メイドカフェ

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。お帰りなさいませ、ご主人様」

「突然どうした」

「本日は日頃の感謝を込めて、メイドカフェ風に浦島殿を歓待したいと思います。ささ、こちらへお座りくだされ」

「わかったよ。ええと、注文は……」

「本日の日替わりは『特製スッポン鍋』でございます。セットドリンクは『スッポンエキス』がおすすめです」

「オムライスとコーヒー頼むよ」

「無視しましたね」

「いやそれ、メイドカフェで出すメニューじゃないだろ」

「コラーゲンたっぷりなのに? まあ、よろしいでしょう。お待たせしました、こちらご注文のオムライスでございます」

「早っ!」

「今から美味しくなるおまじないをかけます。本格的な黒魔術です」

「待て、呪うんじゃない」

「ですが、メイドカフェでは、料理におまじないをかけるのでしょう?」

「『美味しくな~れ、萌え萌えキュン♪』ってやつだな」

「変わった呪詛ですね」

「呪詛じゃないが、とにかくおまじないの後、ケチャップでオムライスにハートを書くんだ。でもハートじゃありきたりだから、俺がメイドカフェに行った時は、自分の名前をリクエストすることが多いかな」

「『浦島太郎』ですか」

「それは画数的に無理だろ。『たろう』でいいよ」

「た・ろ・う……」

「おお、いい感じじゃん。この後、メイドさんとゲームができる店も多いよな。じゃんけんに勝ったら、あーんで食べさせてもらえるとか」

「よし、じゃんけんぽん! あ、わたくし勝ってしまいました!」

「まあ2分の1だから、客が負けることも普通にあるよな」

「それでは、このオムライスは、わたくしがいただきますね。……ふむ、冷凍なのに意外と美味ですな」

「あっ、客の料理食ったな!」

「ふはは、浦島殿は負けたのですから、大人しくわたくしに貢いでくだされ! もぐもぐ、ああ美味しい! 他人の金でする食事は最高ですなぁ!」

「これ、歓待でも何でもないじゃん……」

「以上、亀と浦島の恋愛講座でした。それでは行ってらっしゃいませ、ご主人様」

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