21-2 星の光の魔力が星苺になる
ルール説明──インストを始めようとした
わたしの前には、小さなキノコの妖精。ぴょこんとキノコの頭を下げてから、わたしに六枚のカードを手渡してきた。
そのカードは、第三資料室で見せてもらった妖精たちのカードと同じものみたいだった。
もう一体、小さなねずみのような姿の妖精もやってきた。そして
「どうやら、今回は俺もプレイヤーみたいだね。
わたしは
こうやって
でも、こうやって対戦するのだって、最近はそこまで嫌じゃない。
「いつも通り、手加減はしないからね」
だって
わたしは
だからつまり──
ボードゲームでこんな気持ちになるのが、自分でも不思議なのだけど。
「わたしも、勝てるように頑張る」
わたしの言葉に、
小さな妖精たちが持ってきてくれたものは他にもあった。
大きな紙をいくつ折りかに畳んだもの。広げたら、どうやらこの森の地図みたいだった。
地図のところどころにぼんやりと光る場所がある。不思議なことに、その光は星の光のように紙の上で瞬いていた。そして光の隣には「1」とか「2」とか数字が書かれている。
「じゃあ、インスト……って思ったんだけど。このゲーム、最初に説明するより一回遊んでみた方がわかりやすいと思うんだよね。一プレイ短いし。一回遊んで雰囲気を掴んでからまた遊ぶのはどう?」
「えっと……わたしはよくわからないから、
「このゲームはさっきも言ったけど、
「大丈夫」
わたしが頷くと、
「これは、今から収穫できる星苺の場所を示してるんだと思う。数字は、その順番だね。一から五まで、五回の収穫のチャンスがある。一回目の場所は三つ光ってるから、三つの星苺が手に入る。まずはそこまで行ってみよう。えっと、こっちかな」
それで、地図と六枚のカードを手に、
暗い夜の森だけど、今は妖精になっているせいか、怖くはなかった。木々の隙間から星が降ってきそうなほど明るいし、周囲には妖精たちがたくさんいて、その密やかなお喋りの声が聞こえてきて賑やかだ。
わたしと
「ここだ。あそこ、見て」
やがて、
そこには、ふわふわとした光が三つ、見えていた。
「あれが星苺だ。あれを
「取り合うってどうやって?」
首を傾けて
「このカードを使って。カード、というか、カードに描かれた妖精の力を借りてって言った方が良いのかな、世界観的には。本当はテーブルがあると良いんだけど」
ぽかんとして
「キノコ……わたしがキノコの妖精だから?」
「かもしれないね。座ろうか」
キノコの椅子はふかふかと座り心地が良かった。弾むような座り心地を楽しんでいる間に、
「星苺は、少なくても二つ、多ければ六つ見付かる。今は三つだね。その星苺を取るために、どの妖精に力を借りるか決めるんだ。力を借りることができるのは、手元のカードの妖精たち。カードは六枚あるから、今はそのどれかだね」
言いながら、
「俺はこの妖精の力を借りようと思う。
「え、どうやって選んだら良いの?」
「カードの左上の数字がその妖精の魔力。魔力が大きい方が勝ち。今俺が出したカードよりも大きい数字を出せば、あの星苺は
魔力の数は「6」「13」「14」「17」「22」「25」になっていて、確かに数が小さい妖精は体も小さいし、数が大きい妖精はなんだか強そうだ。
どれを選べば良いのかわからなくて悩んでしまったわたしに、
「ただの説明だから勝ち負けはあんまり気にしなくて良いよ。気楽にね」
「あ、そうか。まだルール説明なんだっけ。じゃあ」
一番小さい数は不安だからと、二番目に小さい「13」を選ぶことにした。木の手足と木の帽子、葉っぱをまとった木の妖精だ。
「ゲームはこうやって、順番にカードを選ぶことで進んでいく。最初のプレイヤーがカードを選んだら次のプレイヤーが選ぶ。次は二枚目のカードを出すかどうか選べる。俺は今回は一枚だけにするから出さない。
「えっと……じゃあわたしも出さない」
「それが終わったらカードを公開する」
「わかった」
ぴちゃり、と水音がして、
わたしのカードからも、カードに描かれているのと同じ妖精が出てきた。
二体の妖精は少し向こうの茂みで光っている星苺に向かって進んで、その途中で顔を見合わせた。魚の妖精の方が体が小さい。それでなのか、魚の妖精は水面で跳ねるような動作をして、そのまま消えてしまった。
木の妖精が三つの星苺を摘んで、戻ってくる。そしてわたしのところに三つの星苺を置いて、どこかへ行ってしまった。
「俺が出したのは魔力が『4』、
「わたしの勝ち?」
「そう、今回はね。で、妖精は一回手伝ってもらったらどこかに行っちゃう。二度は手伝ってもらえない」
「つまり、どういうこと?」
「今使ったカードはもう使えないってこと」
わたしたちの目の前で、テーブルに置いたカードがふわりと消えてしまった。
瞬きをするわたしに、
「これで手札のカードはお互い五枚。こうやって、星苺を集める間に手札はどんどん減っていっちゃうってこと」
「そっか。大きい数を先に使ったら後から使えなくなるってことか」
「そういうこと。ばっちり」
そう言って、
「じゃあ、次の場所に行こうか」
「待って。星苺、どうやって持っていったら良いかな」
テーブルの上でぼんやり光っている星苺は、名前の通りに苺くらいの大きさだけど、そのまま手で持っていくのは落としそうで不安だ。
振り向いた
「何か入れ物があると良いんだけどね」
「入れ物って言っても」
困って周囲を見回すと、小さなキノコの妖精が茂みから姿を現した。キノコの妖精はわたしと
受け取って広げてみれば、それはわたしのワンピースに似た網目模様のバッグだった。
「えっと、ありがとう」
わたしがお礼を言えば、その小さな妖精はすぐに茂みの中に戻っていってしまった。
バッグを手にぽかんとするわたしに、
星苺のその光は、なんだか本当に星の光を捕まえたみたいで、わたしは
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