第123話 義妹はからかうとトゲが出る
双子たちが来てから3日目のこと。
「お兄、いつまで寝てんだよ」
「起きてください、もう9時ですよ」
夏休みくらいのんびりと寝かせて欲しいところではあるが、せっかく従姉妹たちが来てくれているのでそういうわけにもいかないらしい。
「わかった、起きるよ」
強引にベッドから引きずり下ろされそうになったところで、慌てて自分から足を下ろして立ち上がった。
目覚めから床とおでこをこんにちはするつもりは無いので、しっかり目が覚めたアピールをしてから2人には少しの間、部屋の外で待っていてもらうよう伝える。
「着替え終わったよ」
パジャマから普段着に着替えた彼は、茜たちを部屋に招き入れ直すと、丸机を囲んで座った。
「お兄、今日の予定は?」
「特に決まってないけど」
「夏休みだぞ? 女の子の一人や二人とデートくらいしろよ」
「そう簡単そうに言われても、僕みたいなのが出来ると思う?」
「全く思わないな」
「でしょ?」
茜に「胸張るなよ」とツッコミを入れられつつ、「私もデートしたことないですぅ……」と呟く葵は優しく頭を撫でてあげる。
この数日で2年前の感覚を取り戻してくれたようで、ミクだけでなくこちらにも甘えてくれるようになったのだ。
「昨日のあいつとはしないのか?」
「
「そうだ」
「どうだろ、誘われたら行くけど」
「男らしくないな。遊びたくないのか?」
「それは……遊びたいけど」
「なら自分からガツガツいけよ」
「そういう茜はどうなの?」
「あ、あたしのことは関係ねぇだろ」
その反応を見た莉斗が「へえ、経験ないんだ?」と言ってみると、本当にその通りだったようで茜は悔しそうに黙ってしまった。
「莉斗兄ぃ、茜ちゃんをいじめちゃダメですよ」
「あ、ごめん。そういうつもりじゃなかったんだけど……」
「なんだよ、笑えよ。まだデートなんてしたことないあたしをバカにしたいんだろ?」
「違うってば。それに、中学一年生の時なら僕もデートしたこと無かったし」
「お姉とはしてたろ」
「あれはデートのつもりじゃなかったんだけど」
「向こうはその気だったんだよ、鈍感バカお兄」
やたらトゲのある言葉に胸をチクチクとされた彼は、「そうだ、いいこと思いついた」と2人に手招きをする。
そして、不思議そうに首を傾げながら耳を寄せてきた彼女たちに、莉斗はその提案をするのだった。
「じゃあ、僕と2人とでデート体験しよう。僕が好きなところに連れて行ってあげる」
「は、はぁ?! お兄となんて嫌に決まってるだろ!」
「わ、私は……してみたいですぅ……」
「葵はこう言ってくれてるけど?」
「くっ……い、行けばいいんだろ!」
そういうわけで、莉斗と葵の疑似デートに、「初めてがお兄なんて……」と言いつつもどここ満更でも無さそうな茜が同行するという形になったのだった。
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