第16話<デジャブ>

飛び掛かって来た兎をなんとか避け、反撃を試みるがとにかく角が邪魔だ。


兎は角を活かした絶妙な角度と位置取りで、俺をジリジリと人壁へ追い詰める。




現実世界では黒い悪魔Gにすら苦戦するのに、いきなり角付きの魔物とは。


せめて武器くらい渡せよ、あのカタカタ野郎。




其れに昨日助けてくれた獣人。


のんびり腕組んで観てんじゃね-、今こそ助けてくれよ。


思い虚しく、戦闘は止まる気配も無い。




再び飛び掛かって来た兎を辛うじて避けて、掴み床に投げつける。


すかさず何度か踏みつけ、兎は動かなくなった。




なんとか倒す事は出来たが、踏みつけた感触が残っていて後悔感が止まらない。


だが俺も命懸けなのだ。


此れで牢屋に戻る事が出来ると喜ぶ日が来るとは、不思議なものだ。




さあ早く牢屋に連れ戻せ。


そんな願い虚しく、骸骨兵はピクリとも動かない。




おかしい。嫌な予感がしてきたぞ。


安心していたのも束の間。


またもや向こう正面から骸骨兵が現れ、今度はコウモリを連れている。




まさか。オイ、ふざけんじゃねー。


今、勝ったばかりじゃねーか。


心の叫び虚しく、コウモリは放され。


呼吸も整わない中、再びゴングが鳴らされる。




心の準備も何もねー。


なんて考えてる場合じゃない。


コウモリはバサバサと宙を飛びながら、明らかに攻撃の隙を窺っている。




試しに殴りかかってみるが、コウモリはサラリと避けてしまい当たりそうにない。


襲って来た瞬間を狙うしかないか。


俺の作戦を見抜いているのか、コウモリも安易には襲って来ない。




試しに視線を逸らして、敢えて隙を作ってみる。


狙いどうりコウモリは急下降してきて、襲って来た。


今だ。すかさず拳を突き出すと、カウンターがコウモリの顔面に直撃してコウモリは動かなくなる。




其れと同時に頭に機械的な声が響く。


LV2に上がり[拳闘・弱][能力擬態]を取得しました。




拳闘・弱って、またもや役にたたなさそうなスキルだな。


だが能力擬態の方は何だか良さそうだ。




慌ててステータスオープンを唱え、確認してみる。


<擬態Lv4能力擬態>




<角創成>


自身任意の箇所に角創成・消失する事が出来る。




<超音波探索・回避>


暗闇でも人や壁の距離感が解り、攻撃の回避率上昇。




此れは悪くないぞ。


其れにさっき来る前に言ってた能力。




<擬態Lv3姿真似>




触れた相手に擬態する事が出来る。


此れも悪くない。




観客だらけの今は使えないが、状況次第で此所から逃げる事が出来るかもしれない。


其れにLVが上がった事でMPも回復している。




やっとチャンスが巡って来たのか。


此れなら生き残れるかもしれない。




二戦連続勝利という予想以上の結果に、観客の魔物達は不満そうに騒ぎだす。




「次はオデが殺る」




「殺せ・殺せ」




ブーイングと云うには余りにも柄が悪く、味方は0。


人間だと、勝利の余韻に浸る事すら出来ないのか。




だが流石にもう良いだろ。


さあ早く牢屋に連れ戻せ。


そんな願い虚しく、骸骨兵はピクリとも動かない。




なるほど此れがデジャブというやつか。じゃねーよ。


おい。さっきと同じ雰囲気じゃねーか。




もしかして死ぬ迄続くんじゃねーだろうな。


心の叫び虚しく。またもや向こう正面から骸骨兵が現れ、今度は蜘蛛の魔物を連れている。




彼女を守る為に生き延びる、なんて思っていたが無理だ。


きっと此れは死ぬ迄終わらない。

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