燗(かん)

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。ここ数回カクテルの話が続きましたので、今日は趣向をかえて日本酒の話をします」

「酒から離れられないのか?」

「仕方ないでしょう? そもそもわたくし恋愛的には敗者ですし! なのにこんな講座任されちゃったら、酒の話をするしかないじゃない!」

「わかった、わかったよ。聞いてやるから落ち着いてくれ」

「コホン。日本酒といえばかんですが、温度によって呼び方が違うのをご存知でしょうか?

・飛びきり燗(とびきりかん)55度

・熱燗(あつかん)50度

・上燗(じょうかん)45度

・ぬる燗(ぬるかん)40度

・人肌燗(ひとはだかん)35度

・日向燗(ひなたかん)30度」

「へえー、そんなに呼び方があるのか。細かいな」

「ええ。かくいうわたくしも、以前は勉強不足で、熱い日本酒はすべて熱燗だと思っておりました。ちなみに浦島殿、アルコールの沸点はご存知ですか?」

「知ってるぜ。78度だろ?」

「正解!」

「中学校の理科のテストで、『酒飲んでナハナハ』って覚えたからな」

「はい。それ以上になると蒸発してしまうので、燗をする際は、80度前後のお湯で温めるのが理想です。逆に冷やした酒はどう呼ぶでしょうか?」

「冷やだろ?」

「残念、不正解! 冷やは20度前後の常温の酒を指しますぞ」

「冷やしてないのに冷やって、おかしくね?」

「昔は冷蔵庫がなかったので、燗をしていない酒を冷やと呼んだのです。なお、冷やした酒は冷酒と呼びますな」

「冷やと冷酒……ややこしいな」

「ここ、テストに出ます」

「えっ、この講座テストあんの?」

「ふはははは、いつからテストがないと錯覚していた!?」

「やべぇ、今から急いで復習しないと……つってもこの講座、基本的に離婚の話と酒の話ばっかりだよな」

「壁ドンの話もお忘れなく、ですぞ。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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