時代遅れ

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。先日、久し振りに会社へ行ったら、お気に入りの書店が閉店しておりました。まるで浦島太郎です」

「それ!!」

「何です?」

「よく、時代遅れの人を浦島太郎って呼ぶよな。前から思ってたんだが、その言い回しは俺に失礼じゃないか?」

「そう言われてみれば、浦島太郎はディスっぽい表現ですね。桃太郎や金太郎はそんな感じ全然ないのに」

「桃太郎はイケメンのモテ男、金太郎は真面目な力持ちってイメージだよな。この差は一体何なんだ?」

「気持ちはよくわかりました。それでは、浦島殿が時代遅れではないことを、この場を使って世間に証明してください。具体的には若者言葉で喋ってください」

「え、若者言葉……?」

「浦っち、助けてくれてサンキューな。あ、とりまウチ来る? 海底神殿マジ映えるし、姫と一緒にウルトラ歓迎してやんよ」

「姫って乙姫か? い、行かないぞっ!」

「えー、ノリ悪くね? ぴえん超えてぱおん。テンション下がってやばたにえん。あたり前田のクラッカー」

「ん、なんか変では……?」

「浦っちに振られるとかハートブレイク太陽族。だけど無問題モウマンタイ。サンスターアーム筆入れは象が踏んでも壊れない」

「もういい、無理するな中年」

「はい。自分で始めておきながら、昭和生まれのわたくしには無理ぽよでした」

「努力だけは伝わったよ。そもそも、ぴえん超えてぱおんとか、自然に使いこなせるわけがないよな」

「ぴえんは何となく理解できますが、悲しい時にぱおんと鳴きたくなったことは、とりあえずわたくしはないですね。ですが、決めつけはいけません。今の若者は、悲しい時そういう気分になるのかもしれませんし、それを変だと非難する権利など誰にあると言うのでしょうか?」

「確かに」

「逆に若者には、上司が昭和ギャグを飛ばしても、浦島太郎だとバカにせず広い心で見守って欲しいですね。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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