中華料理
「どうも、浦島太郎です」
「わたくしは講師の亀でございます。前にも言ったかもしれませんが、わたくしの小学校は給食を残せなかったので、食事を残すことに対して今でも強い罪悪感を覚えてしまいます」
「俺も小学校で、給食はなるべく食べ切ろうって言われたよ」
「なるべく? はっはっは、甘いですなぁ。わたくしの小学校など、泣こうが吐こうが5時間目が始まろうが、完食するまで一歩も席を立てないルールでしたぞ」
「それ、人権侵害なんじゃ?」
「給食という名の拷問。ただ、その名残りで今でも食事は絶対に残さないのですが、そのおかげで『育ちがいいね』と大人になってから褒められた経験がございましてな」
「怪我の功名……ならぬ、トラウマの功名か」
「はい。出てきた食事は残さずに食べ切った方が、デートでは印象がいいかもしれませんね。もちろん無理は禁物ですが」
「俺も気を付けよう……」
「ところで、日本では食事を食べ切るのがマナーですが、中国では知人に食事を振る舞われた場合、あえて残すのがマナーだと言われております」
「残したら失礼じゃないのか?」
「食べ切れないほど歓待を受けました、という意思表示になるのだそうです」
「なるほど。それなら、トラウマ持ちのお前でも安心して食事を残せるな」
「ええ。まあ中華料理は一皿の量が多いので、そのマナーをわざわざ気にするまでもなく、完食するのは不可能だと思いますが」
「満漢全席とか、すごい量だもんなぁ」
「今度、中華街へ行って食べませんか?」
「食べたいけど、お前と2人だけで行くのはちょっと……」
「そこなんですよね。中華料理って、複数人で大皿を囲む前提なので、少人数だと非常に注文しづらいというか」
「ぼっちに厳しい世界だよな」
「この問題を解消するために、太郎、早く彼女を連れてきなさい」
「結婚をせかす親のような台詞はやめてくれ」
「以上、亀と浦島の恋愛講座でした。来週までに連れてくるのよ」
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