幕間:斑田猫蔵のドキドキ! 都市伝説

斑田猫蔵のドキドキ! 都市伝説

第八回:七つの首飾りの青年(仮)

 さて皆さんこんばんは。「斑田猫蔵のドキドキ! 都市伝説」のお時間です。

 今回都市伝説大好きな紳士淑女の皆様にご紹介しますは「七つの首飾りの青年」でございます。あらかじめお断りをしておきますが、今回の内容は名画の「真珠の首飾りの少女」とは一切関係ありませんのであしからず。

 では本題に参りましょう。今回もいつも通り都市伝説の紹介と、猫蔵なりの都市伝説の考察をお送りさせていただきます。実を申せば、この回、猫蔵も結構力を入れているんですね。もうすぐ目標の第十回目を目前にしておりますし。

「七つの首飾りの青年」は実は目撃情報から見出された青年の特徴から猫蔵が勝手につけているだけなんですね。青年自身はヤツガシラ・ヘップヒェン・英都・ホーシャン・ホヴェラなど様々な変名を用いていますので、それを伝説名にするのは不適切かと思いまして。なお、この変名と彼の本名についても後々言及いたします。

 ともあれタイトルの通り、彼の特徴は七つの首飾りなんですね。十代後半の少年~青年の姿で目撃されるそうですが、服装やいで立ちはまちまちながらも、必ず七つの首飾りで首許をあしらっているようです。金の細い鎖と丸いモフモフしたファーボールのような変わったデザインだそうです。

 しかし奇妙なのは、青年のいで立ちよりも彼の生態(?)でしょう。

 彼は奇妙な嗅覚により人には到底言えない願いを秘めた若者の前に姿を現し、何と願いを余す事なく叶えてしまうのです。羨ましい、ですって。とんでもない。それこそが彼を都市伝説たらしめる恐ろしさなのですよ。

 願い事を叶えてもらった男女は、十中八九変な目に遭ってしまうそうなんですね。で、良くて錯乱か発狂、悪くて失踪と言うエンドですね。ある若者は「俺は……俺は仔殺しに手を染めてしまった……」とネズミを見るたびに言うようになったそうです。ある女子はの調理現場に呆然と立ち尽くしていたそうです。あ、双脚羊が何か知らない人は是非とも調べてくださいね! 今のご時世便利になりましたので、スマホやパソコンで知りたい単語はすぐに出てきますし。ともあれこいつに関わった連中は死んでるか、さもなくば正気度をゴリッゴリに削られるわけですよ。天使だとかって名乗ってる場合もあるそうですがね。


 さて前置きが長くなりましたが、ここからが皆さまお待ちかねの考察タイムとなります。実はこの「七つの首飾りの青年」は、猫蔵以外の人たちもこぞって考察しているんですね。そして彼が好んで使う「いあ・いあ……」から始まるアノ呪文や、得体の知れない笑みを浮かべながら破滅をもたらすあたりから、ニャルラトホテプの化身の一つではないかという説が浮上しているのです。

 ニャルラトホテプの化身の一つ、というのもあながちあっているのかもしれません。あの邪神は無数の化身を持つわけですし、化身の中には化身である事を知らない者もいるそうですからね。しかしここで終わっては他の考察と差が付きませんし、何より猫蔵は別の説を敢えてプッシュしたいのです。

「七つの首飾りの青年」の正体は――ズバリ九頭鳥、それも九頭駙馬と呼ばれていたモノでしょう。

 九頭駙馬は西遊記の後半に出てくる妖怪のひとりで、本来の姿は元々、九個の頭を持つ、鳥とも蜥蜴ともトンボともつかぬ様相だったと伝えられています。記録によるとこいつは西海龍王の三男坊・玉龍のフィアンセであり万聖龍王の跡継ぎだった万聖公主と掠奪愛の末に結婚し、結婚祝いに金光寺の有難い仏塔の宝珠を盗んだ挙句血の雨を降らせるという悪事を働いたヤベーやつですね。

 ちなみにこの後孫悟空一行プラス二郎真君により強制家宅捜索アンド龍王一家粛清の憂き目に遭う訳なのですが、こいつだけはどうにか逃げおおせたわけなんです。しかし無傷という訳ではなく、二郎真君の愛犬により頭の一つを噛み千切られたという話ですね。

 したがって、「七つの首飾りの青年」が、八つの頭になった九頭駙馬であるという根拠はここで浮上してくるわけです。首飾りはよく見れば鳥の頭部に似た意匠であるとか、直截的に本性を現した時の姿が、八つの頭を持つ鳥のような化け物であるという証言をこちらは得ていますからね。

 そうなってきますと、彼が使っている様々な変名も、「8」または「ヤツガシラ」を示している事が容易に推測されるわけです。ヤツガシラや英都は変名としては直球ですね。ホヴェラというのは聞きなれない単語のように思えますが……羊飼いのスコアという、イングランド北部・ウェールズ・スコットランド南西部でも一部の羊飼いが使っているカウント法で「8」を示すそうです。

 また、鳥類のヤツガシラにちなんだ名は、ホーシャンとヘップヒェンですね。ヤツガシラは中国の俗称でシャンホーシャンと言います。そしてドイツには、かつてヘップヒェンと呼ばれていたヤツガシラが存在しました。ヘップヒェンが絡む逸話は、動物行動学者で名高いコンラート・ローレンツ氏の名著『ソロモンの指輪』中にあるので、興味のある方はチェックのほどを。


 ここからが、考察タイムの真骨頂となります。九頭駙馬は解説の通り中国由来の妖怪と思われるのですが、それとクトゥルフ神話の邪神たちがどう絡むのかですよね。それに関しましても、猫蔵にはきちんとした持論がございます。

 せっかちな皆様のためにまず申し上げますと、九頭駙馬は******の子孫ではないかと猫蔵は睨んでいます。ゲス不倫アンド逃げ足の速いだけのコソ泥野郎と、ラン***カー**も平伏した偉大なる*グ様が何で血縁関係なんだよって思うかもしれませんね。

 なのでここで、九頭駙馬の兄弟についても考えていこうと思います。

 九頭駙馬の名前を見てピンときた聡明な読者諸兄姉であれば……九***精の事を思い出すのはたやすいですよね? そうです。封神演義で有名な*頭***・※※※と九頭駙馬は実は姉弟だったのではないでしょうか。※※※はずっと*妖怪である事とかが強調されているのですが、本来は九個の頭を持つ***なんですね。まぁ実際には、彼女も…………されているのですが。ああ、ですが七つの首飾りの青年自身も、自分には姉がいたという供述をしているという情報をゲットしているのです。

※※※は***、すなわち…………に繋がるとお思いですね。ま、まぁ……当たらずも遠からずって感じですね。……(以下、121文字判読不能)……の下位互換であると思いませんか?

 そうなると、九頭駙馬は※※(文字化けが激しく判読不能)※※言っていたみたいですし。

 え? 今何かミシミシ言った気がするんですけれど気のせいですかね……?


 全くもってお行儀の悪い子だねぇ。人のプライバシーを詮索するなんて、ああ、実に実に悪い子だ。そんなにおしゃべりしたいのなら、別にボクは止めないけれど。


 ☆県*市に暮らす****さん(自称ライター)が行方不明になったという事で捜索願いが出ております。室内は荒らされた後も無く密室で、不可解な記録が残されたノートパソコンが押収されました。また、室内にはカナリアが一羽いたのですが、そもそも****さんはという事だそうです。


〈月間アトラ 2021年*月号 お詫び

 毎度月間アトラを愛読いただき誠にありがとうございます。

 さて、人気企画の「斑田猫蔵のドキドキ! 都市伝説」ですが、著作者の斑田猫蔵先生の謎の失踪がございましたので、休載させていただく事となります。第8回の原稿は存在するのですが、読者の皆様に不安を与える内容となっておりますので掲載を見送る形となります。

追伸:斑田猫蔵先生の部屋で発見されたカナリアちゃんは、編集部にて飼育しております。

 月間アトラ 担当主任:島崎双葉〉


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る