第302話「悪辣貴族の回し者が蔓延る王宮」

僕は証拠隠滅される前にちゃんと毒薬も鑑定する。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


・樹皮ムカデの唾液毒『別名:毒薬小瓶』


 錬金可能・マジックアイテム(薬品)


 樹皮ムカデの牙から抽出した猛毒。


 小瓶1本で4Mサイズの平原パイソン

(毒耐性持ち)を殺す事ができる。


『特殊効果』


 『服用時』

 ・10ミリ使用時『猛毒』の状態変化

 ・5ミリ使用時 『毒』の状態変化

 ・微量使用時 『微毒』の状態変化


 『矢に塗布時』


 ・毒矢で使用可能。『猛毒』効果

  ⇨矢ダメージ『-50HP固定』


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 内容はなかなかエゲツない効果だった。


 鑑定が終わるとほぼ同時くらいにぞろぞろと玉座の広間へ魔導士達が入ってくるが、どうにも胡散臭い。



「王様!では鑑定を………」



「汝等は下がれ!余が自らやる!鑑定スクロールを此処へ!」



「何を仰いますか!我々が信用出来ないとでも?我々宮廷魔術士は今まで王の為にどれだけ尽力したか!鑑定スクロールなど些細な事は我々に任せてくだされば良いのです。」



「そもそも王様は鑑定スクロールの本来の使い方をご存知無いかと……。我々は鑑定魔法を学び長い間この王宮で鑑定魔法レベルを上げて来ました」



「それ故に、我々は『何処の誰』より詳しい鑑定が出来るのは王様もご存知でどざいましょう!」



 魔術士が鑑定をすると言った時に既に怪しいと踏んだ王は其れを拒んだが、王宮魔導士は鑑定魔法スキルLVを武器に食い下がっていた。


 自分でやると言っていただけだが、王宮魔導士の信用問題まで持ち出す時点で怪しい事この上ない。



 しかし、そんな事エクシアにはそんな事情は全く持って関係ない。


 そもそも僕が鑑定すればすぐにわかるのだ……多少無理してでも一網打尽にしてやろう……とエクシアはそんな気になっていた。



「とっとと、そのスクロールを起きな!」



 そう言ってエクシアが凄み、鑑定スクロールを持つ宮廷魔導士の首根っこを腕を使って締め上げる。


 エクシアに髪の色は既に、赤々と燃えるような赤味に中央はオレンジがかるまで色が変わっていた。


 その為、触れると非常に熱く『火傷効果』があったので、髪が触れるたびに物凄く苦しそうだった。



 予想外の事態に戸惑う魔導士達……後から入ってくる輩も粗方こんな事だろうと踏んでいたが、腐り切った王宮の廷臣達だった。



「何だい?コレは!!『毒薬』って既に書いてあるっておかしくないかい!お前たち……王を欺いてそれでも王宮の魔導士か!」



 エクシアは宮廷魔導士の数名を勢い良く蹴り飛ばすと、既に毒薬小瓶と書かれた鑑定スクロールを王に見せる。


 全てが毒薬小瓶の表記になっているので、今此処に居るやつは全員グルだろう。


 それを見たエクシアはアレックスに指示を出す。



「マッコリーニを呼びな!アレックス……部下に言って早馬出し、鑑定スクロールをありったけ持って来させな!良いかい!アンタのちゃんとした部下を使うんだよ!クソ野郎の回し者じゃない奴だよ!」



 マッコリーニまで巻き込まれて大変な事になってしまった………



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「マ!マッコリーニ!ああ!ふ……不詳ながら……ジェムズマイン商団長……ああ……マッコリーニ商団長只今参りました!こ……これが鑑定スクロールで御座います!」



 それからアレックスの指示で、騎士1名が馬を飛ばしてマッコリーニを探しに街へ飛び出て半刻程で戻ってきた。


 襷掛けしたバックには大量の鑑定スクロールが詰め込まれていて、マッコリーニの顔は汗だくだ。


 荷馬車にある物は全部詰め込んで持ってきたのだろう。



「こ……これで鑑定を!できます!」



 突然意味も分からず王の御前に連れて来られて、誰の手も通さず王に直接鑑定スクロールを手渡しする羽目になったマッコリーニは、もはや可哀想でしかない……



 聞く言葉が何もかもが滅茶苦茶だ。



「うむ!マッコリーニ待っておったぞ!後でこの件はちゃんと褒美を取らすからな!」


 鑑定した結果、王の持つ物は『秘薬』と判別でき、廷臣の持つ小瓶は『毒薬』だと分かった。



「騎士達よ!この不届き者共を今すぐ牢へぶち込め!」


 アレックスが騎士に号令を出す。


 その言葉を聴いて王は、順に話を振る。



「アレックスにザムド、それにウィンディア共をせい!今からシリウスの部屋に行き回復措置をする!妻が余計な貴族共を茶でとどめている今がチャンスなのだ!時間を無駄にし過ぎた!」



「エクシアとヒロ!それにマッコリーニ。申し訳ないが第一応接間で待っていて貰えるか?今は誰も信用出来ぬ故、余が自らシリウスの回復措置をする事にする!………話と礼はその後だ!」



「我が騎士達何をしておる!我が娘の薬をすり替えようとした其奴らの顔など二度と見たくないわ!さっさと連れて行け!!騎士団地下牢に投獄し、全員を取調べ計画を自白させよ。」



「そして毒薬へのすり替えに関わったものを一人残らず探し出せ!その上で犯人に関わる一族郎党斬首の上、晒し首だ!必ず関連した者も全部探して逐次牢に叩き込め!」



 僕とエクシアは別の廷臣に案内され応接間に戻る事になったが、アレックスとザムド伯爵にウィンディア男爵は王に連れられてシリウスと言う第一王女の部屋に向かっていった。


 身内でも現状で信用できるのは『秘薬』を持って来た者と、娘の護衛騎士団だけなのだろう。


 それも王妃の家族であれば尚更だろう。



「なんか王様周りも凄いことになったなぁ……ここまで腐ってやがるとは本当に碌でもないな権力争いってのは……」



 エクシアはそう言いながら、僕のスキルで出した倉庫の中を覗いている。


 部屋の中には応接担当も不思議そうに倉庫を覗き込んでいるが、残念ながら中には僕以外は入れない。



 相変わらず元気そうにスライムが転がっているが、既に土の12刻(昼12時)になっている。


 僕は倉庫に入って、マッコリーニから貰ったおにぎりの一個をスライムに差し出すと器用にカウンターの上に登って来る。


 その後包み込んでおにぎりを食べ始めた。


 振り返ると、エクシアが欲しそうに透明の壁を激しく叩いているのが見えたので、醤油味と味噌味のおにぎりを倉庫入口から出して渡す。



「すいません……中に入ると外の音が聞こえないようです」



 僕は外に出てそう言うが、エクシアはそんな事よりおにぎりにご執着だ。




 午後からは『悪辣貴族一掃』が待っている。


 次の時間が火の16刻と連絡が来た為に、一度宿に戻り再度来る必要がある。



 応接間に戻り半刻程で僕たちは再度玉座の広間に案内された。


 回廊を進む間マッコリーニは、先程の王への謁見でやらかした粗相に青褪めていて珍しく元気が無い。


 しかしその王は、マッコリーニに感謝していると思われるので心配はないと思うのだが……


 


「おお!来たか其方達!誠に素晴らしい日だ……娘のシリウスが……長く伏せっていたシリウスが………」



 僕達を見た後少し話したかと思うと涙ぐみ空を仰ぐ仕草をする王様……しかしすぐに話を元に戻す。



「感激のあまりすまんな……秘薬で既に回復したのだが、数日は様子見をすることになってな!全て無事に秘薬を届けてくれたお前達のお陰だ!礼を言う!ありがとう!」



 無事シリウス王皇女は魔結症から回復し、魔硝石化が回復したようだ。



「王!我々に頭など下げるものではありません!この国に暮らす民として当然の事をしたまでです!」



 一人の父親として礼をした王様だったが、廷臣から注意をされる前にザムド伯爵から言われた……気軽に頭も下げられないようである。



「それで……『悪辣貴族一掃の案』是非聞かせてもらおうか!」



 僕達の一掃案を承諾してくれるようで、その後ザムド伯爵は半刻かけて手順と対応策を説明した。

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