テーブルマナー①

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。いつも頑張っている浦島殿のために、今回はフルコースディナーをご用意しましたぞ」

「うっわ、マジか! いただきまーす」

「お待ちなされ。今からテーブルマナーに関するクイズを出題します。1問正解したら1皿食べてよろしいですぞ。不正解だった場合は没収です」

「なんと」

「それではさっそく第1問でございます。椅子に座る時や立つ時は、どちらから出入りしますか? ①右から ②左から ③下から潜り込む」

「③はただの変人だろ」

「そうですね」

「いや、しかし、右も左も一緒じゃないのか? 第1問から難しすぎるだろ。せめてヒントを……」

「ヒントですか。これは、大変古いしきたりの名残ですな。身分の高い成人男性は常に何かを持っていたはずです。ほら、アレですよ、アレ」

「アレ?」

「西洋でも東洋でもいいので、昔話をイメージしてくだされ。ああ、しかし、浦島殿は持っておりませんな。桃太郎殿は、たしか持っていましたが」

「わかった、モテ運だな」

「不正解です」

「なんでだよ! 正解だろ! アイツは鬼を倒して英雄になってモテモテ人生送ったのに、俺はヒロインに呪われてジジイになって死んだんだぜ! せっかく亀助けたのに、おかしくない!?」

「それを言われると、助けられた身としては心が痛みますな……」

「やっぱり動物を助けるだけじゃ物語的に地味だよな。剣や魔法で敵を倒さなければ女性にはモテない……ん、剣?」

「それです!」

「あ、なるほど。俺は確かに持ってないけど、桃太郎は鬼退治で使ってたな」

「はい。昔の成人男性は左腰に帯剣しておりましたので、邪魔にならぬよう、椅子へ着席する際に左から座る習慣ができたのです。というわけで、正解は『②左から』でした」

「ちなみに今の問題は正解でいいんだろうか?」

「まあ剣を当てたので正解扱いにしましょうか」

「うっし!」

「長くなりそうなので次回へ続きます」

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