第178話「快挙!駆け出し冒険者地下6階到達!」

地上に出るとあたりは薄暗くなっていた。


 僕達はひとまず僕のユニークスキルで預かっている宝箱を出すことにした。


 ガタイの良いチャイをメインに皆で運ぶ事にした。


 バームがスキルをギルド内で使わない方がいいと耳打ちしてくれたので思い出せた。


 ゲートの横に次元倉庫の入り口を作ってから引きずりながらもっていく。


 中身は凄く重いので期待ができる。


 入り口から出すとチャイと一緒に運ぼうとするが、へっぴり腰の僕を見兼ねたバーム達が手伝ってくれた。



「まず……体力と筋力つけないとな………ヒロは………そのひ弱な腕ちゃんと飯食ってるのか?」



 僕は毎食ビラッツに肉盛り弁当を食べさせてもらっているが、一切身体へ還元と反映はされていない………



 ちなみに転移門がある場所は入り口脇の壁だった、入る時丸い不思議な模様だとは思ったが、まさかゲートだったとは……


 頭に浮かんだ時は平面だったのに実際は壁に設置してあり、そこから出てくる感じだった。


 そこで僕はあることに気がつく………


 5階の階層ボスの部屋だ……ガーディアンの出てきたあのゲートだ。


 あの様な仕組みがこのダンジョンには無数に仕込まれていて、多分このゲートもその一つだ冒険者をより奥に引き摺り込むダンジョンの悪質な罠ではないか?……万が一にも別の階に飛ばされたら……と思うと恐怖でしかなかった。


 危険を避ける為には怪しい紋様は避けて近付かないべきだとつくづく思う。



 あの地下6階だけでかなり驚異度が増したのだ。もっと下層になれば更なる強敵がいてもおかしくない。



 周りを見渡せば、標高も高いせいか辺りもどんどん暗くなってきそうなので、僕達は受付をして貰った場所へ報告に行く。



「すいません、無事に帰還しました。地下階層1・2階層のチェックを終えてダンジョン内を散策したので遅く………」



「お!お前達一体どこから……それより!お前達生きていたのかーーー!!良かった!良かった………ビヨーンとか言う奴が2組の冒険者の邪魔にあって、武器を無くしたと言うもんだから……よくよく話を聞いたら、5階の階層ボス戦に紛れ込んだと聞いたんだ!」



「ビヨーン達が部屋から出てきた後、お前達が血相変えて入って行ったと言ったから!ここに駐在してたギルド職員が総出で地下5階層へ探しに行き今さっき帰って来たところでな……既に魔物さえ居なくなり人間は誰もいないと言われたから……無事で何よりだ本当に…」



「あ!すいません……倒した後、バームさんのパーティーと一緒に地下6階層まで行って力試しをしてたので……すいません」



「バーム!?バームってあの銅級のパーティー『イーター』の事か?そうだったのか!あの馬鹿共!何が駆け出しだ!みっちり説教だな……ちゃんと話もせずに入ったって事じゃないか!内容に矛盾があって怪しいと思ってたんだ……」



 駐在員に話を聞いて横にいたバームが自分の事だとわかり寄ってくる。


 彼らのパーティーは『ラビリンス・イーター』と言うらしく、意味は『ダンジョンを喰らう者』と言う意味でつけたらしい。


 皆には『イーター』で通っていて中堅冒険者として銅級では名が売れていたらしい。


 皆の名前が食べ物なので逆に迷宮に食べられそうだが…………言わないでおいた。



「ビヨーンから状況聞いたらてっきり悪い方にしか考えられなかった。そうかバーム達がいたのか!……まさかボス戦終えてから駆け出しが地下6階層になど行くとは思ってもみな………はぁ!?6階層で力試しって言ったか?あそこはオークの溜まり場だぞ!?」



 僕達は倒したオーク討伐の証であるダンジョンさんのオーク肉を見せる。



「た………確かに………オークの肉(大)だな………3匹倒したのか!?ボス戦後に………呆れた駆け出し共だ………お前達はもう駆け出しの意味はないな確証はないが銅級はほぼ間違いないだろう。」



「ところで僕達のことを言っていたビヨーンの事ですが………」



「今奴等はコッテリ事情聴取しているところだ。銅級上がりたての調子づいた馬鹿が、稀に先行パーティーがいるにも関わらずボス部屋に突入することがあるんだが、まぁアイツ達は例外だな……何と言ってもこのダンジョンの仕組みを知らんのでな!」



「聴けば聴くほど、本当に運だけで5階層へ行ったみたいでな……魔物が居なかったって言うんだ、階層ボス部屋へ行く間の通路に魔物が1匹も。バーム達が居たと言う事は彼等が全部倒した直後にその道を辿ったと言う事だな……それで合点が入った」



「目の前にはお前達の他に、マヌケな駆け出し2名が居たって言うもんだからな……焦ったも何もないわ……昨日のタバサが宝を持ち帰った件があるから何人かは挑むとは思ったがなぁ……いやー」


「で?宝箱はゲットしたのか?」


 僕達はバーム達が持ってくれている大きな宝箱を指差すと、駐在員が目を見開き『昨日のよりデカイな!』と嬉しそうだった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇



 僕は駐在員に一部始終の報告をした後、一緒にダンジョンアタックをした仲間達にテロル達の事を話す。


 既にこのダンジョン前にある乗合馬車の待合所には長蛇の列が出来ていたので上手くいけば直通路を歩いて帰れるかもしれないからだ。


「皆さんお待たせしました。ちょっと6階まで降りてたので時間が…………」


「おせーーーーー!遅すぎるーーーーー!絶対に!5階まで降りてると言ってんだよ!あたしゃ!言っただろう?良かったぜ……怪我人ギルドまで一回連れて行って……」


「ほら!アタシの言う通りじゃないか!絶対誰か連れ帰るって言っただろう?」


「ヨォ!イーター諸君!ウチのが迷惑かけたね………馬鹿だろう?コイツ………」


 エクシア達だった…………



 エクシア達は一度、伯爵達の件もあるのでジェムズマインの街まで帰ったそうだ……



 しかし2時進経っても帰ってこないので、エクシアがギルドの馬車をまた借りてこっちに来たらしい。


 因みに何故か伯爵と男爵まで自分たちの馬車を引き返させていたようだ。


 結局怪我人と予備の装備を街でおろしてから戻ってきたらしい。


 僕が万が一中で誰か拾ってきてもいいように馬車にはゆとりを設けていた。


 伯爵の馬車には伯爵と男爵、男爵の馬車が2台で片方はロズにエクシア何故かシャインが居た。


 もう片方には来た時のメンバーでテロル、ベン、アルベイ、カブラそしてギルドの馬車をローリィとエイミィが御者席で座っている。


 異世界組はギルドでお留守番らしい。



 帰りは大きな宝箱を伯爵家の馬車の天井荷台に厳重に括り付け、伯爵に男爵そしてエクシアと僕と何故かこれまたシャインが乗る。


 伯爵のザムドはファイアフォックスのエクシアの他に、ラビリンス・イーターのバームと希望の盾サブリーダーのシャインの両名と懇意になりたいようで、自分の馬車に乗るように勧めた。


 当然僕は有無を言わさず男爵に載せられた……この馬車の持ち主は伯爵だが、一切伯爵に聞くこと無くウィンディア男爵には中に連れ込まれた。


 ちなみにバームを馬車に乗せたのは、彼等が持っていた宝箱が気になったのだろう……しかし残念!あれば僕達のだ。


 テロルとカブラが御者台に座り、遠慮するアルベイにローリィにエイミィが馬車に男爵の馬車に乗せられる……ロズとベンは遠慮もなく中で既に寛いでいた……脳みそが筋肉だから仕方がないだろう……遠慮と言う文字が筋肉で既に粉々なのだろう。


 ギルドの馬車2台の片方は御者としてチャックとチャイが座り、スゥとユイとモアが遠慮していたが青くなったチャックに急かされる様に馬車に詰め込まれて居た。


 御者台は座りが悪いので女性3人を後ろへ……と彼なりの優しさなのだが、伯爵達の手前そんなやり取りをしている暇は彼にはなかった。


 もう一台の御者はクーヘンとタルトが、後ろの席には残りの3人が飛び乗っていた。当然伯爵と男爵を待たせることなど出来ないからだ。


 弓持ちが御者台に座るのは当然魔物が出た場合対策だが、このメンツの相手をする魔物が可哀想だ……。


 ギルドの馬車からの『場違いだ』と言う空気を他所に貴族専用路で一路街を目指すのだった。

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