第278話「素人刺客と雑な襲撃案」

徐に僕は騎士達が見張りをする賊に元へ行く。



「すいません、シャインさんちょっと手伝っていただけます?あと、伯爵様ポーションを頂けませんか?」



 そう言うと二人は疑問に思いながらも僕の側にくる。



「はい?私でできる事があれば……何をすればいいのでしょう?」



 シャインが少し不安げに質問するが、彼女にお願いしたいのは『解毒』と『回復師としてのスキル』だ。


 万が一賊の猿轡を解いた時に自害する可能性がある。


 その時のための『解毒』と『回復師』と万が一の時のポーションだ。



「シャインさんは、万が一この賊が『毒で自害』した時に、状態異常の回復と体力を回復させてください。その後は僕がやるので大丈夫ですが、人数が多いので何度かお願いする事になると思います」



「伯爵様が実際にやる事は特にないのですが、アリン子で痛い事する予定なのでそれを治す『ポーション』を提供していただきたいのです。」



「少しずつ生きたまま食べられれば、穢れが溜まって彼等はいずれ魔物になると思うんです。なるべくそうならない様にポーションで怪我を塞ぎたいんですよね!」



「よく魔の森で『ゾンビやスケルトンそれとゴースト』になる話を聞くので、彼等もそうなる前に口を割ってもらいたいんですが……」



 僕はわざとそう賊に聞こえる様に言うと、意味を理解したのか伯爵がポーションが入ったマジックバッグを出して言う。



「皇女の命が危険に晒されたのだ、証人に何人か生かしておけば良い……他は魔物だろうが魔獣だろうが変わり果てても構わん。黒幕を話さなければ『魔物』になるまで『拷問』を続けよ!」



 伯爵は僕の案に乗ってくれて上手く口裏を合わせてくれるが、目元が笑ってないので意外と本気かもしれない。


 それに比べてシャインさんは控えめだった。



「私は『痛い』のを見ているのは苦痛なので解毒と回復だけにさせてください。『生きたまま腕や脚を食べられる』なんてもう……トンネルアントの大顎に鉤爪ですよね?後はスライムの溶解液ですかね?見るのが辛いのでできれば彼等の状態異常回復後の離れた後に……」



 そう言ったあと、賊に変化があった『んうーー!んうああーーー!』と言っている。



 猿轡を外すと、賊は話し出す。



「全部話す!だから『魔物の餌』と『魔物堕ち』だけは勘弁してくれ!せめて鉱山奴隷で!頼む!!」



「雇い人は知らないんだ……本当だ!俺たちは闇ギルドでも汚れ専門でも無い!スラムの炊き出しで言われたんだ!『良い仕事』があると!王族護衛で装備も提供すると!」



「先頭馬車に細工した後、事故と魔物被害に見せかける様に侍女の馬車を狙えと!積んである荷物を全て破壊して『侍女』を平原に放り出すだけで金と装備が貰えるから後は歩いて隣村まで歩いてギルドへ報告しろと!」



「運が良ければ侍女は生きていられるし!装備も金も手に入る簡単な仕事だって言うから引き受けたんだ!知らなかったんだまさか王位継承権者の馬車とは!」


 毒が奥歯に仕込まれている事も考えたが、その手のプロでは無かった……僕は依頼主の情報を聞く事にした。


 多分直接本人に行き着くことはないだろう……下へ下へ依頼が出てお粗末な結果に辿り着いたか、それ以外の何かが目的かもしれない。



「その依頼人の特徴は?話した方が身の……」



 伯爵が全部を言い切る前に、自分から話し出す冒険者崩れ達……



「黒いフードを深く被ってた……でも仲間の位置からは顔が見えたんだ!だよな!?お前言ってたよな!」


 そう後ろの男を見て捲し立てると、後ろの男も首をブンブンと縦に振る。


 死にたくないと言うのがものすごく伝わってくる。


 アリン子に口を開けさせて待たせているのだが……アリン子にはもう良いと言い忘れていた。



「アイツは娼館に良くいる男だ!冒険者か関係者かは分からないが、連れていけば証言する!だから殺さないでくれ!魔物の餌は嫌だ!蟻の魔物だけは嫌だぁ!」


 その男の左手の指は何本か不自然にないので、以前蟻の魔物と戦闘した時に多分『喰われた』のだろう……


 彼は仕切りに白状するから、蟻の魔物をどっかにやってくれと言って居る……相当なトラウマなのだろう。



 僕は拍子抜けしてしまい愚痴をこぼす



「意外に早く白状したなぁ……変な芝居しなくてもアリン子を目の前に見せるだけでよかったか……」



 残念そうに聞こえたのだろうか……伯爵とシャインが苦笑いをしていた。


 その後、騎士団の拷問はする必要が無くなった……何故なら彼等は知って居る限りの全てを白状する。


 彼等はそれなりの実力者で、組織に所属して誰かに雇われて居ると思っていただけに全員が『残念でならない』顔になる。


 街に戻ればその『証人』は間違いなく消されて居るだろう……


 その事は誰でも想像がつく。


「困りましたなぁ……意外に早く口を割りましたが……『元冒険者』ならばマジックアイテムの使い方を知って居る事になんの不思議もないですしな……」



「手に入った情報といえば、『娼館の男』『馬車への細工』『指示書』『侍女を放り出せ』この程度だと狙いは『皇女』ではなく『インディ様』だった可能性さえ出てきます……」



「偶然そこに『皇女』が運悪く乗っていた……となれば事情は大きく変わってきます……」



 アレックスがそう言うが僕はそう思わなかった……何故侍女を『平原に放り出す』事を選択したのか……どうせ放置するなら平原でなくても良い……その場でいいのだ……馬車は事故に見せかけると言っていた。


 僕は『皇女』の存在を知った上で、『侍女』を平原に放り出させる気だったのではないかと思ったのだ。


 誰かに平原に送り込まれたのは、それを指示した者と実行犯しか知らないからだ。


 全てを事故の偶然に見せかける気だったのかもしれない。


 その結果『皇女は蟻の餌になった』と思わせれば徳をする者がいるのではないか?


 その事をアレックスに話してみる事にした。


「偶然ですかね?僕は当然この結果を求めて策を練ったとしか今は思えないのですが……偶然姫が乗っていた理由はなんであれ『蟻の餌』にしたかっただけなのでは?」



「それが、運悪く助かってしまったのでは?兵達はなるべく傷付けない様に『マジックアイテムで無力化』するのに、侍女達は無数の蟻がいる『平原』に放り出されるんですよ?おかしくないですか?同じ様にマジックアイテムで『無力化』で済みますよね?」



「気絶させた結果『平原に踏み込んだ』とか、気絶して居る間に『蟻に食われた』ではなく……侍女は平原に『放り出せ』なのは意思と意図が明確すぎじゃないですか?『殺意』でそうしたって事ですよね?」


 それを聞いたアレックスは目を剥き出しビックリする。



「今の情報だけで……不思議に思うことがあったのですか!?では……犯人の手がかりは?何かお分かりになりますか?」


 アレックスは考えるのが苦手な様だ……全部丸投げでどうやって見つける気なのだろうか……


 それどころか僕は『王都』に行った事もない、関連の人間関係も知らないのだ……分かる筈も無い。


 なのでその事を説明するとアレックスは、本当にわかって居るのか『そうでございますね!』と言う。



「ひとまず『死んだ事にして』様子を伺えば尻尾を出すのでは?伯爵様は王都にお屋敷をお持ちで?」



 僕がやろうとした事を把握したのか『それは不味い!幾ら何でも無理だ!』と言う。



 伯爵家に匿い変な行動を起こした貴族がいた時に、『皇女の登場』としようとしたが『秘薬』の内緒事があったので、これ以上問題を増やせば『王の不況』を買うとしかいえなくなっていた。


 協力者がいない以上は仕方ないので、僕は引き下がるしか無い。


 まぁ、このまま王都の門を潜れば何かしら問題をしでかす貴族がいるだろう……そうなればそこから崩しても良い。


 運が良ければ今回の黒幕にも通じて居るかもだ……大概悪い事をする奴は徒党を組んでいるからだ!

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