第261話「蟻は意外と苦労人……人じゃありませんが何か?」
僕達はトンネルアント・クイーンを倒したのでタイラントをどうしようか考えていた。
このまま放置すれば『ボーッ』として居るのでいつか死ぬだろう。
放置して居るのも忍びないので、エルフが首を刎ねようと近づくと、ノロノロとクイーンの部屋を歩き回って壁に生えて居るキノコをモグモグ食べていた。
エルフもその動きが不思議に思えたのだろう。
僕は反対の壁際に行き鑑定してみる。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
・洞窟蟻キノコ (トンネルアント・マイタケ)
食用可能、生産・量産可能植物、キノコ類
・『希少食材』
肉厚なその身は濃厚な旨味がある。
トンネルアントが好み洞窟内栽培して居る
トンネルアントの主食であり、保存食で
もある。
主に、クイーンが食べ繁殖時の栄養補給
に使われる。
クイーン用のキノコをタイラントが偶に
食べてしまい、クイーンに激怒されること
があるほど美味しい。
食用効果
体力回復、満腹効果持続(半日)、
冷耐性強化、特定異常回復(補助)が可能。
特殊な成分を抽出する事で塗り薬や、
ポーション、魔法触媒にも使用が可能。
作成可能
塗り薬、傷薬、丸薬、回復薬、惚れ薬
耐性強化薬(冷属性)…etc
回復系触媒に使用可能。
異常系触媒に使用可能。
防御系触媒に使用可能。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
ビックリすることに希少食材だった。
そしてクイーンが居なくなった為に、食べも怒られないので自由にキノコを漁って居る様だ。
僕は壁から一個剥がしてみるとかなり良い匂いのするキノコだった。
マイタケと名前がついて居る以上味香り出汁共に期待できるだろう。
僕の真似をしてエルフ達も手に取ってみる。
「コレはいい匂いだが……我々も食べれるのか!?」
僕はついうっかりとマイタケご飯を想像していた為に話してしまう。
「コレは洗浄してから細かく切って、醤油と一緒にお米に入れて炊くと美味しいご飯になるんですよ!エルフの国にはお米はないですかね?」
すると意外な言葉が出てきた。
「米ならあるぞ!?我々は良く食べるが人属が食べて居るのは、聞いたことが無かった!君のいた村では育てていたんだな!?嬉しいよ。我が大地のエルフとしては!」
そして周りのエルフは美味しいと聞いたなら……と手持ちの麻袋に詰め始めた。
残念だが袋は小さくてそれほど入りそうにない。
マジックバッグには既に山ほどの平原ウルフが入っていてもう入らないと見た……
ちなみに僕は、飴ちゃんの外袋を取り出して詰めて行く。
遠征中に食べれる様にバッグに入れておいたのだ。
僕がユニークアイテムのマジッククロークを持って居る事を知って居るのはほぼ周知の上だが、ヤクタ男爵が狙いかねないと思って予め移していたのだ。
ここにきて外袋が意外と役に立った。
因みに中に入ってた飴は、バッグに入れておく。
キノコがリュックの中でバラバラにならない様に、手近な袋に入れたのだ。
それにリュックの中で菌が繁殖して、舞茸リュックになるのも嫌だ。
本当はいっぱい欲しいが、ムシャムシャ食べてるあのタイラントの為にも取っておこうと思ったので、このビニールに入る最低限の量にした。
エルフからは背を向ける感じなので異世界の袋は見られないで済む。
この中身を少し使ってご飯にして、あとは持ち帰って皆で食べよう。
特にマイタケと知ったら、カナミが喜びそうだ。
集めて居ると背後に何やら存在を感じて、振り返るとタイラントがいた。
僕が夢中できのこ狩りをしていたのだが、同じ行動をして居る為に近寄ってきた様だが『愚鈍』の影響でボケーっと食べている。
その時タイラントの足元に落ちていた飴を見つけた。
入れ替え中にキノコに夢中になってうっかり落とした様だが、落ちた拍子に包み紙がずれていて土がかかってしまい流石に食べれない。
それにキノコの菌があるだろうから食べたくもないし、そもそも蟻の巣の中だ。
僕が手に取ると、タイラントは僕の手を見つめている……嫌な予感がする……今まで身体を伸ばして前足の鉤爪で必死にキノコを剥ぎ取っていたタイラントが『ドズン!、』と言う音と共に僕の正面に来る。
エルフが慌てて武器を構えるがタイラントは動かない……でも何故か口を開けて居る。
襲われるのも嫌なので、僕が飴を口に放り込むとバリボリ音を立てて食べていく。
するとまた壁に向かいマイタケを鉤爪でむしっていくタイラント。
エルフ達が慌てて駆け寄り声をかけてくれる。
「危なかったな!あの行動は正解だ!何かわからんがこの至近距離で戦闘になっていたら………うぉう!!」
話して居る最中にエルフの隊長はタイラントの頭で押しのけられ、その勢いで転倒する。
一斉に武器を構えるエルフとは対照的に、タイラントは変な行動をする。
僕に壁から毟り取ったマイタケを渡していく。
エルフもビックリだった。
流石に『愚鈍』してるとは言えこんな行動を魔物が取るとは……と思った瞬間、エルオリアスの部下でプフと言うエルフが声をあげる……
「あ……あの……私のスキル『感知』の魔物反応が……変なんです!あの個体……『敵性反応』じゃないんですが!?何ですかコレ!何が起きてるんですか!?」
月エルフのエルオリアスもビックリしてトンネルアント・タイラントをじっと見て居る。
するとまた壁のマイタケを毟っては僕に持ってくる……本当に嫌な予感しかしない。
スライムの時と同じイメージしか湧かない……
ひとまず『鑑定』することにした。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
トンネル・アント・クイーン・タイラント
護衛個体 (別名: 洞窟蟻) 使役中 : ヒロ
(通常種・ハチ系統・中型種)
第一次系統進化前個体
・ステータスには個体差、系統差あり
LV. LV.20
『※上限レベル+0』魔石使用ボーナス
HP.250/250 (+0) MP.0/0 (+0)
・攻撃力300・防御力311 ・判定値25
・スキル
・『愚鈍』※封印中
女王蟻がいない為、愚鈍スキルは
封印される。
再度女王蟻に忠誠を誓った場合、
『愚鈍』が発生する。
・『主人の護衛』
『基礎status』 『修正値status』
STR.90 (+0)
ATK.210 (+0) ☞『STR90+ATK210』
VIT.99(+0)
DEF.212(+0) ☞『VIT99+DEF212』
INT.10(+0)
REG.5(+0)
DEX.15(+0) ☞『DEX15+AGI10』
AGI.10(+0)
LUK.1 (+76)
・個体特徴
大きな大顎で噛みつき攻撃をする。
前足には大きなカギ爪があり非常に硬い。
毒針は持たないが甲殻の強度や身体の
作りが戦闘様に個別に発達している。
女王の支配から解放されて、新たな主人
を見つけた個体。
系統種は、ファイアーアントやアーミー
アント、ポインズンアントなど生活環境と
生息域で変化する。
・取得部位(生え替わり)
鋭い大顎、蟻酸、鉤爪、蟻甲殻、甲羅、
盾型堅甲外骨格、蟻堅硬甲殻、中魔石…etc
上記部位は武器、防具、etcは素材に
使用可能。
・食用不適切『非常に土臭く可食部が少ない』
頭部…食用箇所なし。
腹部…毒腺により不可。
胸部…食用箇所なし。
脚部…脚甲殻内部のみ食用「生食不可」
・攻撃・防御:
噛みつき、斬撃、突進、強打、引っ掻き
引き裂き、切断
系統変化先(進化先)
・ファイアーアント
・アーミーアント
LV、経験値不足で鑑定不可。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
すると卒倒することが起きた……『使役』した上で『女王蟻』の代わりになってさらに『愚鈍』が『うどん』になった……
……いや……『うどん』にはなっていない……そんな事を考える程現実逃避したかった……
「うわぁ………『使役』しちゃってるよ…………」
「「「「「「はぁ!?」」」」」」
エルフ全員の呆れた声が聞こえてきたが、それでもタイラントはマイペースにマイタケを摘んでは持ってくる……意外にいい子でした……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。