第23話 再び月へ
女神ンディアと敵対した事で塔の機能が使えないのではという懸念があったが、それは杞憂だった。
最初の時の様に女神こそ姿を現さなかったものの、塔内にある例の立ち昇る光に入った途端結界に包まれ俺達は月へと送られる。
宇宙空間を通り。
途中で重量が逆転して俺達は月に到着する。
そこには――
「あら、世界の終りまで震えていればいいのに……わざわざここに戻って来るなんて。これだから正義の味方気取りのお馬鹿さん達は笑えるのよねぇ」
フィーナの姿をした女神ンディアと――
「お母さまの言う通りです。無駄な野心で態々寿命を減らすなんて、滑稽極まりありません」
――ティアの姿があった。
「リリアが全てをかけたってのに。くそったれが……」
奴は死んでいなかったのだ。
俺はその腹立たしさと悔しさから、歯ぎしりする。
「ざーんねんでした。私はこの通り、ぴんぴんしてますよ」
ティアが顔の横で両手を開け、おどける様な仕草で睨みつける俺を嘲笑う。
「アドル。気持ちは分かる。だが平常心を失うのは危険だ」
「ああ、分かってる」
レアの忠告を受け、俺は深呼吸をして心を落ち着かせた。
怒りは判断力を鈍らせる。
今はそんな物にかられている場合じゃない。
――俺達は負けられないんだ。
死んだ仲間達のため。
世界を守るため。
そしてなにより、次につながるチャンスを残してくれたリリアの気持ちに応える為にも。
例え無茶だろと、必ず勝ってみせる。
「女神に加えティアも同時に……かなり厳しい戦いになりそうですね」
「あらあら、安心していいわよ。折角勇気を振り絞って戻って来てくれたんだもの。貴方達の相手は、私手ずからしてあげるわ。ティアは下がってなさい。手出ししちゃだめよ」
「流石お母様。なんてお優しいんでしょう」
「ふふふ。こう見えて私、女神で、す、か、ら」
「ええ、まさに至高の女神様です。では、私はお母さまの邪魔にならないよう下がっておきますね」
女神ンディアの命令で、ティアが後ろに下がった。
同時に相手にせずに済むと言いたい所だが、この糞女共が宣言通り行動するとは到底思えない。
隙あらば襲ってくると考えておいた方がいいだろう。
「にしても……随分と厳つい感じの剣を手にしてるわねぇ」。」
ンディアは一目で俺の持つ剣の力を見抜いた様だ。
それだけこの剣に込められた力が大きい証拠とも言える。
「ああ、これは仲間が命を賭けてまで作っててくれた剣だ」
テッラとベリーの命が宿った剣。
此れこそが俺達の切り札だ。
が、奴は――
「みたところ、グヴェルの力が宿ってるみたいね。その剣があるから、私を倒せると踏んで意気揚々と月に戻って来たみたいだけど。ふふ……悪いけど、その程度じゃ私には勝てないわよ。なんなら、本気を出す必要すらないわ」
馬鹿にした様に鼻で笑う。
「そうかよ。じゃあ本気を出さないまま死ね」
俺は手にした剣の切っ先を奴に向け、【
出し押しみなし。
最初っから全力全開だ。
負荷による時間制限など気にする必要はない。
……剣の力を含めても、それでも相手の方が強いのは分かりきっているからな。
なら油断してくれている隙に一気に決める。
それが唯一の勝機だ。
「行くぞ!」
「ああ!フィーナの仇を取らせて貰う!」
「聖女として、世界を救わせていただきます」
世界の運命がかかった最終決戦。
その幕が切って落とされた。
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