君の名は
「どうも、浦島太郎です」
「わたくしは講師の亀でございます」
「ところで今さらなんだが、お前、名前はなんて言うんだ?」
「吾輩は亀である。名前はまだない」
「いや、ただの通りすがりの亀ならともかく、お前は主役なんだから固有の名前があるはずだろ?」
「亀って通りすがったりしますか?」
「いや、しないけど! そういう部分だけ細かいな!」
「なるほどね。わたくしの名前が知りたくて、夜も眠れないというわけですか」
「そこまでじゃないよ」
「あの日見た亀の名前を僕達はまだ知らない」
「いいからさっさと名前言えよ」
「いえ、本当に固有の名前はないのです。この連載、一応『浦島太郎』がモチーフでしょう? 原典からかけ離れたオリジナル設定はあまり付加したくないというか」
「俺達2人が恋愛講座やってる時点で原典もクソもないんだが」
「名前は、亀でいいじゃないですか」
「けど『おい亀』って呼びかけるのは罵倒みたいで落ち着かないんだ」
「Sの才能ないですね」
「Mだからな」
「それでは今から名前を決めましょう。そうですね、カメレンゴ3世とか」
「急に欧米人になるんじゃない」
「格好いいでしょう?」
「原典尊重はどうしたんだよ! 日本昔話に出られる名前にしろ!」
「じゃあ亀兵衛にします」
「わかった。改めてよろしくな、亀兵衛」
「ふう……。どうにか話題をそらしましたが、わたくし実は乙姫を監視するために竜宮城へ配備された、自律式亀型警戒装置3号です。正体がバレなくてヨカッター」
「自分でバラしてるじゃん」
「わたくしの目的は、恋愛力で乙姫を倒せる青年を竜宮城へ送り込むことですが、期待の浦島殿はなかなか思うように育ってくれません」
「こんな講座で育ってたまるか。酒とギャンブルと離婚の話ばかりしやがって」
「恋愛の行き着く先なんて、どうせその3つのどれかですよ」
「夢も希望もないな」
「以上、亀と浦島の恋愛講座でした。めでたし、めでたし」
「めでたくねぇよ」
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