エラーから始まる幼女使い〜訳有って異世界転生し魔法学校に入ります！〜僕を幼女使いと呼ばないで！

第31話 サイクロプス

　シーラの手には禍々しい量の魔力が込められたファイアーランスが握られており、一気に魔法陣から引き抜き、引き抜いた勢いのまま投げつけた。

　出来上がったフレイムランスの威力は、フォルクスの全魔力を注ぎ込んでも作れない。そうフォルクスは火属性が苦手属性だったのだ。フレイムランス自体は作れなくはないのだが、人を相手にするには十分対処できる威力なのだが、このような強敵に対しては使い物にならない。ファイヤーボールにしてもそうだ、込めた魔力と威力が釣り合わないのだ。

　表面を焦がすのが精一杯のものしか作れない。そしてシーラが放ったファイアーランスは距離が短いというのもあり、見事に目の中心部に突き刺さった。サイクロプスは驚きの表情を浮かべながら咄嗟に左手で顔を庇ったが、その手もろとも目を貫き、頭を貫いていた。目玉の中心を貫いたフレイムランスが途中で引っ掛り貫通しなかった。真ん中辺りで止まった為か、頭が一気に燃え上がった。グォーと抵抗し、なんとか突き刺さっているフレイムランスを引き抜き脇に放り投げた。フォルクスは気絶したシーラを抱き抱えたまま着地し、リズに託した。

　そしてサイクロプスを拘束していた結界が弾け飛んだ。ラティスの限界が来たからだ。ラティスも倒れてしまったが、ゼイゼイと息をしてはいるが、シーラと違ってなんとか自らの足で歩く事が可能な状態であった。

　だが、魔力切れの為2人共魔法を放つのはもう無理だった。

「ありがとうラティス」

お礼を言うとフォルクスは剣を片手に対峙する事になった。べソンとリズにシーラとラティスの護衛を頼み飛び出していった。視力を喪ったサイクロプスは我武者羅に腕を振る。当たれば一撃で死んでしまう、それ位の力がある。

　フォルクスは剣で切り裂いて傷を負わせていくが、埒が明かなかった。時間稼ぎにしかなっていなかったのだ。シーラとラティスの退避が済んだのを確認すると、フォルクスは一旦後ろに下がり、トルネードと発っすると竜巻が沸き起こった。

　手振り身振りで竜巻の大きさや範囲を調整し、サイクロプスに向けて飛ばした。そして竜巻がサイクロプスを巻き込み、一気に上空に巻き上げ、上空に運ばれて行った。そして手振りで更に竜巻を操作し動かして行く。

　カーラが打ち合わせ通り氷の柱を地面から生やしていた。可能な限り強くする為、ありったけの魔力を込めているのが分かった。フォルクスは腕で竜巻の方向を指示というか操作しながら、まるで踊っているようにジャンプしたりし、そして氷柱を目掛けて竜巻を突進するように合図をした。

　するとサイクロプスの巨体が氷柱に突き刺さり、魔石が体から離れ、飛んでいった。

　辺りはサイクロプスが地面に叩きつけられた時にドスンという大きな音の衝撃と共に少し揺れた。

　氷柱が丁度魔石に当たったようで、魔石は割れこそはしなかったが、サイクロプスはその場で息絶えたのが分かる。どうやら致命傷にならなくても、魔石が無くなれば魔物は生きられないようで、フォルクスはフムフムと一人納得していた。

　周りを見ると、カーラが肩で息をしている状態だった。魔力を使い過ぎたからだ。それだけの魔力を込めていたのが分かるのだが、そうでなければサイクロプスの体に刺さる事もなく、砕け散っていたであろう。サイクロプスを貫いていた氷柱の先端はなくなっており、太い部分が突き出している形になっている。

　フォルクスは周りの魔物の気配を確認し、他の気配がない事を確認してから急ぎ魔石を拾い、魔石とサイクロプスの体を収納に入れていった。

　フォルクスは一段落したのでカーラ達の元に駆けつけた。

「ラティス、カーラ、無理をさせてしまったね。歩けるか？」

　そう言うとラティスは大丈夫と言うが、カーラは肩を貸して頂ければと言う。リズがカーラに肩を貸し、フォルクスはラティスに手伝って貰いシーラをおんぶしていた。万が一剣で戦う時に簡単には落ちないように紐で結んで貰ったりしている。べソンは一人で周辺警戒を受け持つ事になった。

　そう、シーラが魔力切れにより気絶してしまっているからだ。

　ちなみに収納にはサイクロプスの首を切断し、頭と胴体で分けている。いちいち出すのが面倒くさいからだ。村へ戻る道中はフォルクスがシーラを背負い先頭で向かい、べソンが殿をが勤める感じになった。幸い魔物が出てくる事もなく、時折小動物が顔をのぞかせる位であった。

　村には15時位に着いた。結局お昼を食べてから2時間も経たずに解決してしまったのだ。

　村に戻ると所用から帰ってきたのか村長がいたので首を見せて討伐報告をした。体の方は馬車に有り、どこかの町でギルドに提出し換金すると話しておいた。一応依頼書に完了サインをして貰い、昨日泊まった宿の方がまだ良さそうだったので、昨日泊まった街を目指す事にした。またもや夕方に到着してしまうが、馬車を進める。

　御者はべソンとリズの配慮で2人が行ってくれる事になった。

　カーラとラティスは席に座るとすぐに寝ていった。

　シーラはと言うと、消耗が激しいので寝たままだったので、フォルクスが膝枕をしてあげていたが、それを見たカーラとラティスは羨ましがっていたが、フォルクスは今度してあげるから今日は我慢してねとだけ告げる1幕もあった。

　そして暗くなりかけた頃に目的の町に着いたのだが、街に着く直前にようやくシーラが起きて、おはようと間の抜けた声を出していた。そしてフォルクスが大丈夫かいと言うとフォルクスと自分の位置関係がおかしい事に気付いたようで、シーラが顔を真っ赤にしていた。

「こ、こここここ、これは一体ど、どどど、どういう状況なのよ。意味わかんないわよ」

　騒ぎ出したのでカーラとラティスが起きた

「あー、シーラが起きた。いいなーシーラは羨ましいなあ」

　カーラがそんなふうに言っていたがフォルクスが

「うん。その様子だと大丈夫そうだね。」

　フォルクスが額をなでながら言ったが、

「一体どうなっているの？何かのご褒美？」

「あはは。シーラに無理をさせちゃったみたいだね。あの後サイクロプスは無事倒せたんだけども、その後シーラが気絶していたから、昨日泊まった町に向かっていたんだ。きのうのお礼かな？こうやって膝枕をして横になって貰ったんだ。本当はもっと柔らかい所で寝かせてあげたかったんだけど、こんな硬い足で申し訳ない」

　そう言うとシーラは

「あ、ありがとう。そのね、心地良く、気持ち良く寝かせて貰ったわ。みんな無事なの？」

「うん。みんな無事だよ。シーラに無理をさせて悪かった」

「いいのよ。基本的に私が考えた作戦なんだから。こうなる事は分かっていたんだから」

「うんそうだね。魔力が切れたらどうなるか知らなかったけど、次からはもう少し考えないといけないね。でもシーラのおかげで、無事にサイクロプスを倒す事ができたよ」

　そうやって褒めるとシーラは顔を赤らめ、起き上がろうとするのでフォルクスが止めた。

「もう少し横になっていると良いよ。ってももう町に着くけどさ」

　うんと頷き、宿に着くまでフォルクスの膝枕を堪能するシーラであった。