童謡
「どうも、浦島太郎です」
「わたくしは講師の亀でございます。浦島太郎は誰もが知る昔話で、童謡にもなっておりますが、5番まであるのをご存知でしょうか?」
「知らない」
「えっ、本人なのに?」
「俺が作詞作曲したわけじゃないからな」
「ならば、この機会にお教えしましょう。1番で、浦島殿は助けた亀に連れられて、絵にも描けない美しい竜宮城へ向かいます」
「実際は、騙されて連行されたんだけどな」
「2番はこうです。『乙姫様のご馳走に、タイやヒラメの舞い踊り。ただ珍しく面白く、月日の経つのも夢のうち』。これ、変じゃないですか?」
「どこが?」
「タイやヒラメの舞い踊りってそんなに楽しいですか? 5分で飽きませんか? もしや友達いないのでは?」
「連れて行った本人が言うんじゃない」
「そこで、わたくしは考えました。『乙姫様のご馳走』ではなく『乙姫様がご馳走』だったのでは……それなら納得というか……」
「俺は潔白だ! そんないい思いしたなら、こんな場所で意味不明な恋愛講座なんか受けるもんか!」
「ですが、何もないなら、別れ際に呪われるのは理不尽でしょう」
「それは俺が言いたいよ、マジで」
「3番で浦島殿は、遊びに飽きて帰ってしまいました。意外と飽き性です。玉手箱は素敵な土産だと思って、ワクワクする様子が歌われます」
「完全に黒歴史だな」
「続いて4番。村も家も見当たらず、周囲は知らない人ばかり。困惑した浦島殿は、5番で玉手箱を開け、老人になったところで歌が終わります」
「そのあと入水自殺する様子は歌にないのか?」
「ありませんね。わたくしが6番を作りましょうか?」
「作らなくていいよ」
「ちなみに玉手箱は、持ち主の精神状態を具現化する装置ですので、絶望した状態で開けたら呪われます。テンション高いうちに開封したら良かったのに」
「先に言え」
「とまあ、前世は失敗でしたが、当世こそは幸せになりましょう。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」
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