失恋
「どうも、浦島太郎です」
「わたくしは講師の亀でございます。ところで浦島殿、失恋した経験は?」
「妖しい美女に渡された呪いの箱をうっかり開けて死んだ経験はあるが、あれは失恋と呼ぶのだろうか」
「(ノーコメント)」
「何か言えよ! お前もちょっとは責任あるだろ!」
「生きろ。」
「もの〇け姫かよ!」
「それはそうと、失恋とは大変つらいものでございます。わたしくなどは、皆様に何かを言える立場ではないのですが、大切な人と別れるという経験には少々心当たりがございましてな。それはもう、八方向から全身を引っ張られ、内臓が引きちぎれるような心地でした。心が休まるのは寝ている時だけ。起きたら悪夢の始まりです」
「………」
「わたくしは、苦しみから逃れたいと願いました。酒を飲みました。大声で叫びました。壁を、テーブルを、思い出の品を力いっぱい殴りました。ですが、これらの行為で傷付くのは他ならぬ自分自身。とんだ独り相撲でございます」
「それで、結局どうしたんだ?」
「数か月はその状態が続きました。ところが、ある時悟ったのです。この悲しみと苦しみは、愛しさから発生したものであると。その証拠に、どうでもいい相手と別れても悲しくないじゃないですか」
「まあ確かに、好きだから失恋するわけで、好きじゃなかったらそもそも失恋しないもんな」
「ですので、失恋で苦しんでいる方は、その苦しみを忘れようとするのではなく、逆に誇って胸に刻み付けて欲しいのです。だってそれは、自分が誰かを愛した証拠なのですから」
「愛した証拠、か……」
「そう考えれば、にがい苦しみも受け入れたくなるのでは? まあ考え方は人それぞれでしょうが、わたくしはそう思って生きております。だから浦島殿も、生きろ。」
「そのネタはもういい」
「以上、亀と浦島の恋愛講座でした」
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