第138話 その優しさは正しさか

「お兄」

「な、なに?」

「何で目を逸らすんだよ」

「そ、それは……」


 双子の水着選びを初めてから十数分後、莉斗りとは試着室の中にいた。

 その目の前にはあかねもいて、彼女が着ていた服は足元に落ちている。しかし、裸というわけではない。


「学校の水着、似合ってると思うか?」

「そりゃ、似合ってるけど……」

「ならこっち見ろよ」


 茜は服の下にスクール水着を着てきていたのだ。しかも、名札に6年1組と書いてあるところを見るに小学生の時もの。

 それを見せつけられている莉斗は、理由は分からないがすごく悪いことをしているような気分になっていた。


「わざわざ着てきたんだぞ?」

「初めからこうするつもりだったってこと?」

「外で2人きりになれるチャンスなんて、お兄が避けてる限りはないだろうからな」


 彼女が「スク水なら喜ぶと思ったんだけどな」と言いながら肩紐を触る様子を見ていると、ドキッと自分の胸が跳ね上がるのを感じる。

 相手は従姉妹で中学生。変な気持ちを持つなんて有り得ないはずなのに、伸ばされる手の指先から目が離せなかった。


「私はこれからお兄の耳を舐める」

「ど、どうしてそんな宣言するの?」

「嫌なら逃げろってことだ。大きな声を出せば、お姉たちにも聞こえるだろ」

「でも、そんなことしたら茜は……」

「嫌われるかもな。特に、お兄を狙ってる2人から」

「そんなのダメだよ」

「……その優しさが自分を苦しめてるんだぞ?」


 茜は短くため息をついてから背伸びをすると、莉斗の肩を掴んで体重をかける。

 その重さで少し低くなった首にカプっと噛みつき、彼女は痛みで膝を折った彼に抱きつきながら耳たぶをちろっと舐めた。


「っ……」

「逃げないってことは、して欲しいってことか?」

「そうじゃないけど……茜は傷つけたくない……」

「優柔不断なくせに、優しさだけは一人前だな」

「う、うるさいなぁ」

「でも、お兄のそういうところは嫌いじゃない」

「……え?」


 莉斗が「今なんて言った」と聞き返すより早く、茜は耳たぶを咥えて口内で舐め始める。

 それが終われば周囲をぺろぺろと丁寧に下で撫でていき、最後に穴の入口に舌先を触れさせた。


「入れるぞ?」

「はぁはぁ……」

「疲れすぎて声も出ないか」

「す、少し休ませてよ。ほんの少しでいいから」

「そう言われたら、休ませる訳には行かねぇな」


 ニヤッと笑った彼女は一気に舌を押し込む。体の小ささに比例して舌も小さい彼女だが、それ故に小さな耳の穴にも入りやすかったのだ。


「あっ……まっ、だめ……」

なんらよ何だよかんじへふのは感じてんのか?」

「ちがっ……そ、それ……無理だってぇ」

ひふひふふんはほビクビクすんなよ


 舌を出し入れしながら、空いている手で首やお腹を撫でてくる。

 どこでこんなことを学んだのかは分からないが、自然と莉斗が触れて喜ぶ場所を探していることは確かだった。


「はぁはぁ、中学生に負けて恥ずかしくねぇのか?」

「そんなこと……はぁ……言われても……」


 お互いに息を荒くさせながら、顔を離して見つめ合う。彼はこれでようやく解放されると心の中で安堵したのだが。


「そろそろ本気出すか。声出すなよ?」

「え、ちょ、イヤっ―――――――――――」


 すぐに強引に2回戦を始められてしまい、その数分後には抵抗すら出来ないほどクタクタになってしまった。

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