第183話「ウッカリ…ギルド…モヤシテミマシタ……」 

僕は箱の中を凝視する『フリ』をしつつ鑑定をする。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


・炎の弓

 『エルフ限定装備』威力100%


 『例外』

  精霊使い使用可能 威力90%

  (マジックアイテム扱い)


 張力30〜50 弓長125cm 弓重700g

 攻撃力80 (耐久130/130)(鍛造度220)


  エルフの匠によって製造された。

 普通の矢の他に魔力を使い火矢を生成可能

  エルフのみ弦を引く事ができる。


『特殊装備可能』精霊使い

  精霊に祝福を受けた者は、この弓を所持

 する事を許され、『使う』事ができる。


 ・90%までしか威力を出せない。

  火矢のみ可能。(通常の矢は使用不可)


『特殊技』マジックアロー

 火矢(1本) MP1 攻撃力+50 属性:炎


 『精霊使いが使用』

  火矢の攻撃力と属性のみ適応。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


 ビックリすることにコレは僕も使えるらしい。



「ひとまず、『祝福』で呪いがあるか確認したらどうだい?誰かが触ってやばくなる前の方がいいんじゃないかい?」



「エクシアが絶妙なタイミングで助け舟を出す。僕がうっかり『何か』を触る前にだ」


「多分僕の視線の先を見ていたのだろう。」


「私が『祝福』致します!」


 そう言って進み出てきたのは、ユイではなくシャインだった。



「ちょっと待ちな!シャイン……アンタヒロの役に立ちたい気持ちはわかるが……そっちのパーティーの『祝福』スキルを強化させてやらんとね……アンタと違って彼女には『経験』が必要なんだ」



「あ!す……すいません………私としたことが……」



 ションボリしたシャインさんが可哀想だったが、それよりも気になる事がある……なんでこのパーティーに『回復師』が居ると分かったのか……だ。



「シャインさん!有難う御座います。そんなに落ち込まないでください。気持ちだけで充分ですよ!?それとエクシアさん……なんで僕らのパーティーに『回復師が居る』と分かったんですか?」



「何言ってんだい?ひろ?『アンタの持っている武器』は誰が祝福かけたんだい?それにさっきそっちの子が言ったじゃないか!?『刺したら燃え上がるダガー』って」


「武器名を知らないのに『手に持って』武器として使ったんだろう?使用した奴がいるんだから、この中の誰かが『回復師』だろう?」


「あとね、祝福って言ったら、その子が前に『一歩』前に出てきたんだよ。『何度』か祝福を既に使ったんだろう?」




「ま…………まじかーーーーー!お前たち!その武器!ダンジョン産か!」



「すげぇぇ!手に入れたのは、この宝箱だけじゃないのか!俺も早く頑張って上がるぜーーーー!!ダンジョン行きてぇぇ!!」



 駆け出し冒険者達は羨望の眼差しで口々に声に出しては、武器見たさにチャックやチャイを取り囲む……当然スゥもユイもモアも女性冒険者に揉みくちゃ状態だ……男性と違って女性の距離感は0に近いので、まるでセール品戦争に突っ込んでいる様でもある。



 それに比べて銅級は、自分の武器と僕達の武器を見比べている。


 彼らの中にはダンジョンで手に入れた武器所持者も居るだろう……しかし半分位は何やら悲しそうだった。



 皆が大騒ぎしている中、未だにションボリしているシャインにコッソリ飴ちゃんを渡すと、彼女は笑顔になってくれた。


 この世界での『飴ちゃん』の信頼度は半端ないと思った……辛い顔を見たら飴ちゃんさえ配れば皆笑顔は間違いないようだ。



「どうだい?アンタ的のには良いものはあるかい?」



「この弓が気になりますね……『かろうじて僕は使える』と思いますが、多分使えるのは『エクシア』さん位じゃないかな……あとは……」



 僕がそう言って指さした弓を手に取るスゥ……


 僕達の話を聞いていたのは、スゥとユイそれにモアだ。


 彼女達の武器は既に女性冒険者が持って試し振りをしている状態で、女性冒険者達は新しいおもちゃを触らせて貰って楽しそうだった。



「あ!スゥさんその武器は多分……君には弦が弾けない………」


 僕は話そうとした時に、徐に力一杯弦を引く………グググ……っと引き絞られる弦………そして壁に向かって弦を離すと、とんでもないスピードで火矢が放たれ『シュパン』と言う音と共に火でできた矢が壁に突き刺さる。



「はぇ!?矢が……あれ?矢!?って言うか!か……壁が燃えてるーーーーーーーー!!!水どこぉ!水ーーーーーーーー!!」



 スゥの声に冒険者がアタフタと水を探すが、脳筋ロズは手に持ったエールをぶっかける……脳筋な割には意外と適切な処置だった。


 壁とスゥの間に冒険者が誰もいなくてよかった……


 思わずビックリして、弓から手を離すと『ガラン、ガラン』と音を立てて地面に転がる。



「ちょっと!何してんのよ……大切な弓なのに……落としちゃダメじゃない。でもまぁ驚いたのは私も一緒よ!?あんな火矢が出るなんて思わないわよね。」



 そう言って、今度はモアが力一杯弦を引き絞る………グググっと弦が後ろに引かれる……『引けている』…………スゥと同じ様に……



「ちょっと待てーー!危ねぇって!弓は遊びに使うな!そんな特殊効果ある弓を!」



 そう言って止めさせたのはチャックだった。



「何よ!弦さえ離さなければ平気じゃない!?全く……男の癖にビビっちゃって………」


「ユイも引いてみなさいよ。多分後衛武器だから適正あれば良い働きできるわよ?弦から手を離さなければ多分平気だから。私は弓を引いた感じしっくりしなかった……ダガーの方が性に合うわ」


 そう言ってユイに渡そうとするモア。


 僕は鑑定の結果と現状の違いに混乱して考え事をしていたが、エクシアはそれをみて他に聴こえない声量で僕に『聴いて』きた。



『あの弓がなんだって言うんだい?』


『あの武器は「僕達みたいな者」か「エルフ」にしか扱えないんです……』



 簡潔に話すと全てを理解した様で、ビックリしていた……しかし次の瞬間今度はユイが弦を軽々と引き絞った………



『なんかの間違いじゃないか?うっかり違う物『見た』とかさ……3人とも『精霊使い』って絶対におかしいだろう?ダンジョンに3人集まって『お互い知らないフリ』って……変じゃないかい?』



 僕達が話終わると同時に、『ビィィン』という音を立てて弦が弾かれると、初心者窓口の床の一部に火矢が刺さっていた。



 ユイが手を滑らせて弦を離したのだ。



 ユイとモアとスゥが3人がかりで『フミフミ』して消火していた………



「お………お前たちぃぃぃ!!何してんだーーーギルドを燃やすなー!!」



 ユイが手を滑らせた事で、床に火矢の焼け跡ができサブマスターが怒り始めたのだった。



 ユイとスゥとモアがしこたまサブマスターに怒られている時に僕は再鑑定したが結果は同じだった……彼女たちは『精霊使い』である事は間違いが無い……多分『使い方を知らない』か『理由があって隠している』だろう。


 しかし、脛に傷ありの冒険者……相手の事を調べるのは御法度だ。



 問題は『意外と沢山精霊使いがいる』と言う事だろう……カナミにエクシア、それと僕更に今追加された3人……この世界にはかなりいる可能性がある。



 エクシアの話では、どう見ても『エルフ』では無いだろうと……魔法に長けているので接近戦をするスゥはおかしいし、辛うじて可能性があるのはユイ位らしい、回復師はエルフには多いかもしれない魔法に長けているので……と言う理由からだ。


 だがその理由に確証も裏取りもない。



 そう話をしていたら、伯爵が男爵を伴って僕達のそばに来て『宝の中身』が欲しそうに話し始めたので、僕とエクシアの『この話』はここで強制終了になった。



「あ……あの杖だが、宝石が沢山あって実用的ではないと思うんだが……王様に献上する気があれば、『私達が間を取り持って』も良いんだが……」


「そうだな!ザム!近いうち『王家』へ行くんだろう?『王様に献上』すれば絶対いいことがあると私も思うぞ!どうだろう?ヒロ殿……皆に聞いてみてはどうだ?」



「因みに………あの赤い球と丸い宝石箱あたりは……どうだろう?女王様に良い手土産になると思うんだ……『君達の手土産』は喜ぶと思うんだ……」



「そうですね……皆に聞いた方が確実なので皆を呼びましょう!」



 そう言って僕は皆を呼ぶ。

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