第11話 怨嗟の魔笛


 同時刻——————


 アリッサは屋敷内を迂回するように走りながら、戦闘が起こっているから離れるように動き続ける。狙いは、ここを一瞬のうちに破壊されたことを受け、近場の拠点に避難しようとするポスナーゼン公爵である。


 アリッサが瓦礫をブーツで踏みしめながら遠くを見ると、部下に肩を借りながら装甲車に乗り込み、こちらから離れていく姿は目に映った。当然のことながら、ポスナーゼン公爵だけでなく、その夫人であるトピヤ・ポスナーゼンも後部座席に乗り込んだことを確認できた。

 その周囲には、彼らを守るように複数の同型の装甲車が列をなしている。


 アリッサはそれらを認識すると同時に、腰のマジックポーチから何に使うのかわからない立方体を取り出す。それらは、アリッサが横のスイッチを入れると同時に、様々な部品に分解され、体に装着するパーツの形を取った。

 アリッサはそれらを一つ一つ手作業で取り付けていき、五分ほどしてようやく準備が整った。その間に、装甲車たちは見えなくなり、既にかなりの距離が離されたと確信できた。


 だが、それらに焦ることなく、アリッサは最後にフルフェイスのヘルメットをかぶり、腰元のスイッチを入れた。その瞬間、二段式の機械式過給機が唸りを上げ、鎧に取り付けられたエンジンがアリッサの魔力を燃料として火を噴いた。

 その反作用により、アリッサの体は大きく跳ね飛ばされると同時に加速し、一瞬のうちで最高速に乗る。


 まるでパワードスーツのようなその機械鎧は、ブリューナス王国軍が正式採用している量産型の戦闘鎧『ヘンシェル130』である。キサラが無理を言ってシュテファーニエが用意したものであり、武器を全て破損しているアリッサを支援する物であった。


 アリッサは一度見逃したはずのポスナーゼン公爵の装甲車軍に瞬く間に追いつき、そして、一瞬のうちに抜き去った。相手も空を飛ぶアリッサを目撃してこちらがUターンするよりも早く、ルーフにつけられた機関銃を打ち放つ。

 アリッサはそれらをスピード任せで回避しながら低空を滑空し、再び抜き去る間際に複数の爆弾を投下し、すれ違う複数の車両を地面から弾き飛ばしていく。その爆裂に、巻き込まれ車両を率いていた何人もの人間が死亡するが、意外にもアリッサは平然としていた。


 それは、2000年前を旅した記憶により、単純に人殺しに慣れてしまったということもあるが、アリッサ自身が、これが殺し合いだと自覚しているからという理由もある。以前から、アリッサは、心と体を切り離せることができ、そのおかげで数々の修羅場を潜り抜けてこられた。


 だからこそ、心を空にして、敵を撃破することができる。心が痛まないわけではないが、瞳の光彩を失わせながらも、体を動かし続けることはできる。

 速度を緩め、地上に着陸し、横転した車両をバックウェポンである大剣で一刀両断し、這い出ようとした兵士たちを絶命させていくその姿は、かつての無邪気な姿とはかけ離れているように見える。


 そうして、ポスナーゼン公爵がどこにいるかを探っていると、炎上する車両からいつの間にか脱出していた兵士がアリッサに向けて小機関銃を乱射してくる。アリッサはそれをフルフェイスのヘルメットで一度受けるが、目立った外傷は見受けられず、即座に腰から爆弾を手の中に収め、相手へと頬り投げた。

 無線信管式のプラスチック爆弾は、高レベルのモンスターには目立った外傷は与えられない。だが、無力な人間一人殺すのならば、十二分に強力な兵器だ。直撃を避けられたとしても、荒れ狂う爆風に煽られ、内臓や眼底が傷つき、まともに動けなくなる。そして自動車の破片が腹部に刺さり、出血を伴えば、放っておいても息絶える。


 リリアルガルドとリーゼルフォンドの争いの最中で見せたアリッサの狂気の片鱗は、確かにここにあり、それは、殺し合いというフィールドで生かされる彼女の特技が開花した証であった。


 そんな彼女を恐れるように、横転した車両から這い出るようにしてポスナーゼン公爵が顔を出す。その姿は頭や脚から血を流し、夫人であるトピヤ・ポスナーゼンに肩を貸されてようやく動けるようなであり、どこからどう見ても決着を意味するように見えた。

 アリッサはそんな二人を視認して、大剣を振るいながらゆっくりと近づいていく。


 「ポスナーゼン公爵……降伏したらどうですか?」

 「この私が負けるとでも? こちらにはまだ軍が残っている。こんな奇襲染みた作戦など無意味……」

 「もしそれが、国家やレジスタンス運動ならば、首が挿げ替わるだけで、継続もしたんだろうけどさ……。残念だけど、これはあなたのお家の独立運動。あなたが死ねば、それで瓦解する」

 「ふん……小娘ごときに何がわかる……。戦争とは言葉ではないのだ。一度始まった以上、継続困難になるまで続くものだ」

 「あー……まぁ、確かに、普通の人ならば、『頭のいい高給取りは何をやっているのか』と非難するんだろうけどさ。私は、違うんだよね……」

 「ふん……少しはわかるなら早い……。この戦乱に乗じて、各地の少数民族が武力蜂起し、こちらに味方する……。もう、話し合いで解決できる段階など、通り過ぎているのだ!!」

 「—————で、それがどうかしたの?」

 「————————へ?」


 フルフェイスのヘルメットから漏れ出たアリッサの平坦な声に反応し、ポスナーゼン公爵は抜けたような声を上げた。

 それに乗じて、アリッサは相手を一撃で仕留めるべく、大剣を肩に構えた。


 「少数民族が武力蜂起したからと言って、貴方をここで殺さない理由にはならないでしょ?」

 「わかっているのか! 私というブレーキを失ったやつらは!」

 「ブレーキ? 自分が防波堤にでもなったつもりでいたの? 彼らを欲望のはけ口にしておいて?」

 「欲望のはけ口? 彼らの容姿を最大限有効活用してやっているだけではないか!」


 大手を切って、アリッサに宣言してみせたポスナーゼン公爵は後ろからの殺気に対して恐る恐る振り返る。すると、そこには般若のような顔をしているトピヤ・ポスナーゼン公爵夫人がそこにいた。彼女の燃えるような真っ赤な髪の間から生えている三角形の耳は、彼女が亜人である証である。


 「トピヤ……違うんだ、これは……」

 「何を言っているんだ、マクシミリアン……。わかっているとも……。お前が昔から亜人たちを奴隷としてエルドライヒに売りさばいていたことを……」

 「わかっ……て? なら、どうして……」

 「そうだなぁ……わからないのなら、お前のキモチイイいいと思えることをしてやろう……」

 「やめ————————ッ!!」


 ポスナーゼン公爵が何かを言い終えるよりも先に、トピヤ・ポスナーゼンが生み出した真っ黒な大剣が地面から突き出るように射出され、股下から頭部にかけてポスナーゼンを引き裂いた。

 血肉が飛び散る奇怪な音を奏で、血の雨は近くにいたトピヤのみならず、アリッサまで襲い掛かった。しかしながら、アリッサはヘルメットのバイザー越しにその雨を浴びながらも動じることなく、武器を構え続けた。


 「成る程……驚かないか。お前は予測していたのか、第三王女の私兵さん」

 「予測はしてなかったけど……途中から、貴女の表情が変わったから……」


 アリッサはフルフェイスのヘルメットを脱ぎ、立方体の欠片の一部に変化させて腹部の装甲にしまい込む。首を軽く振り、汗を拭えば、そこには、先ほどと変わらないトピヤがアメジストのようなきれいな瞳を輝かせ、アリッサを静かに見つめていた。


 「こいつは……戦乱に乗じて、我の村を襲い、そして、多くの同胞たちを虜囚とした」

 「だから、復讐したっていうの?」

 「あぁ……そのつもりだったんだがな……。終わってみると何とも虚しいものだ」

 「綺麗ごとを言うのならば、『仲間がそんなことを望んでいないからやめた方がいい』とまくし立てた方がいい?」

 「やめてくれ、虫唾が走る……。それに、これは、我が愉しいから行った復讐だ。そこに仲間の意志など介入しない」

 「そう……なら、復讐完遂者のあなたはどうするの?」

 「無論、足掻くとも……。世間体では、このゴミムシの妻……断罪は免れるべくもない」


 トピヤは血肉と化しているポスナーゼン公爵を踏みつける。そこには確かな覚悟があり、同時に自らの“死”を恐れてすらいないということが分かった。


 「させると思う?」

 「『する』、『しない』の問題ではない。もう、全てが遅いのだよ」


 アリッサが大剣を構え、一気に距離を詰めるが既に時は遅かった。まるで水蒸気が弾け飛ぶように、白煙が生まれ、同時にトピヤの足元で転がっていたポスナーゼン公爵の死体が急速に膨張していった。

 アリッサが大剣を横薙ぎに振るおうとも、沸騰するような血液が噴出するだけで、これと言ったダメージになっていない。それどころか、異臭により鼻と眼から涙があふれ始めたため、アリッサは咄嗟に後ろに飛び退き、距離を取らざる負えなくなってしまう。



 その瞬間、まるで何らかの旋律を奏でるかのような、フルートに似た音色が聞こえてきた。

その直後、まるで雷雲を呼び寄せたかのように、晴れていた空が一瞬のうちに曇り、同時に奇怪な咆哮が四方八方から鳴り響きだす。



 空を見上げれば、トピヤ・ポスナーゼンがワイバーンの背中に跨るようにこちらを見下ろしている。大地を揺らす音に驚いて、視界を地上へ向けてみれば、土煙と共に、多くのモンスターの影がこちらに迫ってきている。

 ただ、それらは最初に離脱するアリッサを襲うことはなく、膨張しながらも言語ではない何かをしゃべっているポスナーゼン公爵の肉塊に喰らいつき、引き裂いている。


 これが、彼女の望んだ復讐なのか、とアリッサは奥歯を噛みしめて怒りを飲み込みながらも、自らの役目に戻る。

 細かな部分は違っているが、ポスナーゼン公爵側がモンスターを呼び寄せ従わせる“魔笛”を使用するという大筋は繋がった。だから、あとは、それを使用した悪の権化であるトピヤ・ポスナーゼンを討ち取ればすべて丸く収まる。


 「あぁああああああああああああああああ!! もう!!」


 アリッサはある程度距離を置いたのち、近くにあった大木に拳を打ち付ける。ある程度力を弱めているため、大木が折れることも、アリッサの拳が傷つくこともないが、それでも、殴った以上に胸の奥底が痛かった。


 俯いている暇はない———————


 素早く、次の行動に移らなければ、今度はトピヤ・ポスナーゼンが引き連れているモンスターの群れが周辺の村々や、関係ない人たちが巻き込まれてしまう。

 それは、おそらく、トピヤ・ポスナーゼンが望んでいるシナリオでも、アリッサが望んでいるシナリオでもない……。どちらも、望んでいるのは平和であり、この内乱の幕引きだ——————


 それを理解しているからこそ、アリッサは再びフルフェイスのヘルメットかぶり直した。腰の飛行ブースターに魔力を回せば、アリッサの意志とは関係なしに、体を浮かし、そして上空まで加速してくれる。


 魔力を込めた大剣を振り回し、ワイバーンの群れを打ち落としていこうとも、アリッサの気が晴れることはない。

 これは、ポスナーゼン公爵が悪であったのならば丸く収まったという話でもない。


 「トピヤ・ポスナーゼン————————ッ!!」


 アリッサは咆哮しながら、トピヤを乗せているワイバーンの首を墜とす。だが、それよりも早くトピヤは付近に飛んでいたグリフォンに跨り、こちらを火球で迎撃してくる。


 「なぜ怒る? 悪が断罪されれば、世の中は平和を取り戻すではないか」

 「何が悪だ! 正義も悪も存在しない。あるのは、精神が自己防衛の為に張り付けた相手へのレッテルだけだ」

 「しかし、それにより、兵は心を保ち、民は救われる」

 「それが、悪役の末路だっていうのか、ふざけるな!」


 トピヤが何もない空間から生み出した漆黒の剣とアリッサの大剣が空中でぶつかり合う。その衝撃は近くを飛行していたワイバーンの体を乱気流により一時的に乱す。


 「もはや、単独では止まれぬ悔恨となっている。それは、第三王女に治められるものではない」

 「それでも、その幕引きは間違っている!!」

 「我の両手は既に、多くの血液で染まっている。死して償わねばなんとする」

 「それでも————————ッ!!」


 アリッサは互いに落下軌道になっているトピヤを持っている大剣の一振りで弾き飛ばす。トピヤは空中を翻りながら、飛んでいるグリフォンに着地し、再び上空へと戻った。アリッサはそれを追って滑空し、一気に距離を詰めていく。


 「それでも、貴女を“英雄”なんかにさせてるもんか!!」


 アリッサは空中で回転しながらグリフォンの体を大剣で両断した。トピヤはそれを、身を捻りながら回避し、靄のような足元の上に華麗に着地し、こちらを見て笑って見せる。


 それとほぼ同時に、アリッサを意図的に襲うようにしてワイバーンや怪鳥が次々と爪や牙を突き立てる。アリッサはそれらを大剣で薙ぎ払っていくが、数の多さに押され、徐々に攻撃を受けていく。それでも固い装甲に阻まれ、対したダメージにはならない。


 アリッサは群がる飛行生物を一掃するために、大剣に魔力を回し、一気に薙ぎ払う。すると、生み出した魔力の波がモンスターの群れを散り散りにさせ、再びトピヤへの視界が開ける。だが、そこで見えたのは高位魔術の詠唱を終えたトピヤの姿であった。

 アリッサは咄嗟に動こうとするが、大剣を振り回していた直後の硬直により、体を動かすことがままならない。


 結果、全てを薙ぎ払うような巨大な炎剣がアリッサに襲い掛かる。それでもアリッサはすんでのところで大剣をパージして魔術障壁を展開することで、直撃を免れた。だが、付け焼刃の魔術障壁など易々と砕かれ、アリッサは地上へと叩き落とされることとなった。


 唯一の救いは、制御不能に陥った場合の緊急浮遊装置が起動し、落下の衝撃を緩めてくれたことであろう。

 それでも、擦り付けるように何度も地面を転がり、アリッサの体はようやく停止した。転がった反動でヘルメットは砕け、バイザーは意味をなしていない。

 幸いなことに、飛行ユニットは無事であり、継戦は可能であるように見える。アリッサはそれを確認して、口元の血液を拭いながらもゆっくりと立ち上がる。

 メインウェポンは投棄したため、既にないが、問題にはならない。


 アリッサは腰の装甲の隙間に手を入れ、中にあるマジックポーチから木製の箱を取り出し、開け放つ。そして、何の躊躇もなく、中に入っていた“賢者の腕輪”に自らの左腕に通した。

 通した瞬間に腕輪は手首の位置で縮まり、簡単に抜けないように変化する。使い方は前日の夜に練習したため、わかっている。


 アリッサは腕輪に魔力を通し、武器を形作る。“賢者の腕輪”は魔術杖であると同時に、その役割は、装着者の望んだ形に魔力を武器に変化させること。


 アリッサが静かにそして深く息を吸い込むと同時に、トピヤに命じられた地上にいるモンスターたちが大地を踏みしめながらアリッサに迫った。アリッサはそれらに動じることなく、薄桃色の瞳を見開いた。


 瞬間———————


 靄のような魔力は片刃の直剣となり、襲い掛かる魔物たちを薙ぎ払う。血しぶきを一心に浴びながらもう一度刃を振るえば、巨大な蛇のようなモンスターの体は容易く両断され、刃こぼれ一つすることはない。

 アリッサの手の中にある片刃の直剣は金属特有の光沢はなく、むしろ純粋な魔力の塊の証であるかのように白色に染まっていた。本質的には、魔石を暴走させたときの武器の感覚に近いが、こちらはアリッサの魔力を喰らい尽くすような素振りはなく、安定していた。


 アリッサはそれを確認して、地上にいるモンスターを無視して大地を踏みしめて、もう一度空へと舞い戻る。上昇中に一度地上を見てみれば、ポスナーゼン公爵軍とブリューナス王国軍が互いに手を合わせながら、大量のモンスターたちの対処にあたっている。この分であれば、数時間後には殲滅されることがすぐにわかった。それを理解しているからこそ、アリッサは急がなくてはならなかった。



 上昇中に、大量のモンスターの群れが襲い掛かるが、アリッサは止まらない。即座に賢者の腕輪の形を巨大なライフルに変え、引き金を引いた。それは、ライフルの形を取っているが、実弾は発射されることなく、代わりに放たれたのはアリッサの魔力を元にして放たれた熱線であった。


 熱線はモンスター一匹で止まることなく、直線状にいた全てを焼き払っていった。多少、アリッサの照準が定まっていなくとも、相手の数が多すぎるため、引き金を引けば命中する。

 そんなアリッサの熱線から逃れるように、ワイバーンに跨っているトピヤは上空でアクロバットな急旋回を繰り返す。アリッサは追いすがるように腰の飛行ユニットに魔力を注ぎながら熱線を放つが、元々、スナイピングが得意ではないアリッサの攻撃は一度たりとも命中しない。


 「バカげた魔力量だな……あれだけ魔術を行使しておいて、まだ衰えないか……」

 「ご生憎様、貴女を殴り飛ばすまで止まるつもりはないんでね……」

 「そうか……ならば、その希望を……断つ————————ッ!!」


 トピヤは時折吹いていた“魔笛”を握り締める。そして、それを追いすがるアリッサから逃げながら自分の胸元に突き立てた。

 その瞬間、アーティファクトに込められた無尽蔵のマナが暴れ出し、黒い旋風を伴ってアリッサもろともに薙ぎ払った。

 アリッサが体勢を立て直し、空を見上げたその時、雷雲に紛れるように、誰かがそこに立っていた。


 ありもしない足元の黒い靄を踏みしめ、黒いドレスに身を包んだトピヤの柔肌にはまとわりつくように真っ黒な影が食い込んでいる。それらは徐々に結晶化し、赤黒い炎を伴ってトピヤ・ポスナーゼンという人間を喰らい始める。


 アメジストのような瞳を黒い結晶で潰されてなお、トピヤは真っ赤な髪を揺らしてこちらに微笑んでくる。

 アリッサがそれに気づいた瞬間、上空には数えきれないほどの魔方陣が多重に展開され、そこにいるアリッサやモンスターを関係なく薙ぎ払い始める。

 アリッサはそれらから逃れるように急速離脱をするが、その過程で視界にとらえたのは、魔方陣から生み出された光すらも通さない触手が、モンスターの群れを文字通り喰らっている光景だった。


 そうして、アリッサが完全に離脱を終え、振り返ると同時に、黒い触手たちは本体を魔方陣から引きずり出し、地上に落下する。

 地鳴りと土煙と共に、地上にいる生物たちは否応なく、伸ばされた触手にからめとられ、喰われていく。液体のように軟体を持つその生物はうねりながらも徐々に体をこちらに向けている気がした。


 アリッサが生み出した片刃の直剣を握り締めると、その黒く巨大な液体生物の上に立つ、禍々しい姿のトピヤと眼があった気がした——————



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