平安時代

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。筆者は結婚式で色打掛を着ましたが、信じられないほど重く、布団を背負っているような気分でした」

「途中で貧血になったんだろ?」

「ええ、5kg以上ありますからね。ところで、平安時代には今のような布団がなく、着物を寝具として使っていたそうです。色打掛を布団だと思った筆者の感想は、あながち間違いではなかったわけです」

「いくら分厚くても、着物が掛け布団じゃ寒いだろうに」

「掛け布団だけではなく、敷き布団も着物ですよ。寝る時は片側の袖を脱いで、身体の下に敷いたそうです。百人一首に出てくる『衣かたしき ひとりかも寝む』はこの状態を指すのだとか」

「片袖を脱ぐのか? 床暖房もないのに?」

「想像ですが、床の上に寝て身体が痛くなるよりは、寒さに耐える方がマシってことじゃないでしょうか。なお、2人で寝る場合は、互いの袖を布団にできるので、片袖を脱ぐ必要はなかったそうです」

「それなら多少は暖かそうだな」

「はい。平安貴族の男女がめったやたらと共寝するのは、寒さが原因の1つだったのかもしれませんね」

「寒さが2人を近付ける、か。ポエミーな発想だな」

「しかしそれだと、恋人いない歴鋭意更新中の我々は凍え死ぬような」

「死因:非モテによる凍死」

「成仏不可能」

「俺、平安時代に生まれなくて本当に良かったよ」

「浦島太郎は平安時代の話だとする説もありますが、ともかく令和に生きる我々は、エアコンや床暖房に感謝しつつ快眠を貪りましょう。非モテが生きやすい時代に感謝です」

「いや、決して生きやすくはないだろ……」

「そうですね。クリスマスもバレンタインもない平安時代が羨ましいです。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る