第139話 言葉は時に危険物
その後、動くことも出来ないまま放置されていた
彼女は一体誰がこんなことをしたのかとミクを疑ったが、「違うわよ! ずっと一緒だったじゃない」と言われて謎は迷宮入り。
被害者も何故か口を割ってくれないため、
「まあ、5人とも水着も決まったことだし、この件は一度忘れよっか」
「そうね。私たちの知らない刺客がいるのかも知れませんし」
「莉斗兄ぃに何があったんですか?」
「
首を傾げ、気を取り直そうとするみんなの様子に、必死で笑いを堪える茜。
葵は絶対にこんなふうにならないようにしないと。もう一人増えたら、それこそ手をつけられなくなるだろうから。
「用事はこれで終わったから、みんなでパンケーキでも食べに行こっか」
「そうね、いいと思うわ」
「あたしも賛成だ」
「右に同じです!」
まだ耳に残る感触にふらっとしてしまう莉斗はミクに支えられつつ、5人で会計を済ませてエスカレーターへと向かう。
どうやらどんな水着を買ったのかは、海に行くまでのお楽しみらしい。彼にとってワクワクすることがまたひとつ増えた。
「えっと、ここかな?」
「色んなパンケーキがあるわね」
「どれも美味そうだな」
「全部食べたくなっちゃいますぅ」
店頭にあるショーケースを眺めながら、とろんと表情を蕩けさせる女子組。
女の子はみんなスイーツが好きと聞くが、少なくとも莉斗の知っている女の子の大半はその通りらしい。
「いらっしゃいませ! こちらへどうぞ」
店員さんに案内されて席まで移動すれば、自然な流れで莉斗は彩音とミクに挟まれて腰を下ろした。
向かい側の茜と葵は、肩をくっつけながらメニューを覗き込んでいる。余程早く食べたいのだろう。
「あたしはパインチョコパンケーキ一択だな」
「私はいちごチョコパンケーキです!」
彼女らはサッと決めてしまうと、こちら側の3人を順番に見てくる。
その視線に急かされるように、莉斗たちもメニューを開いてパッと好きなのを選んだ。
「バナナチョコパンケーキにしようかな」
「私はマンゴーパンケーキね」
注文を取りに来てくれた店員さんに彼も「りんごパンケーキで」と伝えた後、何やら両サイドの2人が耳元で囁いてくる。
その内容は「バナナ」だとか「マンゴー」だとかを連呼しているだけなのに、不思議と顔が熱くなってしまった。思春期の想像力は恐ろしいね。
パンケーキが届いた後は、みんな幸せそうに頬張っていたけれど、帰りの電車でもしばらく(エロくないのにエロく聞こえる)言葉責めをされ……。
「莉斗、どうしたの?」
「お兄、変な歩き方だな」
「お腹痛いですか?」
下半身の反応を隠しながら歩くのに、とてつもなく苦労したことは言うまでもない。
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