第133話 LB2000GT



俺が入ったら辞めるつもりだった、らしい正彦は

さっぱり、辞めていった。


当時は、新卒は「研修」と言って

4/1入社でも、3月から働かされていたので(笑)


6月頃のことだったか。


平日の午前。事務所には俺とひろみだけで。


配達員の正彦は、タウンエースのトラックで帰ってきて

ひろみを倉庫に呼び出して。



次の日から来なくなった。



まあ、このひろみはサカリだったので・・・。



外から丸見えの応接ソファに

昼、仰向けで寝ていたり(笑)して


営業の佐藤が、その上に覆いかぶさっても


「重いよ」と言うだけで


逃げも騒ぎもしなかった(笑)。



秋元、佐藤も・・まあ、アナ兄弟だったわけだが(笑)。


正彦は、どういうわけかマジメに恋したのだろう。



「なーんで、あんなダッチワイフみたいな女に」(笑)と

俺は思うんだが。



まあ、ダッチワイフも居たほうがいい場合もあるが・・・(^^;



ひろみは、風俗に行ったほうが稼げるのになぁと思った。



気のいい女だから、いいサービス業の人になるだろう。



江戸時代からそうで、そういう人種もいるのだ。




まあ、そのひろみは・・・どーいうわけか

俺の事も掌中に収めようとした。


でもまあ、俺はそんな完全肉質声も出る(笑)みたいなものに興味は無かったから

アナブラザーになる事も無かった。


それは道理で、そんな女を妻にするなど考えられないから、で・・・




それが、かえってひろみの征服欲(?)を刺激するようで・・・・。



俺が、あちこちのスタンド・ガールと仲がいいのを知ったひろみは


そのスタンド・ガールたちに嫉妬して。


それで、秋元を使って千秋を陵辱しようと画策し

千秋と同じスタンドのボーイが俺に「守ってあげて」と言った、と言う事らしい。



千秋にも危機感はあったのかもしれないが、それは若い女の子には

誰にでもある事だし。



それで俺を利用したのでは、無さそうだったが。





俺が倉庫で片付けをしていると、事務所の電話が外線をコールしていて。


ひろみが電話してるのかな、と思って。



夏だから、ドアが開いてて声が聞こえる。


ひろみは千秋に「千秋、それじゃ、わたしたちはこれまでね」と

なんだか、低い声を出していた。




俺と友達なのが気に入らないと言うことらしい。


ひろみに興味がないのに(笑)。






こういう女ってどーしようもないなぁ(笑)。




部長の娘だしなぁ(笑)




8月のお盆休みの時、ひろみは

新島だかに行って、一週間経っても戻ってこなかった。



死んだのかと思った(笑)。



新島って当時は、有名で


朝、海岸に行くとクラゲのようにラテックスが浮いていると言う(笑)。



二週間経って、ようやく戻ってきて。




「マックロネシア人になりたかったんだもーん」と。

謝った。(その形容は、なんだったか雑誌の造語)。



秋元が「なにが真っ黒ねしあだ、バカ!」と。笑っていた。



そんなふうな、まあ、ろくでなしだが気のいい女である。

正彦はそのあたりが好きなのかもしれなかった。



頭が幼稚で、体が大人。


今も昔も、一定の人気があるタイプ(笑)。









終身雇用ってのは、良くない事もあって

こういう奴らでも年功で給料が上がるし、首にもならない。


その利益分を、まあ、今は出資者(多くが海外の)が取っているわけだが(笑)



それが崩れる、15年前の話である。




オートバイも、穏やかな時代だったから個性的な設計も沢山あった。


XSで言えば、フロントのブレーキは、シングルキャリパーなのに

スイング式、と言う不思議な設計である。


普通は、ピストンの反対側のキャリパがスライドしてディスクを挟むのだが


これは、ピンで固定されたキャリパ自体がスイングして、ディスクを挟むと言う

面白い構造。

スライドピンが膠着することは無くなるが、パッドがキチンと当たり続けるか?が

難しい。



あんまり効かなかった(笑)が、アメリカンだし。


3気筒のエンジンも、エラスティックマウントと言う

板バネで、フローティングするマウント。

エンジンがぶるぶる震えるが、トルクを掛ける方向には曲がらない。


板バネだから、直交方向には曲がらない訳だ。


同じ頃に出たRZの、オーソゴナル(直交)マウントと考え方は同じである。


どれも、アイデアは面白いが・・・・メリット|デメリットをあまり考えて居ない(笑)感じ。


そこが、楽器屋さんのバイクである。



どちらかと言うと、デザインと雰囲気を楽しむ・・・。

欠陥も多い。


女の子だったらルックス、雰囲気がステキだけど

一生懸命だけど、失敗の多い子。



・・・そういうのも魅力的である(笑)。






ここは、ホワイト企業なので

新人研修も、親会社、タイヤメーカーの研修所で

外部の講師を呼んで、きちんとした授業をしたし


俺が、カーリーヘアーのロングでも


それを咎めようとはしない。

女性社長だった事もあるが「似合ってればいい」と言う

賢明な判断であった。


短髪、ネクタイでも不遜な、信用の置けない、親しみのない・・・

秋元みたいな奴は、セールスも伸びなかった(笑)。から。


そりゃそうで、目つきの悪い、セコそうな奴からモノを買う人もいない。


反対に、かわいいスタンド・ガールの幸せを守る(?)俺には

オーダーも来るようになる。



まあ、そういうもんだよね。セールスも心である。



今もそうだけど、上辺だけマジメでも、誰にだって判ってしまうものだ。






一週間、湘南の研修所に泊まって

友達のように、新卒者たちが遊んだり、話したり。


砂浜で叫んだり(笑)まあ、青春ドラマである。



ブラック企業だと、これが違っていて

密室で、ひとりを全員で罵倒する・・・なんてのがあったらしい。


もし、俺だったら


密室なら、これ幸いと全員ぶっ飛ばしてやるが。

カンフーで。(笑)。



幸い、そういうメにあわないこの時代だった。



研修所の売店のおばちゃんが、カーリーヘアの俺を見て

「あなた男の子?まあ、かわいい」と。にこにこされて

困ってしまったりする。


昔っから、よく女の子に間違えられたので

幼稚園の頃から、男の友達は少なかった・・・ので

別に、なんとも思わなかったけど。




この研修には、首都圏からみんな、新卒が来るのだけど

面白い奴も来た。


セリカLB2000GTの、フェンダーを切ってオーバーフェンダー付けて

60タイヤ(当時は禁止)おまけに他社のタイヤ・ホイールで

堂々と来る奴(笑)。とか。



気のいい奴で。自己紹介の時も


「えーと、横浜営業所石川です。こないだねー。フェンダーたたっきって

オーバーフェンダーにしたら、所長さんに叱られちゃってねー」


なんて言う、面白い。アフロヘアーをちりちりにしてる

クルマ大好きな石川。


こいつとは気があった(笑)。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る