第110話<二次災害>

「ギズ隊長ご無事ですか!」


救出に駆け付けた隊員達が駆け寄り、倒れたギズ隊長を抱え上げる。


すぐさまエミリが回復魔法を施し、ギズ隊長と前衛の二人は弱々しくも意識を取り戻す。


だが安堵したのも束の間、ルミニー達に狙いを変えたゴーレムが迫り来る。


「足止め位にしか、岩石魔法効いてません」


「……まいったね、流石に石は斬った事無いよ」


そう呟き駆け出すルミニーの後を、ルドエルが追う。


左右に交差移動する連係で、巧みにゴーレムの拳を避け。


二人は剣を当てるが、ゴーレムには効いていない。


「本当に固いね、コレならどうだい」


そう言ってルドエルに目配せをしたルミニーは、ルドエルが屈んだ瞬間。


飛剣で斬撃を飛ばし、其の衝撃でゴーレムは壁に激突し倒れ。


ゴーレムには横一線の傷跡が付いたが、核を壊す迄には至らず立ち上がる。


「一応とっておきなんだけど、倒せないのはショックだね」


「このまま戦ったら全滅だぞ、どうするルミニー? 」


「コレは逃げるが勝ちだね、遠距離攻撃で足止めしながらトンズラだよ」


ルミニーが撤退を指示した時、再び塔が大きく揺れる。


其れと同時に凄まじい衝撃音が響き、逃げるはずだった背後にもう一体のゴーレムが表れる。


「マジか!? 逃げ道が無くなったぞ…… 」


「一体でも手を焼いてるってのに、本当ツイてないね…… 」


負傷したコボルト調査部隊は、まだ起き上がる事も出来ず。


攻撃の効かないゴーレムに道は塞がれ、絶望に包まれた時エミリが口を開く。


「私が抑えます! 」


「本当に大丈夫なのかい? 二体相手じゃ守る余裕は無いよ」


困惑するトウを横目に、エミリは強く頷き返し。


ルミニーは振り返り、逃げ場を塞ぐゴーレムに立ち向かうのだった。




其の頃、国王レオンと別れ。

ご機嫌なガオンに連れられ、破邪の塔に向かって森を進んでいたガオン達は。


「ガオン様、結婚したら普通は夫婦でハネムーンっていう旅行ニャ行くのですわ」


「ガハハ旅先は魔物だらけの破邪の塔だぞ、修行し放題だな」


ウルルは不機嫌そうに問い掛けたが、笑い飛ばすガオンは気にもしていない。


「お嬢様お気を落とさず、まだまだ夫婦生活はこれからです」


そんなやり取りに呆れ顔のゴブドがため息を吐いていると、普通の森だった周囲の異変に気付く。


「ガオンさん森の様子が変です…… 」


「ガハハそう言えば、まだ魔物が出てこないから暇だな」


「この辺ニャ森では、もっと魔物が出るはずですわ」


話しの通じないガオンとの会話を諦めたゴブドは、周囲の警戒を強め魔物を察知。


「居ました魔物です、既に誰かと戦っていますね」


静かにゴブドが近付いていくと、其の光景に驚愕して口を開けたまま立ち止まる。


ゴブドの目前では、巨大な蔓に男女二人のゴブリンが足を引き摺られ。


鋭く尖った口の様に花を開けた蔓に、ゴブリンの女が今にも食べられそうになっている。


ゴブドは急いで粘糸を絡ませ、花の口を閉じ。


ガオンの振り下ろした戦斧で、蔓は両断される。


もう一人のゴブリンは引き摺られながらも、こん棒で蔓を叩き抵抗。


再びガオンが蔓を両断して、二人のゴブリンを助けたのだった。


だが落ち着いたのも束の間、よく見ると蔓は其処ら中に蠢いていて。


小動物や植物を食い散らかし、森を侵食していたのだった。

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