。
ちなみに孤児院の子は流石にもう、お腹に入らない様だ。
ちなみに子供達の多くは、冒険者が乗ってきた馬車に乗り無事に王都まで帰り着くことができた。
王都のアーク伯爵の別邸には王の命令で、すぐに兵が差し向けられ、中にいた『シッツ伯爵夫人』が連行された。
アーク伯爵も同様に連行されたので『カイトール家』は歴史から名前を消すだろう。
そして孤児院の院長に伯爵邸の話をしたら、全力で拒否された。
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