第72話<セト討伐戦>


「スゴいね~、何ソレ? どういうスキル、変身? 月に代わってお仕置きしちゃうの? 」




俺からも戦闘でスキルを奪える自信が有るのか、セトは瞳を輝かせニヤついている。




確かにトウから聞いたコイツのスキルはチートで、普通に戦えば苦戦するだろう。




だが、コイツのスキルにも欠点が在る。




スキルの能力が便利すぎるから、奪おうと固執する所だ。




実際にエミリとトウを殺すだけなら、毒を使えば簡単だっただろう。




だがそうしなかったのは、二人のスキルが欲しいから。




殺すと奪えないらしいが、其れも都合が良い。




そして今、俺のスキルにも興味を示していた。




ここまでは作戦通りだ。




リジョンの様な魔法を使えるなら別だが、遠距離で毒を使われたら俺も危うい。




だが近距離でナイフなら、戦えなくもない。




まだ戦ってもいないのに勝った気でいる、其の笑顔を直ぐに止めて。




俺が見た地獄を、お前にも見せてやる。




「じゃあ、こんなのは見たこと有るか? 」




そう言って右腕を伸ばした俺は、空間圧縮魔法でセトの心臓を握る。




潰して殺さない様に、軽く握って。




「ん……?、ぐ……」




悲鳴を上げる間もなく、セトは苦しそうにその場に倒れ。




抵抗する余裕も無く、胸元を押さえたまま気を失っている。




其れと同時に頭に機械的な声が響く。


魔王候補を倒し[なんちゃって魔王]から[魔王らしきもの]にランクアップしました。




今魔王候補って言わなかったか? どうりでヤバイ奴だとは思ったが……。




魔王の圧縮魔法が無ければ、負けてたのは俺だったかもしれない。




LV12に上がり<擬態Lv4能力擬態>からランクアップ。


[能力擬態統合]を取得しました。




能力擬態統合って、いよいよチートじゃねーか。




慌ててステータスオープンを唱え、確認してみる。


<擬態Lv5能力擬態統合>


倒した敵から能力擬態、擬態した能力の統合。




新たに取得した能力の統合しますか? イエス・ノー選択。




<麻痺毒・神経毒・酸毒・各毒耐性・各毒液・各毒ガス>




<ホーネットスティール>




勿論、イエスだろ。




能力の統合を開始。




各毒種統合に拠り<黒魔の息吹き><黒魔の雨><強毒耐性>を取得しました。




<ホーネットスティール>と<クリティカルヒット>を統合して<ジャイアントキリング>を取得しました。




もう説明を観なくても解る位に、ヤバそうな能力ばかりだ。




だがエミリを襲ったサイコパス野郎を倒したのに、騎士じゃなくて魔王に近付いているような気が……。




そんな事を考えていると、頭に響く機械的な声の報告が続く。




能力統合取得に拠り、種族が[人間]から[人外]に進化しました。




!?…… いよいよ、人間じゃなくなってるじゃねーか。




まあ、弱いよりは良いか。




そんな風に軽く考えていた俺は、其の進化の意味を後に思い知る事となるのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る