第106話<ピンチ?チャンス?>

「あれっ……、アンタ達こんな所で何してんだい? 」


「ルミニーさん!?」


ルミニーの顔を見た途端、エミリは駆け寄り抱きつく。


マオーの助けを信じていても、やはり不安が大きかったのだろう。


エミリが一通り事情を話すと、ルミニーは思い出したように口を開く。


「街で噂になってる毒野郎の事だね……。 アンタ達!この娘達は関係無いよ、どちらかと言えばアンタ達と同じ被害者さ」


「どうやら嘘は付いていないですね…… 」


隊長が居ないからか、困った様に顔を見合わせる調査部隊達。


「随分便利な鼻だね、話が早いじゃないかい」


其の様子を眺め、ルミニーはほくそ笑む。


「同じ被害者だという意味を、もう少しだけ詳しく教えてもらおう」


こうしてトウを解放するかの判断は、隊長を待つはずの隊員達に委ねられるのだった。




其の頃。

獅獣王国の闘技場に移動したガオンとゴブドの一行はウルルとジトーを連れて、獅獣王国の闘技場に移動していた。


「本気ですか!? 国王様と戦うのはちょっと……」


獅獣王国の国王であるレオンと向き合うゴブドの顔は、完全に青ざめている。


「ガハハ、手合わせだから気にするな」


ゴブドの心配を他所に、ガオンは笑い飛ばし。


止めるべき王宮兵士や、ウルルとジトーも黙ったまま。


「兄さんは相変わらずですね」


そう言って当人のレオンも、問題無さそうに頷いている。


「やるからには手加減出来ないので、命懸けでいきますよ」


「ガハハ、それでは戦闘開始だ!! 」


覚悟を決めてゴブドが構えると、ガオンが戦闘開始の合図で大斧を振り落とす。


ゴブドは先手必勝と駆け寄り剣を振るが、レオンの剣に軽く塞がれ。


数撃を交わすと、速すぎるレオンの剣に警戒を強め再び距離を空ける。


「剣では敵わなさそうですね、これならどうですか」


そう言って粘糸を射出するが、ことごとくレオンにかわされ。


驚いた隙に距離を詰められ、剣を突きつけられ倒れてしまう。


「ガハハ勝負有りだ! 鈍ってはいないようだな」


「兄さんは人が悪いな・・ 」


笑い返すレオンは、余裕綽々で息も切らしてはいない。


「ガハハまだ足りないようだな、次は俺様と闘るか」


意気揚々とガオンは大斧を手に取るが、レオンは剣を下ろす。


「兄さんとはケガするからダメかな、立場が在るしね」


「ガハハ立場か……。 国王なぞ、やはり面倒だな」


二人が笑い合っていると、黙って観戦していたウルルが踏み出す。


「ガオン様、私だって戦えますわ」


「お嬢様、其れは無茶でございます……」


ジトーは慌てて止めに入るが、

ウルルの覚悟は堅い。


ガオンとの接点は少なく、最後のチャンスだと思ったのだろう。


「大丈夫ですわ、私だって日々剣ニャら練習してますもの」


「お嬢様……、本気なのですね」


ジトーは諦めた様子で、頭を下げ一歩下がる。


「ガハハ面白いぞ猫娘、それなら武器無しで相手してやろう」


そう言って、ガオンは大斧を床に投げ捨てる。


「猫娘ではニャくウルルですわ、それではまいります」


短剣を持ったウルルは猫属の特性を活かし、俊敏なフットワークでガオンに攻撃。


だが何れの攻撃もガオンの爪に弾かれ、全く効いていない。


再びウルルが攻め込んだタイミングで、容赦無いガオンのショルダーアタックが激突。


大きな悲鳴を上げて、ウルルは吹き飛ばされる。


「勝負有りですな、お嬢様勇敢でしたぞ」


ジトーの言葉どおり、健闘を讃え皆が拍手を贈り。


倒れたウルルを、ガオンが抱えあげる。


「ガハハ気に入ったぞウルル、俺様が結婚してやろう」


「はい」


「ガハハもっと強くしてやるぞ」


「はい?」


拍手をしていた者達も大口を開けたまま、固まっている。


こうしてウルルはピンチをチャンスに変え、波乱の人生を手に入れるのだった。

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