第四章 攻略
プロローグ
「どうされたんですか?」
ダンジョン最奥で、フィーナ――の姿をした女神ンディア――が黙って考え事をしていた。
普段は顔を見るたび嫌味を口にして来る彼女が、黙っている事に不気味さを覚えたアミュンは思い切って尋ねてみる。
「あの力の事を考えてたのよ」
「アドルが皇帝をボコボコにしたあれですか?確かに凄い力でした。私が助けなかったら、皇帝は確実に死んでましたね」
もしアミュンが介入しなければ、皇帝は間違いなく死んでいただろう。
自分はきちんと仕事したのだと、彼女はアピールする。
「自分のお陰だって言いたいの?」
「いえ、そう言う訳ではないですけど」
――必死で働いたのに、その功績が認められないのではたまった物ではない。
アミュンの濁った目は、それを明確に語っていた。
実際、彼女はかなり危険な橋を渡っている。
一歩間違えれば、皇帝諸共殺されていた可能性は高かっただろう。
その分の見返りや評価を彼女が求めたとしても、それは当然の主張とも言える。
「ふふふ、そうね。貴方はちゃんと仕事をしてくれたわ。御褒美に、私が復活した後プレゼントを上げるわ。貴方に相応しい、最高のプレゼントを……ね」
「本当ですか!?」
アミュンは褒美という言葉に食らいつく。
神が自分に与える褒美――それはきっと凄い物なのだと。
だが、冷静に女神の顔を見ていれば気づけたはずだった。
笑顔であるンディアの瞳が、侮蔑を含んだ残酷な光を宿していた事に。
もっとも、それに彼女が気づけていたとしても、結果は変わらなかったかもしれないが。
「ふふふ。楽しみにしてなさい」
「はい!」
その先に待つ、残酷な未来に気付きもしないアミュンを見てンディアは目を細める。
それを口にしたくなる誘惑を断ち切り、女神は命令を下した。
「そうそう。貴方にまた仕事を頼みたいんだけど」
「なんでしょうか?」
「これをリリアに届けて欲しいのよ」
差し出す女神の手の中には、暗い紫色の光が宿った玉が握られていた。
アミュンはそれを受け取り、繁々と眺める。
「これは一体?」
「龍玉のレプリカよ」
リリアはアドルならば半年以内に力を物にすると考えていた様だが、女神はそれを楽観的に傍観するつもりはなかった。
「所詮レプリカだからオリジナル程の力はないけど、これを使えば、アドルの寿命をある程度伸ばす事が出来るはずよ」
女神の支援。
それは
バレずに使う術がない以上、その行為は
――だが、そもそもアドルの寿命が極端に減ったのはグヴェルの
リスクはあっても、それを上げれば黙らせる事は出来る。
先にズルをしたのは向こうなのだから。
女神はアミュンを遣いとして場をコントロールしようとしていた
とは言え――
「ただ、使うのは最後の最後。どうしようも無くなった時だけだって、伝えておいて頂戴」
女神も不必要な
彼女はあくまでも、それが保険である事を強調する。
「分かりました」
アミュンは女神からの命令を実行すべく、直ぐにその場を後にした。
「ふふふ……それにしてもグヴェル。私への嫌がらせだったんでしょうけど、墓穴を掘ったわね」
アドルが力をある程度使いこなせる様になれば、ンディアが想定していたよりも遥かに早く、しかも確実に、彼女の勝利でゲームを終わらせる事が出来る状態だった。
――本来ならば、女神を滅する為に授けられたその力。
それがンディアのゲームクリアに貢献するのは、皮肉な話である。
「きっと今頃、悔しそうにしてるでしょうね」
グヴェルの顔を思い浮かべ、女神は楽し気に笑う。
自らの勝利を確信し。
だが彼女は知らない。
自らに待ち受ける、残酷な
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