第61話 早朝の訪問者にご注意
「……どうしてあなたがここにいるの?」
翌朝、お隣の家からやってきたミクが、
「泊めてもらったんだよね〜♪」
「なっ、まさか既に?!」
「安心して、いつも通りだから」
「よかった……」
相変わらず一線は越えていないと知ってホッとするミクだが、自分はしていないお泊まりということをされたのは事実。
振り向きたくても着替え中は見ないと約束して振り向けないでいる莉斗。彼を取られるのも時間の問題だと焦りが出てきた。
「莉斗、今日お出かけするわよ」
「え、でも……」
「残念だけど、彩音さんの予約が先なの」
「なら私も一緒に行くわ。いいでしょう?」
彩音は明らかに嫌そうな顔をしているが、幼馴染の頼みを無下にするのは心苦しい。
莉斗は「また今度、必ず2人っきりで行くから」と約束して、ミクの同行を何とか許可してもらった。
「さすが私の幼馴染ね」
「はぁ、ラブラブデートの予定だったのに……」
「私は
「人前でそんなこと出来るなんて、性癖歪んでるよ」
「べ、別に見られたいわけじゃないわよ! ていうか、こっそりあんなことしてるあなたもどうかと思うけど!」
「それはもうお互い様だよ? ミクちゃんもやってるんだから」
「っ……」
朝からよくこんなに喧嘩できるなぁとあくびをしつつ、莉斗は2人に背中を向けたままクローゼットまで移動する。
そして自分の着替えを取ると、「喧嘩、終わらせといてね」という言葉を残して部屋を出た。
あんな喧嘩に巻き込まれでもしたら、止められそうにないからね。お互いで解決してもらうのが一番いいよ。
「お兄ちゃん、モテモテだね」
「
「あれだけ騒がれたら聞こえちゃうよ」
廊下に出ると美月が壁にもたれかかっていた。彼女はからかうように「私もモテたいよ」なんて言いながら、一枚の紙を手渡してくる。
「出かけるんでしょ? 帰りでいいから書いてあるもの買ってきて」
「コンビニスイーツ? こんなに食べたら……」
「命令。代金はこれ、お釣りは返してね」
「帰りだと遅くなるかもしれないよ?」
「別にそれでもいい」
「え、今食べたいわけじゃないならどうして?」
その問い返しに眉をひそめた美月は、莉斗の肩を押し退けて横を通り過ぎていった。
復讐とやらの一環なのだとすれば、随分と罰が軽くなったような気もする。
別に苦ではないから言うことは聞くが、先程の彼女の表情が胸の奥に引っかかってなかなか外れなかった。
「スイーツ、少し分けてくれたりは……しないかな」
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