第161話「トレンチのダンジョン 連合パーティー結成」
女性2人が不安そうな顔なので、僕は一応皆に入場許可証の提示をお願いすると全員素直に出した。
文句を言うこともなくシーフの男が素直に皆に見せる様に出したので、女の子二人組は意外だと思っているのだろう……表情に出ていた。
出して話している間に、1人の男に話しかけられた。
「僕はこの体格なんだけど……薬師を目指しているんだ。前衛の戦闘経験よりもサポート経験が多くて戦闘はイマイチで前衛はできないけど……それでも平気かな?」
凄いガタイがいいのに若干話し方がオネェっぽい男性に話しかけられた。
どうやら薬師を目指しているらしいが、折角の筋肉が無駄になっているんじゃないかと素直に気になった…体格はロズさんばりに出来上がっている。
「別に構いませんよ?テストのためのメンバーでも有りますから、彼女が戦士枠の盾タンク希望らしいので彼女と僕で先頭をメインに歩き皆はサポートでお願いします。」
僕がそう言うと、男性冒険者は許可証を提示する……彼の名前はチャイと言うらしい……話し方のせいで名前もなんと無く女の子をイメージしてしまう。
僕はそれを確認して、一班のリーダを僕で2班のリーダーをスゥにお願いする事にした。
ダンジョン内部の戦闘方法の説明をすると皆が感心しながら聴き込んでいた。
ダンジョン内部はスゥが盾を使い攻撃を受けた後僕が対応、後ろは遊撃で対応する感じだ。
因みに遠距離にいる敵は気が付いてない場合は僕が対応『ハイドクローク』を着込んでいるので多分問題ないはずだ。
ハイドクロークの説明はしないが、『得意』言っておいたら、チャックが自分も出来ると言ってきたので一緒に対応する事にした。
そしてチャックはレンジャーとしての経験を積んでいた様で、背中にはショートボウを携帯していた。
6人であれば無理に戦闘をしなくても交代でダンジョンでの戦闘経験を積めるし、ダンジョンを進む上で3名で無く6名ならより安全だ。
そして連合を組んではならないと言う説明は無かった。
僕は今回のパーティーが連合である理由をそう告げると皆が感心した様に頷いていた。
僕達は時間が惜しいので、連合パーティーと言うことをギルド職員に告げると、聞き耳を立てていた様で僕は担当から「お誉めの言葉」を貰う。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ダンジョンの中はカビ臭く薄暗かったが降りる階段の壁には何故か松明が一定の距離に据え付けられている。
地上から地下一階に降りたところは、非常に広い部屋になっていて多めの松明で割と明るかった。
部屋には進むべき道が一つしかなく、奥まで一直線に道が続いている。
僕達は注意しながらも進んでいくが、僕は空間感知があるのである程度の距離にいる魔物はわかるのだ。壁越しの向こうには赤い◉があるので敵性反応である事は間違いが無い。
魔物がいる事はこれでわかったので、通路の罠が心配だ。
ダンジョンといえば『罠』だから敵が分かっても安心など出来ない。
「此処周辺は罠は平気だな……探知に引っかからないからまっすぐ行って大丈夫そうだ。」
チャックがそう言う。
自ら先頭を歩くチャックはシーフ職が希望なのか罠を捜せるらしい。その事を自分から打ち明けて現在先頭を歩いてくれている。
気配についても敏感で、耳を壁にくっつけて聴き込む。
壁向こうに魔物がいるのを言い当てたのだから凄いと素直に思った。
チャックの言った通りどんどん奥に進むと折れ曲がった道の先には随分前から僕の空間感知に敵の◉を感じ取っているので
俺曲がった道の先の確認はスゥと僕でと合図するとチャックは素直に戻ってきた。
僕は盾を構えてそっと覗き込んで、敵を確認すると、ゴブリンが2匹いて「ギャッギャッギャ」っと何やら話しているゴブリン語なのだろうか……僕は指で2のサインを出す。
僕は普通にショートソードを抜き放ち小走りに走り、2匹の首を『スパン』と跳ね飛ばす。
メンバーは突然走り出した僕にビックリするも顔を出すと既に終わっているのでびっくりして口を開けていた。
「ちょっと……ゴブリンを2匹相手に……秒かよ!とんでもないリーダーに出会ったな!!」
チャックはそう言って近寄ってくると、ゴブリンの身体がどんどん床に沈み込み消えかかっている様を見る。
ダンジョンがゴブリンの遺体を食べているイメージしかない。
ゴブリンが居た後には魔石(小)が2個と、耳に錆びたナイフが落ちていた。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
魔石(小)2
ゴブリンの耳
錆びたナイフ
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
僕チャックはそれを拾い荷物袋に放り込む。
「後で分配でいいよな?戦士が荷物多くなると戦闘に支障が出るからな…出来れば他の奴が持って欲しいが、見た感じ、薬師2名に回復師ってとここか?このパーティーは偏ってるな!でも命は守れて安全そうだ。がははははは」
モアとユイそれにチャイはその事にも気がつけず申し訳なさそうだった。
「あ!すまん悪気はないんだ!でも知らないことが覚えられたんだ!良いことだろう?」
元気付ける事を忘れないチャックは、意外と良い奴なのかもしれない……モアとユイはチャックの一言で吹っ切れた様だった。その理由は最高の笑顔で笑ったからだ。
その後僕達はトレンチのダンジョン1階をくまなく調べてチェックを受ける。
僕のパーティーからはモアとユイが1箇所ずつ確認印を貰い、スゥのパーティーからはチャックとチャイがチェックを貰っていた。
スゥはたまたま僕の真似をした様だが、何故そうしたかは深くは考えていなかったらしい。
『リーダーはそう言うものだ!』と思ったらしい。
皆がなんでリーダーから貰わないんだ?と言われたので……
「万が一人が抜けても2班の彼女がいるからパーティーからは最低1人残せばなんとかクリアはできると思う。抜けたら『全員不合格』とは言われていない、だから『組んでダンジョンに入れ』パーティーとして協力しろと言う意味だと思う。でもこの試験の内容的に『仲間を見捨てて自分だけ先に出る』そんな自分勝手な奴は受かるとも思えない。」
タバサの時に『パーティーにいても指示をしていて何もしなかった奴は失格』になっていたのだから、ちゃんと任務をこなす冒険者は雑には扱われない仕組みなのだろう。
と僕がそう言うと皆が、なんでそんな裏事情的な事の予測が付くのか?と気になっていた様だ。
下へ続く階段の在処は既にチェックポイントを探した時に見つけていたので戻るのは楽だった。実はこれも功労者がいる……これまたチャックが道順をマッピングしてくれていたので、彼は言葉遣いとは裏腹にとんでもなく有能だ。
因みに地下2階に降りる階段の壁にも松明が据え付けられている。
下の階に降りるだけなのにかなり深いイメージだった、しかし階段が狭いせいでそう感じたのかもしれない。
階段の続きは部屋ではなく一本の通路だったが、空間感知の把握できる距離で見る限り暫く進むと十字路になっている様だ。
そして少し先には数匹のスライムが壁を這っていた……。
スライムは自分の粘体を使って天井にも張り付けるので、ダンジョンでは落下してきた個体の窒息攻撃の注意が必要だ。
この個体が酸を吐き出すかは分からないが、注意深く進もうとするスゥの横を盾を構えて歩きながら核をショートソードで切り裂いて行く。
酸ダメージを負っても所詮2Fの敵だ……ベンとロズの共同特訓に較べればスライムのスピードなんか皆無だ。
盾をしっかり構えていれば万が一消化液などを出されても顔に酸がかからないし、頭上からの顔への窒息攻撃を受けなければ幾らでも対応がきく。
僕は切り裂きながらも後ろの仲間を気にしつつ、どんどん殲滅する。
仲間も討伐に加勢するが、彼らの戦い方を見て先を急いでいた為にこのダンジョンの魔物鑑定を忘れていた事に気がつく。
さっきのも含めて、特別代わり映えの無いゴブリンとスライムだが折角目の前に居るので念の為に鑑定しておく事にする……万が一その個体が別の魔物だとすれば鑑定スキルの経験値にもなるのだから!
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