第127話「襲撃!間一髪の冒険者達」
僕達はのんびりスライムを駆除しながら魔の森外縁に向かう途中に、何かから逃げていると思われる冒険者2人に出会った。
若干距離がある為に誰か判らなかったが、遠巻きながらに彼女達には見覚えがありどうやら傷を負っている様だ。
そして彼女達は現在も必死に何かから逃げている様だった。
後ろには少し離れて2匹のゴブリンウォーリアーとゴブリンアーチャーが二人を追い立てていた。
それを見たミクがすぐさま声をあげる。
「ヒロさん!誰かがこっちに逃げて来ます。」
「皆スライム駆除は一時中断です。あの二人はレガントのパーティーで見覚えがある…ソウマさんは盾で2人とゴブリンの間に割って入って彼女達の護衛に、ユイナさんとミクちゃんは二人の怪我の具合を見てください。」
「1匹は弓持ちで若干距離があるので魔法でなんとかします。ソウマさんは2人を収容後に対処できれば近接ゴブリンの対処をお願いします。決して無理はしないで下さい。」
「私も火系魔法で応戦するよ!」
「カナミさんは攻撃に参加せずに他に魔物が来ないか周りの索敵をお願いします。彼女達の目撃がある以上カナミさんの身元が万が一わかっても困るので…此処は僕だけでなんとかします。」
僕はそう言うと、ソウマと二人で追われている二人に向かって走り出す。
僕より身体が出来あがっている元消防士のソウマさんは走るのが早く、僕よりだいぶ速く二人に元に辿り着くと盾を構えてゴブリンウォリアーに向かい合う。
「大丈夫か?もう少しでヒロが来る…もう少し行くとユイナとミクが居るから薬を貰って回復するんだ。此処は俺たちに任せておけ!」
「む…向こうにレガント達が!ゴブリンの群れが森から出てきて…街の衛兵を呼ばないと!」
ソウマとあった途端力が抜けたのだろうか…彼女達はその場に倒れ込んでしまう。
無事にソウマが2人の元に辿り着いたのを見計らって、その様を見て急遽僕は立ち止まり遠距離の水魔法をゴブリン3匹に撃ち込む。
「ウォーターバレット!!」
2人の後をひたすらに追いかけ回していたゴブリン3匹は、自分より弱い冒険者だった為に注意する事も忘れている様だ。
こっちに向かって直進してくるゴブリンの頭に向かって合計5発の水の弾丸を生成して撃ち出すと、頭にクリーンヒットしてゴブリン3匹の頭が次々に吹き飛ぶ。
ゴブリンが突然の水魔法の勢いで派手に後ろに倒れる。
僕は他にもゴブリンが居ないか注意しながら周りを見回しながら2人のそばに向かう。
僕の後ろからユイナとミクとカナミが追いつくと、2人のその手にはタバサ製と思われる薬が握られていた。
「ヒーナさん!ミーナさん!もう大丈夫です。今すぐ薬を使うのでもう少し頑張ってください。使う前に矢を抜くので痛いと思いますがちょっと我慢してください。」
ユイナはそう言うと2人の身体に刺さった矢を引き抜くと、大きな傷口から順に薬をかけていく…流石タバサ製の回復薬だ見てくれは紫の怪しい薬だが効果は抜群でみるみる傷が塞がっていく。
「こ…これはポーションですか?なんて物を…私達こんな高価な物の支払いできません。」
「違います…効果は抜群ですがポーションでは無いです。私たちお手製の薬ですので支払いは気にしないで下さい。ただし効果と薬の話は他の冒険者には他言無用でお願いしますね!」
「皆さん有難う御座います!ヒーナ達もう死んじゃうかと思いました…ミ…ミーナ…あれ見て…後ろに居たゴブリンの3匹が一瞬で…ヒロさん…今のはいったい?魔法ですか?」
「そ…それも他言無用で…」
僕達はひとまず彼女達を回復させて、何があったのか一部始終を聞く事にしたが…状況はかなり悪かった…
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「レガント!リーバス!無茶はするな。」
「分かっている!ミーナとヒーナが衛兵にを連れてくるまでの繋ぎだって分かっている。」
「ああ!無茶はしない!其れにしてもアイツら無事に東門に着いたかな…本当に俺らは運が無いな…魔の森外縁なんか選ばなければこんな群れに出くわさなかったのに。」
「ソウマだったら巧みに盾を使ってるんだろうな…それに彼等がいれば少しは楽だっただろうがな…全員結構な怪我だ…これでペナルティは間違い無いな…クソゴブリンめ!」
「全部で6匹か…ヒーナ達を追っていった3匹合わせると9匹だぜ…何でこんな群れが突然出てくるんだ…クソが…」
「こいつら半分以上が斥候だ…森の中にまだ本体が居るのは間違いがない。」
ミーナとヒーナに傷具合を確認していた僕達はレガント達がそんな事になっているとは知らず、ギルドに知らせに行くか悩んでいた…。
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「ひとまずクルッポーをこの先に向かわせて、ゴブリンを攻撃させます。混乱しているその間に私達が向かうのはどうでしょう?」
「でもさ、ミクちゃんこの鳩の魔物を知らない4人は新たな魔物が来たと勘違いしないかな?」
「ユイナそればかりはこの際は仕方ない…多分助けを呼ぶくらいだから攻撃に出る事はしていないはずだ…クルッポーが攻撃すれば彼等は混乱してしまうかもしれないが、ゴブリンに奇襲はかけられるはずだ。」
「それにヒーナさんに聞いた距離なら、俺ならそんなに時間かからずに向かえるはずだ。」
「そうですね…僕もそう思います…ソウマさんの走る速度は速いのでヒーナさんに聞いた距離だったら何とかなるかもですね…僕もある程度まで近づければ水魔法である程度は蹴散らせますし!」
「カナミちゃんは念の為2人に付き添いながら来て貰えますか?まだ全快じゃ無いですから…ユイナさんとミクちゃんは僕と一緒にレガントさんの方に先行する感じで…それでどうでしょう?」
「「「「了解!リーダー」」」」
「じゃあ!クルッポーちゃん飛ばします!」
「クルッポー頼むね!決して無理しないで様子を伺ってね?そして隙があればゴブリンを攻撃して!4人を守ってあげて!」
「じゃあ俺が先に先行するから、カナミちゃんその2人頼むな!」
そう言うとミクがクルッポーを4人の元へ向かわせる。
それを見たソウマはレガント達のいると言う場所へ猪突猛進していく…ソウマに遅れる形で僕とユイナとミクも合わせて走り出し、遅れながらもミーナとヒーナを介助しつつ後を追うカナミ。
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「くそ!ゴブリンめ!本隊が来る前に少しでも斥候を減らさねぇと…うお…聴いてねぇぞ!飛行系の魔物まで来やがった!」
「今日はどうなってやがるんだ!飛行タイプの魔物は今の俺らには無理だ…くそ…此処までか…」
半ばやけになりそうな気持ちを抑える戦士のバーガムは恨めしそうに鳩の魔物のクルッポーを睨む…しかし次の瞬間考えられない事が4人の目に映る。
「クルッポーーーーー!ポーーーー!ポーーーーー!」
「くそ!上からも来るぞ!ヒーナ達が助っ人連れてくるまではなんとか耐えるしか無い!」
甲高く鳴いたと思うと、遠距離武器を持っているゴブリンの斥候に向けて衝撃波を撃ち込む鳩型の魔物のクルッポー…突然自分達を目標にした攻撃に訳も分からず吹き飛ばされるゴブリンの斥候3匹…
決して魔物だからと言って仲間なわけでは無い。本来生息域いわゆる縄張りに他の魔物が足を踏み入れれば攻撃されるのが当然だ。
「レガント…アレはどう言うことだ?魔物が魔物を襲ってやがる…」
「多分あの鳩の魔物の巣…縄張りってやつにゴブリン共が侵入したんで襲ってやがるんだ…運がコッチに向いたぞ!なんとかゴブリンだけでも数匹倒せれば後が楽になる…鳩の魔物は見るからに衝撃波がヤバいから逃げるしか無いが…今は敵の敵は味方だ!」
「ゴブリンウォリアーを倒せば近接が少しは楽になる!今しかない!やるぞお前達!」
「「「オーーー!」」」
クルッポーが味方だと知らない4人は、運が向いたとばかりに目の前のゴブリンウォリアーに攻撃に転じる。
盾を扱う2人がうまく攻撃を防ぎつつ後ろの戦士2人が隙を見つけては攻撃を繰り出す…その間にもクルッポーは凄い速度でゴブリン斥候の射撃武器を避けながらも的確に敵にダメージを積み重ねる。
そうこうしていると、見慣れた顔の冒険者が低い姿勢からゴブリンの攻撃に割り込み確実に攻撃を遮り戦闘に加わる…
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