第256話「騎士団員諸君察してくれ!日誌な訳ないだろう!」
伯爵は難しい顔で考えつつも、結論を出した様に話し始める
「実は我もヒロと同じ事を考えていたのだ……あらゆる物を棄てて『帝国』へ渡ったのでは無いかとな。その捨てた中には『王国の爵位』や領民の事も含まれ、反乱とも取れる行動で向かったのでは無いかと……」
「魔導士学院のマジックアイテムや魔獣の亡骸も奪っている事を考えれば察しもつく。それに『秘薬』を献上して『爵位』を貰う為に行く様な事をプラム魔同士は聴いていたのだ……皇帝の差金で動いたとは考え難い」
「騎士の話を聞いた時点で、帝国と手を組んだ事はないな……『帝国領』へ着いた後『家族』を迎え入れる準備があるなら『秘薬』を返却せねばならん。それと『魔獣の亡骸』と『ユニークアイテム』それに『マジックアイテム』もな!だとすれば皇帝に何の徳がある?」
「役に立たない『ヤクタ男爵』を貴族の末席に迎えて『全てを返却』等とは……皇帝に何の価値がある?そう考えれば『出世欲』で渡ったのだろう……大凡見当がつくがな……主人を裏切り『秘薬』献上は以前にもあった話だ、大方それの真似事だろう」
「皇帝は『秘薬』を欲したのではない……その『男』を欲したのだ。領民を救う為に命を投げ出し帝国へ渡り『皇帝に領民の助けを求めた見返りに秘薬を献上したのだ』だから皇帝はその男を帝国で匿い『権力と言う力』を持たせて現在は領土を護らせている」
「その彼は領民の英雄だが、小国軍国家には『犯罪者』だ。それを分かって帝国は彼を引き込んだのだ!」
「我らが王もこの事実を聞いた時に、自分でも同じ事をしたと言ってたからな……ヤクタの場合は帝国領に着いて皇帝にあった瞬間『斬首』だろうな……奴の持ち物と私兵は帝国騎士団管理の元王国へと一緒に返されて、その後は全員縛り首だろう」
「そうなれば結局王は『秘薬』を礼に帝国へ進呈する事になり、帝国は受け取らず『貸し』になるだろうがな……そう言う事だ。問題は今何人で移動中かが気になるのだろう?『何も持たず』行軍する羽目になった『元男爵』が気になったわけだな…」
僕達が此処にきて間もないのであって地理もわかるはずも無く、当然だが国事情や人情噺もこの世にあって、それを元に馬鹿な考えを起こした者が居た事だけはよく分かった。
そう思っていると、元騎士達が色々と見聞きした事を話して情報を纏めている
「今確認したのですが、鉱山に行った騎士団員は団長含めて21名でヤクタ男爵のお側付きの騎士が10名でした。そのうち5名がこの荷馬車をジェムズマインの城門外へ用意し、男爵と騎士団5名で鉱山に来た様です」
「その後に合流したので男爵含めて32名で純粋な騎士団員は31名です。他にお手伝いと数名の屋敷勤の騎士が数名居ました。その人数はすいませんkが我々騎士団には全体数は把握できていません。」
「ただ、屋敷勤の騎士は既に全滅しました。先の襲撃で伯爵様に襲い掛かり騎士団に返り討ちにあった者達が全員男爵周りの騎士達でした」
「それと、もう一点は御子息付きの騎士1名を見かけた者が居ませんので……行方が分かりません。先に行っているかそれとも街に残ったか……」
僕はそれを聞いて思い当たる人がいた、アープの『木の棒』を隠した可哀想な人だ。隠さなくても木の棒だから何も出来ないのに……
一応心配そうにしているので教えておく。
「その人なら街で拘束されているので先に行ったわけではないですね……そうか……じゃあ今居ても20人は切るのか……ざっと騎士11名で、帝国領までの『旅の荷物無し』か……こりゃ飢え死にだな………」
そに言葉に元騎士達はびっくりして、僕の周りで聞いていた伯爵と男爵はl『大爆笑』する。
「はははは!飢え死にか!まさかの『飢え死にか!』何でそうなる?少なからず金はあるだろう?」
僕はその疑問に即答する。
「さっきあの箱に『私財』が詰めてあるのを見つけたんです。多分『男爵家』のお金になるものは既に換金済みで、それを持って来たんでしょう……でも計画がザルだからマジックバックに入れなかった……というか入らなかったにですかね?」
「あのトロールトランクに入れてありました。まぁ仮にお金を持っていても今『荷馬車』が此処にあるので野営は出来ないですよね。食材全部此処にありますし。その為の荷馬車でしょうから」
「この先の村や街で買い物して出る事になると思いますが、『指名手配』済みならそれこそ問題ですよね……下手すれば何も手に入らず終わる可能性もありますし」
「手配されている事をお付きが知れば、街か村で脱走する可能性もありませんかね?僕なら逃げますもん……」
それを聞いた伯爵は
「キミは……『指名手配』されているから勝手に内部から崩壊すると言いたいのだな?騎士の諸君そこの『私財』が入った箱を此処へ!」
そう言われた元騎士達は手分けして持ってくる。
トロールトランクに山の様に詰め込まれた、金貨と銀貨、銅貨も入っていて、他のトランクには銀製の食器などが入っていた。
他の箱を開けると、宝石の付いた剣なども入っていて今直ぐに手放すには惜しいと考えた物が詰め込まれていた様だ。
僕はその中から三冊の魔導書を見つけた。
例の魔導書が1冊含まれている。
伯爵はその魔導書を徐に3冊掴むと僕に投げ渡し、
「その様な汚いヤクタの日誌など燃やしてしまえ!見ているだけで腹が立つ!」
と言ってくるが顔は怒っていない……むしろ笑っている。
僕は徐に焚き火の側に行き、近くに積んであった燃料の木を焚べる。その間にクロークに本をしまい代わりに燃料の木を放り込む僕の背中が邪魔で見えないはずだが、エクシア達がニヤニヤしているので、すぐに元騎士達にも僕がちょろまかした事はバレるだろう。
僕は既に元男爵より本が気になったが、そうは言ってられない……戻って話に参加せねば!
戻ると元騎士達がその日誌が犯罪の証拠になるのでは?と話していたが、既に『指名手配中』なのだ……何故こうも脳筋なのだろう……
「意味はわかりますけど、既に男爵は『指名手配』されているから証拠も何も無いんじゃないですか?貴方達は自分と家族を助ける為にできる事は『伯爵様』への協力だから」
「それに、既に魔導士学院のマジックアイテムを、戦利品として持ち帰ったんですから少しは酌量されるんじゃ無いですかね?悪事に加担する意思は無し!って言ってやればいいのです!」
それを聴いた伯爵達は笑っていた……この笑いの意味は『本を貰って饒舌になった』と言う笑いだった。
エクシアが珍しく重要な事を言う。
「なぁ?話が済んだなら先に進んだほうがいいんじゃ無いかい?休憩中にあった事だが……休憩にしては長いしな……どうせ昨日のやつの仲間だろ?歩きながら説明して貰えばいいじゃ無いか!」
「折角予定より一日早く進んでるんだ勿体無いと思うだけどな?あたしゃ!」
そう言うエクシアに伯爵は『最もだ!準備をして出発だ!』と思い腰を上げる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
隊列は順調に王都へ進む……
中継地点から考えると、襲撃直後の岩場で一泊そして今日は二日目なので、あと2日あれば王都だ。
そう考えていると、前からエルフの一行が帰ってくる。
伯爵が進む道の周辺の安全確保のために、周辺の魔物を狩ってきたと言うのが名目だが、多分越冬用の食材集めだろう。
月エルフも大地のエルフもホクホク顔だ。
すぐに後ろで様子を伺っていた商団馬車が速度を上げて追いついてくる。
「エルフの皆様どうでしたか!今日の収穫は!毛皮はどうでしたか!」
言い方が身も蓋もない。
しかし、マッコリーニに問い掛けに即座に答える隊長の二人。
「万事順調だ!昨日より多くの獲物を狩ってきた。買取を後でお願いしよう。矢の補充が出来ると嬉しいのだが。数本折れてしまってな……」
その言葉に『テッキーラーノのハリスコ』が即応答する。
「私の商隊では数多くの矢が取り扱っています!是非!是非!是非!お眼鏡に叶うと思います」
そう言って馬車を止めようとするテッキーラーノに、伯爵が『置いて行くぞ!』と言い慌てて御者に指示を出すハリスコは性格がマッコリーニに似ていた。
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