第207話「アープに降りかかる災難と陳謝する僕」

因みにお友達の数は全部で4人アープちゃんを入れると5人だ。


 全員が飴を食べた事があった様なのだが、そもそも高価な品だと親に言われたのだろう……羨ましそうな顔で見るが間違いなく貰えるわけがないと言う顔をして寂しそうによそを見る。


 なので僕は目の前に手を出して指を振る。


「おーい?どうしたの?はいコレ君達の分。残念だけど適当に出したから味は選べなくてランダムだけどね!」


 そう言って皆に渡していく。


 皆喜んだが、見たこともない宝石の様な飴に食べようか取っとこうか悩んでる様だ。


「これは暖かくしてると溶けちゃう物で、勉強してたらベタベタになって食べれなくなると嫌でしょう?だから食べるなら今食べて、食べないならバッグの中にしまっておきなね?」


 皆それを聞いたら包み紙を解いて口に放り込む。


「んーーーーー!美味しいーーー!」


「これ本当に飴なの?食べたことないよ?ワタシー」


 口々に言う子供達を見て微笑ましくなってると、アープが……


「コレは飴ちゃんと言います!食べたら歯を磨くのですが、ここは魔導士学院なのではが見かけないので、良いですか!食べたらうがいを必ずするのです!虫歯になっちゃいますよ!良いですね!」



 笑いそうになるが真面目に言ってるので笑いを堪える……



 ひとまず、飴に合うようにお茶を出そうと思ったが、人数分のコップがないので考えていたら、後ろに4人のお付きがいたみたいでそに中の一人がすっ飛んできて話し出す。



「何か入り用でしょうか?」


「コップがあればお茶をお出しできるんですが、生憎数が無く……」


「では私の家のでよければ……」



 そう言って大型バスケットからコップを人数分出してくれる。


 僕はそのコップにお茶を入れて皆に渡す。


 熱々のお茶だ。


 僕のバッグはマジックバッグと同じ効果があるので冷めることは無い。


 お付きが皆ビックリしているので、クロークにマジックバッグと同じ効果があることを告げると、それはまた驚いていた。


 仲間外れは可哀想なのでスライムにも飴をあげようとすると、アープがやりたい様でじっと見ていたのでお願いして、僕は代わりにお付きを呼んで飴を配る。



「ずっと立ってると疲れるでしょう……そこの席に座って食べて待っててください。この子達が食べ終わったらうがいを忘れずにさせてください。お前のせいで『虫歯』になった!と怒られたくないので」



 僕は彼らを一つ後ろの机に並ばせて座らせる。


 睨んでいる少年の目隠しだ。


 睨んでる少年と、僕の横にいる女の子が目を鉢合わせさせないために、壁になる様に座ってもらった。


 流石にお付きだけあって、僕の目線を見て何かの意図があるとすぐに察してくれて座ってくれた。


 周りの受講生のお付きはほぼ立っているが、気にしたら負けだ。



 飴を食べてからお茶を飲み授業が始まる前に皆にうがいをさせる。


 グチュグチュぺーのうがいを推奨した。


 皆言うことを聞いて何回か口を濯ぎハンカチで口を拭いていた。



「「「「「ご馳走様でした!」」」」」



「はい!よく出来ました。」



 ご機嫌になった5人にそう言っていると、受講生の皆に呼び出しがかかる。



「はい皆さん!休憩時間をお終いとしますよ!では運動場の水精霊の銅像前にお集まり下さい!」



「次の時間は実技演習ですよ。遅れない様に!教科書は要りません。マジックワンドを必ず持ってきてくださいね!」




 事務員の言葉に『荷物を漁るが』急に青ざめるアープ




「ど……どうしよう!私お家にマジックワンド忘れてきた………実技演習できない……」



「大丈夫じゃないかな?大概こんな時は貸し出し用のマジックワンド位は用意している物だよ?『次は〜忘れない〜様にぃ〜』ってダミ声で怒られるぐらいだよ。」


「本当に?大丈夫かな?」


「だってコレだけ受講生が居るんだもの一人ぐらいは忘れるよ。それに僕マジックワンド使わずに魔法使うから慣れれば如何とでもなるし、むしろ邪魔なんだよ?盾も剣も持てないじゃない?ワンドがあると?」



「そう言う物なんですね?安心しました!アープ受けさせて貰えないと思いました。」



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「アープさんマジックワンドを忘れるなんて習う気があるのかの!!やる気がないならやらなくて結構!」



「ううう……すいません……ううう………」



 わいは盛大にやらかしました……勝手に助言したせいで大恥をかかせてしまった。



 しかし現実は、異世界の講師様は頭が硬い無能だった。



 『たかだか生活魔法に転用可能なウォーターを学ばせるのに、マジックワンドを使い……忘れたら激怒する駄目講師を目の前に………デビルイーターに撃ち込んだ『水槍撃』×2(両手)MAX20本を撃ち込んでやろうか今実は考えてます……と言うか……この魔導士学院ごと更地に変えてやろうか!?ああん!?』



 と言いたいのですが、話に割って入ろうとする僕をアープちゃんが止めたので何も言い出せずにいた。



 たかがワンドを忘れた事で怒られるアープちゃんは本当に可哀想で、すぐに自分が言った事だと説明しに飛び出したが逆効果だった。



 この講師は外見で判断するらしく、全て形からしか入れなかった。



 水魔法と言っているが、生活魔法を兼用できる『ウォーター』を自慢げに生徒の前で披露するだけだ。



 攻撃魔法と言われればそうだが、コレは攻撃力を求めた魔法ではない。



 僕も持っていて試したが……まぁなんだ……攻撃に使うことは二度とないだろう。



 使い方は『窒息』狙いだ射撃ではない。



 だが、ペテン師のような口の旨さで、魔法を知らない子供達はちょっと威力を上げたウォーターのそれを見て歓声をあげる。



 アープちゃんは魔法を使いたかったが、生活魔法さえもいまだに一回も成功した事がなく先生は『出来が悪い子』と決めてかかっていた。


 運が悪くそこに学長と副学長がきてしまう。



 そしてさっきまで僕を睨んでいた銀髪の少年が学長に言う。



「学長!あの男が彼女に余計な入知恵をしたせいで、大切な魔法を学ぶ時間が減りました!マジックワンドを忘れた彼女に『貸してもらえる』から大丈夫だと吹き込んだのです!」



「その場で帰ればプラム講師も気分を害さなかったはずなのに、『借りよう』などと魔術を冒涜するにも程があります!あの者を即刻この魔導士学院から……いいえ!この街から追い出す様にギルドマスターへ報告してください」



 その言葉を聞いた学長は僕を見る。



「どういう事ですか?貴方はお付き件護衛だったと思いますが……講義に口を出すとは……それも今は演習ですよ!?ここは神聖な魔法を学ぶ場所。貴方の様な鋼の武器にしか頼れない人が口を挟んで良い場所でがございません。」



「そうだ!早くこの街から出ていけ!アープの前に二度と姿を表すな!男爵家の名前を汚すな!」



「そうじゃ!『マジックワンド』を忘れる事がどんなことか!このワンドはわしが精魂込めて作ったワンドだ。いいか!コレを使えば間違いなく魔法が使える様になる!」



「水魔導士のマジックワンドといえば、わしの名前を置いて右に出る者はいない!皆こぞって買っていくマジックアイテムなんじゃ!貧乏人がさっさと去れ!」



 なんとなく……この爺さんワンド売りたいだけだろう!って気がしてたまらない。



 水魔法だったら正直ゲオルさんの方が絶対凄そうだ。



 僕はちょっとイラッとしているが、元はと言えば僕が原因だここは謝ってアープちゃんの株だけはさげずにいたい。



「申し訳ありません……浅はかな考えで彼女を誘導したことは僕の責任であり、『彼女は悪く』ありません。この旨は学長様から男爵様とギルドマスターへ通達してください。自分へのお咎めはこの身を持って受けますので、『アープ御令嬢』の受講する権利だけはそのままにして頂けませんでしょうか?」



「ならん!わしは『ワシが精魂込めて作ったマジックワンド』を忘れてくる輩を生徒として見るわけにはいかん!彼女は破門じゃ!」



「うわぁぁぁぁぁぁん………………エグエグ……うううう」



 波紋を言い渡されたアープはとうとう大声で泣き出してしまった………

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