第29話  目的地

 早目の朝食にしに、今日の旅は早くスタートする事にした。


 時折ゴブリンだとか、獣型の弱い魔物が極僅かに出ただけで順調に進んでいた。そして問題の村に着いたのはお昼少し前位だった。


 昼に着いたので活動時間が1日半位確保できた。


 早速ギルドで貰った地図にある山を目指す事にしようとしたのだが、村から歩いて20分程の山の麓なのだが、現地に着いて周りを見ると何故これほど近くに出没しているのに、直接人里を襲って来ないのか不思議だった。家畜はやられているようだが、民家が襲われた報国は無いとの事だ。


 ただ、依頼書に有った簡易地図では方角がイマイチ分からず、どっちの方向に行けば良いんだ?あっちだろうか?あーでもない、こうでもないと村の入り口近くで最初は屯していた。だが、誰かのお腹が鳴ったので、とりあえず食堂や宿がないか確かめる為に村に入った。どうやら食堂は有るようなので、聞き込みを兼ねて昼を済ませる事になった。


 食堂で村の人から大型の魔物の目撃された位置を教えて貰い、食事後、教えられた場所に向かって行った。


 馬車で行くには道が厳しいという事で、お金を払って馬車を預かって貰った。


 隊列はフォルクスが先頭、べソンとリズが殿を務める。フォルクスのすぐ後ろにはラティス。カーラとシーラは中衛になる。これらは前日の打ち合わせでフォルクスが決めていた。


 そうやって目撃情報にあった場所に着いたのだが、生憎魔物の気配は無かった。


 その為、周辺の探索をする為に山の中に入る事になり、30分位歩いたのだが、気配がやはり無かった。一度麓に戻る事にし、道を戻り始めていた。


 半分位戻った辺りでオークの群れが出現した。10匹位が現れただろうか、フォルクスの風魔法であっさりと切り裂いていった。現れた直後に倒した為に一箇所に纏まっていたのだ。チームでの初の本格的な戦闘の為、自信をつけるのもありフォルクスが魔法を放ち、十分に対処可能な相手だという事を皆に理解して貰う目的が有り、一気に倒していった。


 オークの死体の周辺にラティスが結界を張り、更にラティスが周辺の警戒、残りの者達で魔石の抜き取りなど行っていった。魔石を抜き取った後のオークの死体は収納に入れていく。全てを売ればかなりのお金になるらしい。食肉としての需要が高いそうだ。味が良いというのも有るが、倒した後に持ち運びが困難な為に、大量には出回らないのだ。


 フォルクスは使用する魔法の属性選びは得意属性の風魔法を無意識で選び使っている。得意属性の為か魔力消費量が少なく、更に同じ魔力を込めた場合威力が高くなるとなんとなく認識していた。特に即時発動可能なウインドカッターを愛用していた。勿論魔法学校にてコピーした各種魔法も使えるので、風魔法と相性が悪い場合はちゃんと切り替える予定だが、あくまでコピーであり、その魔法の本質を理解している訳ではない。


 魔石や死体の回収を終え、進行を再開した。


 そうして進み出した直後に、一際大きなオークに出くわした。遭遇戦になったのだが、フォルクスは何となくだが、、大きさ以外の事に対し、通常のオークの個体とは違うのが分かった。


 道の脇から急に出てきた為に遭遇戦になってしまったが、偶々フォルクスの前に現れた為、フォルクスがその大きなオークと戦い始めた。他の者はどうやらそいつが引き連れてきた通常体のオーク達に取り囲まれてしまい、乱戦になっていた。そんな中冷静にシーラが詠唱を始めていた。


「紅蓮の炎よ!我が求めに応じ、敵を討ち滅ぼす力を解き放て、ファイヤーランス」 


 詠唱すると腕の直ぐ横に魔法陣が顕れた。その魔法陣から細長い炎で出来た槍状の炎が少し出ていて、その槍状の炎を掴んで抜き取り、片手を前に出して狙いを定めて投げつけていた。槍を掴み投擲する感じだ。手で炎を掴んで投げているのだが、術者は火傷をしないのだと言う。一つ放ち終わると次は展開中の魔法陣に手をかざし、魔力を籠めると次が出てくるのを繰り返していた。


 気が付ば40匹位に囲まれていた。カーラが水の精霊に支援を頼んでいたが、もしその様子を見ていたならば、神秘的な感覚に我を忘れて見ていたであろう。


「我が仲間を救う為に我に力を貸し与え給え。彼の者達に水の眠りを。ウォーターバルーン」


 カーラの手からではなく、カーラのすぐ近くにいるもわっとした「何か」から、球状のような水の塊が10玉放たれた。それがゆっくりとだが、展開された水の玉はそれぞれ別のオークに向かって行った。


 オークの体の周辺に絡みつく為に、嫌がって手で払うが、手では払えなかった。


 手に絡みつき、そこから頭に向かってその水球はどんどん登って行き、ついに頭に辿り着いた。そして水球は頭に覆い被さる形でまとわり付き、頭が水没していった。その水球の為に息が出来ない為、オーク達は必死になって払おうとするが、一向に払えなく、ついに窒息の為に倒れ、やがて動きを止め、息を引き取った。


 そうしてそのオークが倒れると、その水球もやがて消えていった。カーラは隣にりに居る何かに向かって話しかけていた


「水の精霊よ感謝致します」


 そう言い、もやっとした何かにお辞儀をしていた。


 フォルクスはオークのリーダーと戦いながら皆の事を気にしていた訳ではないのだが、たまたま戦っているリーダーの後ろにカーラが見えた。精霊を使役しているのが見え、なる程、これが精霊の力かと感心していたのだ。ただぼんやりとしか見えなかったのは何故なのかというのは後で聞こうかと思っていた。


 べソンやリズの方は特に問題なかった。ラティスも剣で戦っており、剣でオークを倒して行く。


 シーラはピンチの仲間や、背後を襲おうとしている奴に攻撃をしていた。乱戦の為に威力の高い範囲魔法が使えず、サポートに回っていた。そして魔法を放つと無防備になる為にラティスに自分とカーラの護衛を頼んでいた。


 5分と経たないうちにリーダを除き、全てのオークを倒した。フォルクスが戦っているリーダーと思われる奴以外のオークは死体となって転がっている状態だ。


 リズとべソンが道の両脇に行き、逃さないぞと言わんばかりに待ち構えてい た。


 ラティスはカーラとシーラの護衛をする為に2人の側にいる。カーラにしろシーラも、戦闘を繰り広げているフォルクスへの支援の為の攻撃魔法が使えなかった。それは邪魔になるからだ。


 フォルクスの戦い方は正直に言うと下手である。ステータス任せだ。そう、力任せであり、素早さ頼みでがむしゃらに、強引に剣を振る感じなのだ。基本の型は教わっているが、技は無茶苦茶だった。アニメとかで見る中二病が喜ぶような構えや斬撃になっていた。アニメの影響をもろに受けていたのだ。


 一度蹴られて吹き飛び、距離を置いた瞬間に風魔法で切り裂くも表面にしか傷を付ける事が出来なかった。

 そして剣は単調な攻撃のみで更に威力もなく、警戒すべきは風魔法と思わせておいた。


 そして「今」と思い、フォルクスはジャンプを使った。


 どうやってとか、どういう理屈でかなのかは分からないが、ジャンプしたいと思えば足の下に風が吹き、足元から押される形で思った方向にジャンプするのだ。カーラだけは「ほほう」と感心していた。気難しい精霊なのに、姿を見せる段階にまでなっていないにも関わらず、無意識下の使役に黙って従っていた為だ。寧ろ精霊側から自分を使って欲しいとさえ願っているのだとカーラには感じられていた。


 そして、フォルクスは一気に背後に飛び去るべく、ムーンサルト宜しく空中で回転しながら背後から首に襲い掛かり、見事に首を斬り落とし、リーダーを倒したのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る