グラス割り

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。バカモン、そんな結婚は断じて認めんぞ!!!(ガシャーン)」

「な、ちゃぶ台返し……だと?」

「とまあこのように、いきなり食器を割られたら驚いてしまいますよね。ロシア料理店で働くわたくしの知人は、仕事中によくそんな経験をしたそうです」

「ちゃぶ台返しを?」

「ロシア料理店にちゃぶ台はありません。そうではなく、ウォッカのグラスを割るお客さんがいたそうです。クレームかと思って、ビクビクしながら席へ行ったら、そのお客さんは怒るどころか逆にとっても上機嫌!」

「じゃあ、なんで割ったんだ?」

「いわく、ロシアではウォッカを一気飲みした後、グラスを叩き割るのが伝統的な習慣だそうです」

「マジか」

「ロシアの音楽を聴いていると、『グラスを割る』という歌詞が出てきたり、グラスを割る効果音が入っていたりするのですが、あれはそういうことだったのか! ……と、わたくし腑に落ちました」

「しかしそれ、店は迷惑だな?」

「はい。ロシア語で注意書きを貼っても、あまり効果はなく、知人も頭を悩ませておりました」

「そういう場合、客に弁償させることはできないのか?」

「法律に詳しい友人に尋ねたところ、店の物を壊しても、故意ではない場合、客に弁償の義務はないそうです」

「友人以前に、お前も法学部卒だろ」

「そんな説もあります」

「でも、ロシア人がグラスを割るのは、うっかりミスじゃなくて故意だから、弁償させたらいいじゃないか」

「どうなんでしょうね。故意は故意でも、あくまで習慣であって、店を妨害する意図は特にないわけで……。ともかく浦島殿も、ロシア人女性を口説く際は、豪快にグラスを割ってみては?」

「日本人の彼女もできないのに、ロシア人の彼女ができるわけないだろ」

「そんな言い訳しないで、太郎、早く彼女を連れてきなさい」

「またそのオチか!」

「以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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