第131話 隠したくても隠せないもの
それが場を選ばないため、
「莉斗、最近眠れてる?」
「だ、大丈夫だよ」
「本当に? 私には嘘つかないで欲しいわよ?」
「嘘じゃないよ、寝過ぎて疲れてるだけだから」
心配してくれるミクに嘘をつくのは、正直心がえぐられる思いだ。それでも、茜とのことをカミングアウトするよりはずっとマシである。
夜中に彼女が遅いに来るのではないかと怯えていたなんて言うのも、それはそれで恥ずかしいからね。
「そうだ。茜ちゃんと
「な、何?!」
「……どうしたのよ、大きな声出して」
「いや、ごめん。何でもないよ」
反射的に出てしまった声を慌てて引っ込めつつ、首を傾げるミクにさりげなく言葉を急かす。
変に勘ぐられても困るため、早急にこのことは忘れてもらわなければならないのだ。
「あの子たち、来週末に帰るんでしょう?」
「そう言ってた気がする」
「だから、直前に海に行きたいの。みんなで海水浴なんて楽しそうじゃない?」
「そのみんなには、
「逆にどうして省くと思うのよ」
「そうだよね、良かった」
どうやら、ミクと彩音の仲は良好らしい。となれば、問題は
今のところ葵は何もしていないものの、彼女だってミクとくっついて欲しい派だ。いざとなれば牙を剥きかねないだろう。
「じゃあ、準備しないとだね」
「3泊4日くらいでいいわよね。来週の木曜日に出発にしましょうか」
「うん、賛成」
「なら、明日にでも買い物に行くわよ。色々と準備しないといけないから」
「わかった、美月たちにも声掛けとくね」
「ええ、お願いするわ」
ミクはそう言ってにっこりと笑った後、「さてと」と呟きながら床に正座をした。
一体何事かと思ってみていると、彼女は何やらポケットから紐のついた五円玉を取り出して見せる。
「何それ」
「今日は莉斗に催眠術をかけようと思ってたの」
「……何か企んでる?」
「ち、違うわよ! 昨日、催眠術でジェットコースターが怖くなくなるってテレビで見たのよ」
「別にジェットコースターは怖くないよ?」
「それだけじゃないわ。嫌いなものが好きになるってのもあったの、試してみたくない?」
確かにテレビでそういうのを見る度に、ヤラセなのではないかと疑ってしまうひねくれた部分は自分の中にある。
それを実際に試そうとしたことは無いし、この機会に見極めておくこともいい提案なのかもしれないね。
「わかった、かけてみて」
「方法はネットで調べてきたから安心していいわ。ちょっと怪しいサイトだったけど」
「……本当に大丈夫?」
「背景が真っ黒で全部赤い文字で書いてあったけれど、きっとなんてことないわよ」
「絶対危ないサイトだよね?!」
この後、とりあえず大丈夫そうなサイトを探し直してもらったことは言うまでもない。
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