第157話 VF750F

 それをYに言うと「わかった。じゃあ・・・」と、赤いシロッコ+ANSAマフラーの低音を響かせ


練馬へ帰って行った。


Yは、まあ高等遊民なのだろうか(?)。暇なので、付き合ってくれるらしい。


このYと、お父さんのシロッコではよくそこらを走った。


時々、あの・・・・麻薬組織から奪還した女が住んでいる保谷まで

ドライブしたことがある。深夜に、である。


行っても、会うワケでもない。ただ、想い出に浸りたいのだろう。


想い出は美しいのだろう。



出会った頃のその子は、可愛かったとか・・・聞く。




そりゃ、若い頃は可愛いだろうけど(^^)。



段々、それからの人生で顔かたちなんて変わるし。



切花みたいに、常に新しいのに変えたほうがいい・・・と、後で思ったのか

処女探し(おっさん週刊誌みたいだが)に変えたらしい。




「処女なんてそんなにいいもんかねぇ」と・・・俺は思ったが(笑)。




手出したら、ずっと面倒見なきゃ。ねぇ。





まあ、それはさておき。俺は「手紙でも書けば?夜、暇だったら」と言った。



近くまでドライブしたって深夜じゃしょうがないしーーーー。




迷惑なだけだよ。ホント。






まあ、そんな暇あったら勉強しなさいよ。受験するんだから。

とは思った。





それはさておき。この朝の俺は疲れていたので家に帰って寝た。


ふるーい、市営住宅で

田んぼの中で静かだったから、昼間もよく寝られた。




夜もまた、アルバイトで22時まで。



気もそぞろ(笑)。


それが終わってから、また、チャッピィでYの家に行って。

今度はVFに乗る。



VF750Fは、結構画期的なバイクだったりする。

16インチの前輪なので、ひょいひょいと曲がる750。

軽快である。




エンジンもトルクがあり・・・・オートバイ雑誌でシャシ・ダイナモに掛けたら

86psあったそうだ(カタログ72ps)。

後輪で86だと、エンジン単体だともっとあった訳。


確かにそんな感じで、他の750とは全然違うパワー感。


やっぱり深夜なので、しずかーにバイクカバーを外して、自分のチャッピィに掛けておいた



軒下だけど。


チャッピィのハンドルロックが掛かっているかどうか、見て。

キーをバッグにしまった。


キーを落っことすと大変なので(笑)バッグに入れたり。

ジーンズだとまあ、落ちないけど。


それで、プラスチックのカバーがついてるホンダのキーを出して。

金属板にモールドされているホンダのキーは堅牢だと思った。


それを、ハンドルのところにあるキーホールに入れて。

かちり。と、右に回す。


ホンダらしい、キーの回り方だと思う。



軽快な感じ。



メインスタンドを降ろすと、ゆらり。

重心が高い感じ。



跨っても、シートが高い感じ。

その辺りが、なんとなく・・・・Yのお父さんが「のりにくい」と思う所以だろうか。





セルを回して。チョークの場所がちょっとわかりづらかったので

アクセルを呷って回転を維持する。

水冷だけど、割と冷えていても走る。


キャブだしね(^^)。



アクセルコントロールでなんとかなる。


EFIだと、冷えてる時は杓子定規に濃い燃料になるから

あっためないと走りにくいけど。




でも、VFはなーんとなく・・・エンジンの回転が。びょーん・・・って。

掴み難い。

アクセルを開けても。閉じても。

あの、バックトルクリミッターがあるので尚更、アクセル閉じた時は

反応がヘン。


がこん、がこん・・・・って。




あんなのなくても、アクセルをちょっと開けとけばいいので。






堤防沿いの道を、ゆーっくり。プラグがかぶらないように

アクセルをあんまり開けないで回転だけ上げて、暖めて。

橋を渡るころには水温も少し上がっている。


交差点を曲がろうとすると、ぐらっ、と傾く。


エンジンが重たいの。高い位置にあるし。

で、前輪が16インチだから軽いので、なんか、どこまでいけるんだか

解らない。


VTによく似てるけど。


気が付くと転んでるんじゃなかろうか(笑)。とか思いながら

東名高速へ昇る。



合流のカーブで。

リーンウィズのまま、アクセルをガバっと開けて。


でも、なんとなく後輪が滑る感じがないので・・・・ちょっと不気味。



速いんだろうけど、乗ってて怖い。




がばっ、とハングオンして、丁度いい。




直線になって、ガバ、と全開にしても

V4だから、L4みたいに吹っ飛んでいく感じがない。

とろろろ・・・・って、回転が上がる。

スピードは乗るけれど。



RZVは、V4とは名ばかりの(笑)2気筒×2だから

感じは全然違うけど。




VFは、ほんとにクランク軸が1本のV4、4st。

なーんか、レーサーっぽくない。



そういえばデザインもツアラーだもんね。よく見ると(^^)。


100+くらいで走っててもストレスないけど、あんまり・・・面白い感じは無かった。



「これは、お父さんが売っちゃった気持が解るな」と。


それまでお父さんはCBだったから。L4の方が解り易かったのだろう。


とか思いながら、暗い高速道路を・・・なんとなくのんびり走った。

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