第259話「ジャーキー御礼の共闘は蟻の駆除」

 僕はマッコリーニが持ち帰る様を見ていたら、マジックグローブの強欲の左手「左手グローブ・装飾品」の事を思い出した……悪い事をしたな……と思いながらも次に備えて試しに使ってみようと思い装備する。


 どうせ『マスターキーワード』でリセットするのだから、試してみるのは良い経験につながるはずだ。


 前に行った『鑑定』の結果でキーワードの存在を知らない以上、僕が黙っていれば問題ないはずだ。


 ちなみの合言葉は『秘密道具』にした……異世界にあのマンガを流行らせる訳にはいかないので正式名称はやめておいた…『四次元ポケット』でも良かったかもしれない……



 僕が周辺の枯れ木を集めていると、同じ様に燃料集めをしていたエルフ達が来て、一人だと危険だと教えてくれた。


 しかし既に3匹倒しているので、その事を話すと目を丸くしていた。


 なんでこんな所に枯れ木が散乱しているのか聞いたら、このトンネルアントは木が生えている場所に巣を作ろり、その木を雨で腐らせて巣内に持ち込みキノコを繁殖させて生活しているらしい。



 自給自足とは頭が良く知恵ある生き物だ!と褒めていたら穴から又数匹這い出て襲って来た……仲間が帰って来ないのにノコノコ出てくるなんて……頭が良いと言ったことは『前言撤回』だ。



 エルフが気がつくより僕の『感知』が早かった様で、既に手をかざして頭を出すのを待っていた。



 そして出した瞬間『吹っ飛ばす』とエルフ達はビックリしていたが、片手で鉤爪を触り回収すると次から次へとトンネルアントが出て来た。


 考えればそうである……僕は徒歩だが、エルフは馬で来ていたから振動が比ではなかった。


 合計で結局6匹もトンネルアントが出て来た。



 内訳は働き蟻3匹と兵隊蟻3匹だ……さっきのを合わせると9匹になったので、この奥には多くても後数匹しかいない。


 鑑定結果で書いてあった『クイーンタイラント』と『トンネルアント・クイーン』だ。


 遺骸を回収したときに兵隊蟻遺骸と名称が出たので倒したが、頭部は兵隊種でも働き蟻でもそこまで大差ない様だ。



 奥が少ないのであれば、折角なのでエルフから松明を借りて中に入ってみることにした。


 『トンネルアント』の個体別鑑定結果が欲しかったからだ。



 最近思ったことだが、割と僕は『魔物の鑑定結果』を見るのが好きらしい。


 以前イーザに立ち回りの講習をした時に魔物の話になったのだが、一度鑑定した内容はなんと見返せることが分かったからだ。


 実際どうやるか簡単に言うと『頭に中に一冊の本』があるイメージで、それから鑑定した知りたい情報を開く感じでイメージすると中身がわかる。


 しかし、知らない物は見ようが無かった。


 例えば『アナベルのロングソード』がそうだ……簡易鑑定はしたが『鑑定』はしていないので名前しか出て来ない。


 この旅の暇な間にでもちゃんと鑑定しようと思い、いざやろうとすると人やエルフや魔物に強襲されたり、フラッペが果物持って来たりで周りから邪魔されて鑑定できないでいつも終わる。


 宿で一度まとめて鑑定するべきだ……それ以前にもっと早く鑑定してれば『鑑定レベル』が上がったのでは?と反省した。




 僕が入ろうとすると、エルフの一行も一緒に来ると言い出した。


 やりずらいからやめて欲しいなと思ったが、恩を返したい様だった……例の『ジャーキー』の件だ。



「じゃあ入りますよ!危なかったら撤退で!中は『トンネルアント・クイーンタイラント』と『トンネルアント・クイーン』がいるはずです」



 巣の中は3.5メートル位の高さがあり横幅は人で3人は優に並べる幅がある。


 トンネルアントは脚が横に長いので、その分のスペースだろう御饅頭の様な形の通路で円形ではない。


 それに人間の様に道具を使って掘り進んだわけではないので、非常に歪んだ穴だった。


 下に向けて穴は掘られて居るが、外部で倒した獲物を持ち込みやすくして居るのか割となだらかだ。



 巣穴は通常の蟻の巣の様に複雑ではなく、働き蟻と兵隊蟻の寝床の様な広い空間と通路でできている。


 ダンジョンと違い、蟻の巣穴では酸素の量が決まって居るので、奥に行く程長居は危険だ。


 奥に進むと、1匹兵隊蟻が出たのでエルフが隊列を組んで身構えて忙しそうな間に僕は隙を見て鑑定する。



 ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


トンネル・アント・兵隊蟻個体(別名: 洞窟蟻)

   (通常種・ハチ系統・中型種)


『使役可能個体』 第一次系統進化個体 


・条件により使役可能

 捕縛の魔物罠、使役強制スクロール、

 従魔契約スクロール、使役の絆…etc



LV.16 HP.130/130 MP.0/0

STR.50 ATK.110 VIT.80 DEF.82 INT.19

REG.25 DEX.40 AGI.70 LUK.31


・ステータスは個体差、系統差あり。

・スキル  なし


・個体特徴


  大きな大顎で噛みつき攻撃をする。

 前足には大きなカギ爪があり非常に硬い。


  働き蟻は他の個体より甲殻の強度が脆

 いが毒針と毒腺を体内に持つ。

  他の個体は毒針は持たないが甲殻の強

 度や身体の作りが戦闘様に個別に発達し

 ている。


  働き蟻には稀に兵隊蟻が混じっている。


  巣の奥には女王蟻が存在して周りには、

 兵隊蟻とクイーン・タイラントと呼ばれる

 非常に硬い甲殻を持つ守備専用の蟻が存在

 する。

 巣には女王含めて10数匹程度の蟻がいる。


  系統種は、ファイアーアントやアーミー

 アント、ポインズンアントなど生活環境と

 生息域で変化する。


・取得部位

 鋭い大顎、蟻酸、鉤爪、蟻甲殻、大鉤爪、

 蟻堅硬甲殻、中魔石…etc


  上記部位は武器、防具、etcは素材に

 使用可能。


・食用不適切『非常に土臭く可食部が少ない』

 頭部…食用箇所なし。

 腹部…毒腺により不可。

 胸部…食用箇所なし。

 脚部…脚甲殻内部のみ食用「生食不可」


・攻撃・防御:


  噛みつき、斬撃、突進、強打、引っ掻き

 引き裂き、切断


 系統変化先(進化先)

 ・ファイアーアント

 ・アーミーアント

 LV、経験値不足で鑑定不可。


 稀に宝箱を落とす。(ダンジョン個体のみ)


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇



 鑑定確認が終えたので魔法で倒そうとすると、エルフが立ち向かっていった……2チームの合わせ技で倒していたが、弓は撃つわ剣で切り裂くわ部位の損傷が結構酷かった……


 まぁ親切でやってくれて居るので、文句は言えなそうだ。



「ヒロ殿の様にスマートにはいきませんな……」


 そう言われたので、アドバイスをする。


「左右の盾のエルフで鉤爪攻撃左右を防ぎ、中央の盾エルフで噛みつきを防ぐと良いです。その間に首の付け根に剣を差し込めば即死しますよ」


「兵隊種は身体の守りが硬いですが頭はそうでもないので、繋ぎ目の首を落とせば即死ですからね……前盾で2列目剣後ろに遠距離を念の為で多分どうにかなりますよ。ただ鉤爪振り上げても後ろ足使って突進するので要注意ですね」



「突進攻撃される前に首を落とせばこっちの勝ちです……魔法が使えれば出会い頭に頭部狙いで終わりですけど」



「なんと!そうでしたか……今我々のパーティーには魔導師が一人しか居ないので今度はそうしてみます」



 そう話しながら奥へ進むと一層開けた場所に出る。3メートルは超える巨体を持つ『トンネルアント・クイーン』と同じサイズの『クイーン・タイラント』が2匹に兵隊蟻が1匹いた。

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