第222話「銅級冒険者講習で習う『銅級心得』」
僕は反対側の『銅級窓口』へ向かおうとするが、騒ぎを聞きつけた冒険者がの時覗きに来ていた。
「おお!ヒロさんじゃ無いか!何があったんだ?エルフがどうのと聞こえたが!?」
そう話しかけて来たのは『昨日腕を再生させてあげた』冒険者だ。
その冒険者の言うことでは、スライムで出来た様な腕は昨日とは若干弾力が変わったらしい。
腕の付け根は既に盛り上がった肉とスライム質の部位が混ざりつつあった。
こうやって融合してその後骨や神経が形成されるのだろう。
彼の説明を聞きながらも、僕が終わった単独任務の報告方法を聞くと彼は手取り足取り教えてくれた。
まず口頭で説明後に、ミオさんがテキパキと働く窓口へ案内してくれた。
そこからはミオさんに引き継がれたので、実際は案内しただけだ。
「なんか……向こうからメイフィの怒る声がしてたんですが、私が全部やっては彼女の為にならないので様子を見てたのですが……いらしたのはエルフだったんですね!」
「メイフィがヒロさんに何かお願いした後、あの方が大声で怒ってすぐにすごい音がしたんですが……アレって絶対ヒロさんですよね?」
僕は一部始終を話すと……
「なん……ですって………身勝手にも程がありますね!それに剣で切りかかったですって!それで衛兵にですか……まぁ当然ですね!言葉で口論であれば厳重注意で済みますが、武力行使となれば話は別です」
「ああ、それよりこちらの報告でしたね!これから銅級冒険者講習を受けるんですよね?では処理しておきますので、講習会終了後そこでお渡ししますね!」
ミオはそう言って僕に講習会の会場を説明する。
既に何人かが講習会を受けていて、その中には昨日のパーティーメンバーもいた。
あと半刻程で講習会の昼の部が終わる様だ。
僕は『護衛任務』と『エルフのトラブル』で朝の部と昼の部を受け損なってしまった。
この後『午後の部』があるそうだ。
僕はそこで受講して、明日丸一日受講そして受け損なった『朝の部』と『昼の部』を受けなければならないので皆より余計に時間がかかる。
総時間は変わらないが本来はこんな風なことは起きない『貴族依頼』で優先事項が変わってしまい、受講時間のズレたことが原因だ。
この『銅級冒険者講習』が終わらないかぎり『銀級冒険者の昇格試験資格』は貰えないので頑張らないとだ!
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
「ハイ!ではこれからダンジョンの銅級冒険者講習会を行います!講習会の内容はダンジョンの危険性、特性、種類など多岐にわたります!覚えられない場合は死に直結するので何度でも受講してください。受講時間はどの授業も時間帯は変わりませんので、不安になった場合は何度でも受けて覚えてください!」
「因みに本日担当するのは、銅級窓口受付嬢のライムと申します」
「まずダンジョンの危険性ですが、誰もが初めに思う『視界不良』です。これはダンジョン特有のもので、フィールドの様に目が良ければ見通せると言うわけではありません。ダンジョンは不可視域と言う状態にあります」
「これはダンジョンに降りた場所から既に始まっており、ある一定の距離しか見通しが効きません。ダンジョンの悪意の現れであり準備と注意を怠ったものから餌食になります。充分注意してください!」
「こちらの対処は『ゲイザーオウルの眼玉』や『遠見の片眼鏡』そして『視覚拡張スキル』で対応が出来ます。他にも対処方法は沢山あるのでギルド書庫で各自確認をする様にしてください」
ダンジョンの危険性から始まった講義は、細かい説明を経て次に『特性』へと移る。
ダンジョン特性というのは階層ごとに用意されている特殊地形の事だった……確かにトレンチのダンジョン地下6階は巨大な街がそのままダンジョンに形成された様であった。
この街は既に廃墟となっていて、始めから廃墟だったのかあそこで戦ううちにあちこちが破壊されてまるで廃墟の様になったのかは分からない。
しかし、あの熊の様なオークが平然と壁を破壊していたので、元からあの様な状態ではなかったのかも知れない。
冒険者が誰も居ない状況下でも、常に破壊された建物は数日で綺麗な状態に戻っている建物さえあるそうだ。
この情報はバーム達から聞き出したものだ。
理由はあの階層で休む場合なるべく綺麗で休み易い場所を選ぶ方がいいらしい。
オークウォーリアーに発見され辛いかららしい。
この様に階層によって、種類が異なり休息方法も変わって来るらしい。
安全地帯が大概あるらしいが、地下6階の廃墟の様な人工物の様な場所は休憩場所が無いらしい。
一説には隠れ易いからでは無いか?と言う事だった。
そして次の『種類』と言うのは生息する魔物の種類がダンジョンで違うのと、現れる『魔物の属性』がダンジョンに大きく左右されるらしい。
当然岩が多いダンジョンだと『土系魔物』が多く、表皮は硬い。そして樹木が多いダンジョンだと『植物系魔物』が多く『表皮は柔らかいが、『擬態』多いので見つけにくいそうだ。
当然攻略にはそれ相応対応した武器が必要だ。
極めて硬い表皮に『斬撃』は効きにくい上に『武器破壊』に繋がるので『鈍器』が効果的らしい……ここは現代のRPGで培ったゲームの知識が有れば何とか乗り切れそうだ。
この話を聞いている時はものすごく真剣に皆聞いていた。
特にチャックとチャイは僕の横で解らない事があるとすぐに質問する『優等生ぶり』を発揮した………『チャイは良いがチャックは似合わないのでやめて欲しい』とつい声に出して言ったら、ユイモアとスゥが大爆笑していた。
講師が『ジャイアント・フロッグ』と言う魔物が、あのダンジョンの下層に出ると言い出したので『ジャイアント・アサシン・フロッグ』の事を聞いたら青褪めていた。あのダンジョンの下層では出ないらしいが、以前『貯水池外縁』の出たらしい。
『貯水池外縁』にはジャイアント・フロッグも極稀に湧くらしい……ソウマ達が今スライム駆除中なのでフラグじゃ無いか?とか思ってしまった……
僕は講師からジャイアントフロッグの対処法を質問された。
多分駆け出しから上がって来たばかりの冒険者に聞く『通過儀礼』なのだろう……なのでこう言った。
「前方に魔法や矢を撃つと飛び跳ねます。空中で向きが変えられないので下から打てば死にます。一度で倒せない場合は繰り返しましょう!そうすれば自滅します。尚その時に、上空で倒した場合ダンジョンだと素材のほかに稀に宝箱が落ちて来るのでかなり危険です」
「不思議な事にその場合宝箱は破壊されないで普通に落ちて鎮座します。迂闊に触ると危険なので対応策をしていきましょう!」
「「「「「無いわー」」」」」
ちなみにこれを言ったのは、チャック、ユイ、モア、スゥそして講師のライムだ
正しい方法は盾を構えて背後に下がるだった。
でもジャイアント・アサシン・フロッグだったら、それやると麻痺しないか心配しかなかった。
基礎的な話が終わった後、例の三馬鹿がやった件『トレンチのダンジョン』の階層主戦の心得を皆が教わった。
既に僕たちは経験済みで、バーム達から詳しい助言を受けていたので再確認程度だった。
「では、チャックさん達が既に冒険者として5階層の階層主と戦ったので経験を踏まえ話して頂きましょう」
「いやいや……此処はリーダーのヒロがいいです!彼が一番よく知ってますから……僕達より早く入って皆に的確な指示を出したんですから!」
そういう時は僕を見ないで欲しい……と言いたいほど皆の視線が痛い。
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