第27話 連撃

「おぉん!」


ベリーの小さな角から雷が放たれ、巨体を誇るエリアボス2体を直撃する。


鬼人兄弟ダブルオーガ

2体1対のエリアボスであり、通常のオーガを二回りほど大きくしたパワータイプのボスだ。


「ナイスだ!」


雷のダメージと、追加効果の感電で2体の動きが止まる。

その一瞬の隙を突き、俺と分身2体で両オーガに同時に攻撃を仕掛けた。


ダブルオーガは同時に倒さなければならない。

片一方を倒しても、もう片一方が生存していると蘇生を行うためだ。


「「「マジック!フルバースト!」」」


間合いを詰め、最強の一撃を放つ。

本体は左のオーガを狙い、分身2体は右を。


動きに不備はない。

これもリリアとの特訓のお陰だ。


「ぐおおおおぉぉぉ!!」


動けないオーガ達は、俺と分身達の攻撃を受けて吹き飛んだ。

ダメージは相当な物だろう。

だが倒すまでには至っていない。


もう一発!


「ダブルアクティブ!」


俺は吹っ飛んだオーガとの間合いを詰めつつ、スキルを発動させる。

俺の物ではない。

手にした剣のスキルを、だ。


「マジック!フルバースト!」


「があああぁぁぁぁ!!!」


俺と分身から再度放たれる最強の一撃。

それを受け、今度こそ2体のオーガは消滅する。


2重発動ダブルアクティブ

それはオリハルコンの剣――聖剣アドラーが宿すスキルだった。

直前に発動した攻撃スキルを、無消費でもう一度発動させるという効果を持っている。


「連打できるってのは、マジで便利だな」


本来マジックフルバーストは一発限りの大技だ。

魔力をすべて放出するという仕様のため、連打する事は出来ない。

だがダブルアクティブを使いさえすればそれが可能になる。


最強技の2連打。

それは言ってしまえば、火力が2倍になったに等しい事だった。


……まあ2発とも当たれば、という前提ではあるが。


「想像以上に楽勝だな。これもベリーが動きを封じてくれるお陰だ」


ベリーの放つ雷にはダメージだけでなく、命中した相手を痺れさせる効果があった。

これで一時的に動きを止め――鈍らせ――て、最強火力を叩き込む。

この戦法で、ダブルオーガの前に戦ったエリアボスも同様に瞬殺している。


因みに、虎の子の【超越種の咆哮ドラゴン・ハウリング】はどうやらエリアボス系には通用しない様だ。

オーガとその前に倒した魔物共に、完全な行動不能に対する耐性を持っていた。


恐らくこれは、エリアボスの殆どが備えている能力と考えた方がいいだろう。


まあもし効いたら、レベルで勝りさえすれば簡単にハメ殺し出来てしまうからな。

当たり前と言えば当たり前の耐性なのかもしれない。


「うわぉ!」


駆け寄って来た頭を撫でてやると、ベリーは嬉しそうに吠えた。

大きくなると化け物みたいな体格になってしまうが、子供である今はまるで角の生えた犬だ。

かなり可愛らしい。


「今回はあたりですねぇ」


リリアが超レアドロップを拾い上げ、にんまりと笑う。

その前のは残念ながら外れだったが――それでもレアドロップなので高値で売れる――今回はあたりだった様だ。


「小手……だよな?」


ダブルオーガが落としたのは、赤黒い不気味な小手だった訳だが……

何と言うか、見るからにやばそうな雰囲気を醸し出している。


付けても大丈夫だろうか?

まさか呪いが増えたりしないよな?


「オーガパワーって名前の小手ですねぇ。身に着けると、力が大幅に上がるみたいです。大当たりですよぉ」


「おお、そいつはスゲェな」


力が上がる小手など聞いた事もない。

流石は超レアドロップだ。


「ただしぃ、身に着けている間は苦痛とダメージを受け続けるみたいですが」


「は?」


苦痛とダメージ?

なんだそりゃ。

冗談抜きで呪われてるんじゃないか、それ?


「痛みとダメージは、リジェネ自動回復痛覚鈍化レジストペインでどうにでもなると思うんで。まあ試しに嵌めてみてくださいな」


軽く言ってくれる。

とは言え、試さず放置するってのは選択肢としてはない。

俺は黙ってリリアから小手を受け取り、手に嵌める。


「でかいな……っと」


少しぶかぶかだったその小手は、嵌めた瞬間手に吸い付く様にフィットした。

と同時に、小さな針で刺される様な感覚が両腕に広がる。


「まあ使えそうだ」


少々ちくちくしてはいるが、大きく気になる程ではなかった。

痛覚鈍化レジストペインなしだときつそうではあるが、かかっている分には問題なく使えそうだ。


試しに剣を振ってみると、明らかに勢いが違う。


「相当上がるな」


間違いなく大当たりだ。

こいつはいい物が手に入った。


「じゃ、ラストの蟻さんの所に行きましょうか」


「ああ、上がったパワーでぶった切ってやるぜ」


残すは女王蟻クィーンアントのみ。

中層で最強と呼ばれるエリアボスであり、こいつだけは発狂バーサークモードなしでも眷属召喚を行って来るタイプだった。


此方は少数なので本来なら面倒な相手になるのだが、俺には【超越種の咆哮ドラゴン・ハウリング】がある。

エリアボス自体には効かなくとも、流石に呼び出された眷属には有効なはず。

まあ仮に【超越種の咆哮ドラゴン・ハウリング】効かなかったとしても、その場合はリリアの結界で分断して貰えればいいだけだ。


雑魚の動きを封じ、本体をベリーの雷で痺れさせ一気に押し切る。

やる事はこれまでと変わらない。


「次もレアアイテムが出るといいですねぇ」


「全くだ」


俺達は女王蟻クィーンアントを狩る為、奥へと進む。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る