第68話<死因>

67話68話は悪役紹介するシーンなので胸糞連発します。

読まなくても物語は理解出来る様に作っていますので、

感受性の高い方は69話から続きをお読み下さい。




この頃医療に興味が在ると言って家族を欺いていたセトは、親に連れ出される事も減り。


増えた自由な時間とお金を、実験的な事にあてていた。




勿論。其の実験は医療的な意味なんて求めてはいなく、只の虐殺である。




つじつまの合う言い訳が、医療だっただけなのだ。




小さなネズミと違い、表情の解る猫や犬はよりセトを楽しませた。




後ずさり怯える表情が、自分を特別に感じさせる。




相手の命を握っている、絶対的な存在だと。




其れと同時に、毒殺の方法も変わっていく。




切りつけた傷口に塗り込んだり、歯に無理矢理塗り込んだりと強制的な方法に。




其れも一つの毒では飽き足りず、複数の毒を使って。




だがネズミ駆除剤や殺虫剤等の簡単に購入出来る物だけで、狂気は終わらない。






この日仕入れようとした毒はテトロドトキシン、所謂フグ毒である。




数日前から海岸をうろつき、手に入れる事を狙っていた毒だ。




釣ったのがフグだと確認した上で、釣りをしていたオジサンに話し掛ける。




「釣れてますか。あれっフグ可愛い、飼ってみたいな~」




バケツを覗き込み、白々しく笑い掛け譲って貰ったのだった。




次に準備したのは、美味い餌で誘き寄せた野良犬。




一度餌をあげて付いてくれば、殺す予定地の河原で首輪をする。




そうやって捕まえた動物達は全て殺してしまったので、河原の隅には何十の動物達が埋まっているのだった。




川原には当然人なんて来ないドブ川で、元より異臭が漂っている。




普通の人なら避けるような場所だが、セトにとって都合の良い場所だった。




この日も騙されているとは知らず、付いて来たのは人懐っこい柴犬。




其れなりにサイズは大きいが、セトにとっては殺害対象でしかなく。




いつものように、殺す手順に変わりはない。




先ずは仲良さ気に撫でながら、首輪を取り付け。




ゴム手袋をしてナイフでフグの解体、取り出した一番毒の強い肝を握り潰し手袋に馴染ませる。




セトを見上げる柴犬は、まだ何が起きているのか理解していない。




セトは再び餌をあげながら、手袋の毒を柴犬の牙に塗り込む。




今までは毒の効果で異変に気付いた生き物が、表情を変えながら死んでいくのだったが。




今日の柴犬は違って、牙に毒を塗り込んだ瞬間噛み付いたのだ。




よほど不快な塗り方だったのか、気に入らない味なのかは解らない。




だが結果的に、2グラム体内に取り込むと死ぬ毒が射し込まれたのである。




「このバカ犬~!テトロドトキシンは、末梢神経に作用する神経毒なんだよ。 本当バカだな~」




柴犬を突き放したセトは毒の効果を説明しながら、柴犬を罵る。




優しい人では無いと判断した柴犬は、唸り声を上げセトを睨み上げる。




だが互いに毒の効果が出るのは時間の問題で、いつまでも睨み合う余裕も無い。




次第に麻痺が始まり立ってられなくなった両者は、呼吸困難で命を落とす。




こうしてセトは家族に疑惑の死因を残し、異世界転移するのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る