第113話 DX7-2

頼まれ仕事だったから、長く居るつもりは無かったけど・・・・。


由美ちゃんたちが可愛かったし(^^)。


帰郷した女子大生が夏休みバイトに来てて、そのうち2人と仲良くなって。


ひとりは、お嬢様タイプのコで、ピアノが好きな大人しい、綺麗な子で

朝と夜、休憩室兼ロッカーで、会うくらいだけど


微笑みが可愛い子で、俺も音楽が好きだし

この頃、シンセサイザーを弾いていたから、いろいろ、そのお話をしたりして。


「夜のヒットスタジオで、スティービーが、「さくらさくら」を弾いたでしょ、あの音が

DX7-2のね、モノフォニック風サウンドで。弾いた音と次の音がポルタメントするのね。」


なんて、ハナシをしてもよくわかんないー。って言うので



隣の楽器屋さんに、休憩時間に弾きに行ったりして。



大学はどこだったかな、よく覚えてないけど

どっかの女子大だった。




その子の少しアトに入ってきたのは、なんか大ぶりの

ふんわりした子で。





のーんびり、どでーん、としている子だった。



早稲田に行ってる子で、普段は沼袋にアパート借りてるんだけど

夏休みだから帰ってきてるんです、とか・・・


きっちりしてる子。



髪は長くて、ウェーブ掛けてて。




おとなしい、文科系の子で



本屋さんにアルバイトに来て。




この子を・・・その、窪田くんが好きになっちゃって。



なんか、ひたむきだった。




別に俺は、気にもしていなかったけど・・・・。



なんとなく、この舞ちゃんが、助けを求めてる感じ。



遠くから、なんとなく見てたり。

窪田くんが見てると、俺の方に来て、楽しそうにしてたり。



「あのオートバイ、なんていうんですか?」




とか。



SR400って書いてあるのに(笑)。




俺も「うん、SR400。高校生の頃買って。今はもう一台XSがあって」


とか言うと



舞ちゃんは「いいですねーオートバイ。乗ってみたいなー」とか言うから



「免許とれば?」と言うと



首ふって。「後ろでいいです。」



俺は「そっかぁ。じゃ、アトでね」と・・・・。


バイトの帰りに送ってあげたりして。




窪田くんは、心に漣(笑)。



ある日・・・・ちょっと怖い顔で「後で話したいんだけど」と言うから



「今でいいじゃん」と言うと・・・。




「ここじゃ」と言うから・・・




「あ、じゃー、あの・・・・帰り道にあるロイヤルホストで」とか言った。








俺は、その日はチャッピイで来てたので


ノーヘル。



当時は、ノーヘルOKだったの。




ぶいー・・・・・かこん。


2速に上がる18km/h(^^)。


ゆっくり走って。



ロイヤルホストへ。




窪田くんは8時頃来て。



ちょっと、ヤギさんに似てる(^^)。




俺は「話って、あの子のことだろ」



窪田くんは「どっちが好きなんだ?」




俺は「どっちも好きってことないよ」



と言うと、カレはにっこり「解った」と、それだけ。



珈琲飲んで帰った。






翌日。


舞ちゃんは、悲しそうに俺を見る。


遠くから。


なんだか解らない。




けど。なんとなく解った。



窪田くんは、舞ちゃんに告白して。


なんとなく、俺のことが話題になったんだろうな、くらいの感じ、かな。



舞ちゃんは、俺が好意を持っていると思ったのかもしれないなー、なんて。




でも、好きかキライか、なんて単純に言えないね、そんなの。




舞ちゃんも若いから、それが解らなかったのだろうなー。なんて思った。



でも、それを舞ちゃんに言う窪田くんもちょっとなぁ、と思って

本屋さんのバイトを、辞めた。


舞ちゃんが聞いたのかもしれないけど(笑)窪田くんに。



でもまあ、窪田くんも舞ちゃんには振られたらしい。


RZ250に乗ってたけど、タンデムしてなかったもーん(笑)。



なんて。




楽しい楽しい、バイト生活だった。

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