マスクイ

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。付き合い始めのカップルは、口付けのタイミングに悩むものですが、現在はマスク必須の社会ですから更に難しいのではないでしょうか?」

「今の若者ならではの悩みだな」

「実際、皆様どうしているのでしょうね? そもそも口付けは、流れと雰囲気でするものであって、『今からするからマスク外して?』などと口にするのは野暮天そのもの。場合によってはマスク・ハラスメントで訴えられる可能性もございます」

「そんな難しく考えなくても、そういう空気になったら、お互いに自然と外すんじゃないか?」

「ちなみに浦島殿、そういう空気が伝わって、自然な流れで口付けした経験はございますか? マスクの有無関係なしに」

「ないな(即答)」

「でしょう? というわけで、皆様がどうしているのか、わたくし恋愛相談のサイトを見て調べました」

「暇人……」

「あくまで仕事の一環ですよ。『その1、マスク越しにする』」

「無難だけど、それキスって呼ぶのか?」

「そこは人によるでしょうな。『その2、言葉で伝える』。少々無粋な感じもしますが、『顔が見たい』とか『キスしたい』とか、そういう直球の言葉を喜ぶ女性もいるようですね」

「拒まれたら地味にダメージでかいけどな」

「『その3、自分で相手のマスクを外す』。強引にするとマス・ハラなので、髪を撫でるような仕草から、そっと外す感じがいいそうです」

「それはそれで難易度高いような」

「なお、アゴクイに続き、今後はマスクを格好よくずらす『マスクイ』が流行るのでは……という意見もありました。いやはや上手いですなぁ」

「マスクイか……。彼女ができた時に備えて、俺も練習しておこうかな」

「そんな遠い未来には、きっとマスク不要の世の中に戻っているはずですよ」

「だといいな! ……ん、遠い未来?」

「以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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